イタリアで発見!花のような香りの「ヘーゼルナッツ味噌」の作り手は、日本の発酵食品に取り憑かれていた
その味噌は、花の香りがした。味噌汁にすると、華やかな香りが立ち込めた。発酵マエストロと呼ばれるイタリア人が作った「ヘーゼルナッツの味噌」の虜になったフードジャーナリスト・宮本さやかが、イタリア生まれの絶品味噌の秘密に迫る。
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カルロ・ネスラーの味噌を食べてみろと言われて
初めてカルロ・ネスラーという名前を聞いたのは、新しいモノを見つけてくるのがうまいトリノの若い友人が「イタリア人でミソやシオコウジを作っている人がいるのよ!」と興奮気味に話してくれたときのことだ。イタリア人がイタリアで塩麹作って売ってる? ちょうど冷蔵庫に常備している塩麹が切れかけていた。イタリアでも買えるなんて知らなかったから、日本に帰るたびに既製品を買い込んでくるか、乾燥麹を買って自作していた、その塩麹が終わりかけていたのだ。だから試しに一瓶買ってみた。
「へー、意外とちゃんと塩麹だね」というのが食べてみた感想。ちょっと水分が多過ぎる気がするが、塩麹の味ではある。イタリアも発酵流行ってるもんね。そんな、ちょっと上から目線な気持ちだったというのが正直なところ。
ところがしばらくして、別の友人から、カルロ・ネスラーの味噌を食べてみろと、半ば無理やり押しつけられた。え、味噌は日本から買ってきたホンモノも、自作の味噌もあるし。そう思いながらも、「ヘーゼルナッツの味噌」と書かれたラベルが気になって蓋を開けてみた、あのときのショックは今も鮮烈に蘇る。というよりも、今も毎回、蓋を開けるたびに感動している。花のような、華やかな香りがフワーっと上がってくるあの驚きは、半世紀以上日本人をやってきて未だほかの味噌では体験したことがない。イタリアに20年も住んで半イタリア化してる人の味覚なんて信用できないよ。そう思うかもしれないけれど信じてほしい。今ではすっかりカルロ味噌のファンになり、味噌の自作をほとんどやめてしまった私の冷蔵庫には、いつもカルロさんの味噌が入っている。そしてその味噌で味噌汁を作るたびに、あまりにいい香りでニコニコしちゃう、そんな味噌なのだ。
カルロ味噌のあまりのおいしさに感動して調べてみると、カルロ・ネスラーという人はすでにイタリアの食の世界では発酵のマエストロとして崇められていて、何人もの星つきスターシェフが、カルロさんの発酵食品を料理に使っているということもわかった。でもそんなにすごい人なのに、ローマ郊外のラボラトリーで発酵食品を作り、オンラインショップとイタリア各地にある扱い店で販売しているだけ。派手な直営店などはないらしい。
いったいどんなふうにイタリアで味噌を仕込んでいるのか? ヘーゼルナッツの味噌の、あの香りはなんなのか? 行ってみたい、見てみたい。その想いはどんどん募った。悩んでないで行ってみることにした。
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