「ひとり暮らしってこんなに大変なのか」激安スーパーと89円のソーセージパン。木津つばさの上京物語

文=木津つばさ 撮影=山口こすも 編集=高橋千里


舞台を中心に活動をスタートし、数々の人気シリーズ作品に出演、現在は映像でも話題作にレギュラー出演するなど多方面で注目を集める俳優・木津つばさ。28歳になった今、「国民的俳優になる」という夢の途中にいる。

広島から上京した日のこと、コロナ禍で舞台に立てなくなった日のこと、“2.5次元俳優”の肩書に悩んだことなど、自身の言葉で赤裸々に綴るエッセイ連載『舞台にさよならを言う前に』。

【第7回】上京

これまで本連載でいくつかエッセイを執筆させていただいておりますが、すべて読んでくださった皆様、いつも本当にありがとうございます。最近の自分事をお話しすると、初めてのソロライブを開催しまして、またひとつファンの皆様との大切な思い出ができ、人間としてまた成長できたところでございます。

さて、ここから今回のテーマである「上京」について、少しずつ語りたいと思います。

俳優を目指して芸能界入りした僕は、高校卒業後に上京。そこで最初に直面した壁は、“ひとり暮らし”だったかもしれない。

自炊・洗濯といった家事全般から、家賃の支払いまで、すべてひとりでやらなければいけない。特に記憶に残っているのは、1円でも安いスーパーで食材を買っていたこと。

近隣のスーパーは少しお高めだったので、自転車で15分のところまで行って。明日を生きるためにはこれしかないと、仕事終わりに「運動だ、運動!」と自分に言い聞かせながら自転車をこいでいました。

あのとき食べていたソーセージパンは89円。今でも忘れないよ、喜びをたくさんありがとう。

慣れない環境に戸惑いを隠せなかった僕は、よく近所の公園でブランコに乗りながら、鼻歌を歌って現実逃避を繰り返していた記憶があります。大人になった今は何事も自分次第だと気づいているのですが、当時の僕には到底わかり得ない孤独と悲しさと寂しさと、いろいろな恐怖が襲ってきました。

もしかしたら皆様の中にも共感してくださる方もいるとは思いますが、それはそれは果てしなく遠く、時間が永遠に感じられるほどでした。幼いころから親に頼りっぱなしで考えなしの、ひとりでは何もできないタイプの人間だったと気づきました。

ここからは、そのときに思っていたことを自分なりに正直に書き連ねます。ご容赦ください。

ひとり暮らしってほんと大変だよな。生きていくためにはお金も必要でさ、だけどそれを稼ぐのは簡単なことじゃない。でも使うじゃない、どこに行っても。もう、星に願うしかないもんね。「どうにかお願い!」なんて、深い理由もなくさ。

でも、なんとか自分でやろうとすると、親や仲間の大切さに気づき始めてさ。このままでいいのかなぁ、なんて考えたりする夜もあって。ぜいたくな暮らしなんて望んでないんだけどね、少し高めのスイーツをコンビニで買う幸せにも気づいちゃって。あー幸せだ、なんて想いを馳せながらお風呂上がりにバラエティ番組なんかを観て、笑いながらそのスイーツを食べて。

結局、幸せってのが人それぞれもちろんあって、笑顔で楽しいって思える日のためにがんばってんのよね。上京したから大変とかそんなんじゃなくて、みんな大変じゃん。僕だって大変なときはあるもんね、人間だからさ。

そんなときに僕はファンのみんなのことを思い出して、そしたらがんばれちゃうのよ。すごいよね。だから、みんなも顔上げてな。お互い背中押し合っていこうな。

……なんて言葉をつらつらと想いの向くほうへ書いてみました。もちろん私のことを知らない方も中にはいるかと思いますので、気になったら作品など調べてみてくださいませ。きっと笑顔にできる自信を持って、これまでやってきたので。

当時バイトをしていたラーメン屋を訪ねてみたら…

話は少し戻りますが、上京したてでお金がなかったころ、誰にも内緒で、芸能の仕事が休みの日だけバイトをさせてもらっていた近所のラーメン屋さんがありました。実は、この話ができるようになるまでも、相当な時間がかかったんですよ。

何年か前に、久しぶりに元気にしてるかなと思い、「あのときはありがとうございました」と店主さんに伝えたくて訪ねてみたところ、ラーメン屋さんはきれいさっぱりなくなっていて。夢だったのかな、と思うほどでした。

それでもたしかに僕の記憶にはあって、手にも温もりが残っていて。僕自身も大切なことにしっかりと向き合えそうだなと、改めて思いました。

そんな僕は、今は東京という大都会に慣れてしまったかもしれない。「慣れてやらないからな!」という謎の葛藤を胸に勝負していた、若き日の木津少年よ。長いものに巻かれてきたこともあるだろう。ただ、それも人生。そのとき、その瞬間を、しっかりと前を向いて生きてきたんだと思うよ。

これから東京の街で戦う皆様には、一応先輩として「忘れないでほしいこと」があるのだが、どうだろうか、言ってみていいのかな、言ってみようと思う。

たくさんの誘惑や、自分の気持ちを脅かす出来事が、これから起きるかもしれない。だからこそ、ブレない心を大切に持ってほしい。もちろん、自分の軸は大事にしながら。

あなたはひとりではない。気が落ち込んだときも病んだときも、僕があきらめなかった理由を思い出してほしい。たくさんの支えがあって、きっとひとりで生きてきたわけではないはず。

一度きりの人生、少しくらいかっこつけて、まわりに自慢してやろう。大丈夫、必ず認めてもらえる日が来るし、認めてくれる人が現れる。僕はこれを読んでくれたあなたを、ずっと見守ってますよ。

安心して前に進んでみて。またひとつ、素敵なあなたに出会えるはず。過去・現在・未来と、一つひとつの出来事が想いで重なり合って、素敵な未来に向かっていきますように。

木津つばさエッセイ連載『舞台にさよならを言う前に』過去記事はこちら

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木津つばさ

(きづ・つばさ)1998年1月7日生まれ、広島県出身。舞台『刀剣乱舞』や舞台『東京リベンジャーズ』主演などを経て、2025年10月期のドラマ『良いこと悪いこと』(日本テレビ)にレギュラー出演