舞台を中心に活動をスタートし、数々の人気シリーズ作品に出演、現在は映像でも話題作にレギュラー出演するなど多方面で注目を集める俳優・木津つばさ。28歳になった今、「国民的俳優になる」という夢の途中にいる。
広島から上京した日のこと、コロナ禍で舞台に立てなくなった日のこと、“2.5次元俳優”の肩書に悩んだことなど、自身の言葉で赤裸々に綴るエッセイ連載『舞台にさよならを言う前に』。
【第6回】初めてのオーディション
今回書かせていただくタイトルは「初めてのオーディション」。応募から、オーディション当日、デビューした日までの話をできたらなと思います。
今でも忘れない高校2年生になったばかりの5月。俳優を夢見る僕は、芸能界に入るため、とあるボーイズグループのオーディションに応募しました。
応募した経緯については、活動10周年記念に発売したフォトブックを読んでいただけると幸いです。ここでは少しはしょってお話ししますね。

芸能界に興味を抱いてから、初めて受けるオーディションでした。1次審査用の動画を撮り、ドキドキしながら日々を過ごして、まずは2次審査への通達を受け取りました。
2次審査の課題は「歌唱」。歌は自信がなかったのですが、好きな歌をとにかく歌いきりました。気持ちよく歌わせてもらった記憶があります。
そして無事に、最終審査へ。課題は「ダンス」。
え、ダンス? やったことない……どうしよう……と心が折れそうになったのですが、先輩にたまたまダンサーさんがいらっしゃって、ありがたいことにダンスを教えていただきました。
まぁ、わからん。何事も始めるときは恐怖心があるよね。僕ももちろんそう、きっとみんなもそうだと思う。
でも、やらなきゃいけない、がんばらないといけないときって絶対にあって、僕にとってはそのタイミングでした。
僕も人間なので、本当にくじけそうになりました。
「たった30秒のダンス」が「されど30秒のダンス」になるんだなと。その時間で魅了して、引き込んで。まだまだ今でも奥が深いなと思います。
オーディションで見かけた「木津くんがんばれ」の文字
迎えた当日、初めての東京。
すべてが大きく見えました。ここで夢の続きを描けるのか、はたまた何も持ち得ず帰るのか。
公開オーディション形式で、審査順は「1番」。神様からの、最後のプレッシャーでした。
たくさんたくさん練習したのに、ダンスは失敗。本番ってなんで失敗するんだろうね。不思議だよね。練習では完璧!だったのに……。
それでもありがたいことに「木津くんがんばれ」と、1枚の画用紙に想いを綴って最終オーディションにお越しくださった方がいました。
パフォーマンスが終わり、結果を待つ部屋では何も考えませんでした。これまでやってきたことや、家族・友人への感謝を募らせていました。
そして、結果はなんと合格。デビューが決まり、運命が動き出しました。
その日は事務所付近にホテルを取ってもらい、そのまま泊まって、改めて親に連絡をしました。やっぱり信じてもらえないというかなんというか、「本当に?」と何度も聞かれたのを鮮明に覚えています。
帰り際に、応援してくれていたファンの方から画用紙をいただき、ホテルに着いて見てみると、裏には小さく「おめでとう!」と書かれていました。
不安だったのかな。泣いちゃいましたね。
だから、今でもみんなからのお手紙やプレゼントは、心からの感謝を胸に、大切に見ています。
あなたが見たい景色を一緒に見られていることが、幸せでならないので。
夢への一歩を踏み出したあの日から、挑戦は続いている
そして、次の日は事務所に行ってあいさつをして、そのままレッスンをしました。
ほかの練習生の方々もいたんですが、緊張感から解き放たれたのか、そのときのほうが歌もダンスもうまくいきました。これが世の情理というやつでしょうか?

ものすごいスピードで進んでいく風景に、最初は戸惑ったりもしました。
でも、進まないと止まれない。僕が夢見た場所で輝くためには躊躇(ちゅうちょ)なんかしていられないと、事務所に入って2日ほどで実感しました。
そりゃあ人間だから、何度もあきらめそうになった。
なんでだ! できない! わからない! ……たくさんある。
それでも前に前に進み続けることで、運命は動き出す。きっと幾重にも連なった壁を乗り越えて、また走り出す、その繰り返し。
今も、僕は挑戦しています。
こんな僕でも、って言うと応援してくれてるみんなに失礼かもだけど。
こんな僕でもがんばれているんだから、きっとみんなもがんばれるはず。乗り越えられるはず。
一歩踏み出して、自分を大切に、夢を追いかけ続けてくれたらうれしいです。
明日からも幸せに、自分の人生を全力で楽しもう。
自分の人生はいつだって、オーディション。
木津つばさエッセイ連載『舞台にさよならを言う前に』過去記事はこちら
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