超特急『ESCORT』ツアーファイナルで見せた“感動を超えた場所”。15年の軌跡を乗せて、9人で東京ドームへ

2026.8.14
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

撮影=米山三郎、小坂茂雄

文=坂井彩花 編集=森田真規


9人組メインダンサー&バックボーカルグループ・超特急が、アリーナツアー『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』の最終公演を2026年8月8日、9日に神奈川・Kアリーナ横浜で開催した。

11月に初の東京ドーム公演を控えるなか、リーダー・リョウガが休養のため不在となったツアー後半。それでも8人は、15年の歴史を背負う楽曲を現在の超特急として更新し、ソロやユニット、初挑戦となるエアリアルを通して、それぞれの実力を鮮明に示した。

“ダサかっこいい”を貫いてきた彼らが、ファンとともに“感動を超えた場所”へたどり着いた8月9日のツアーファイナルをレポートする。

感動を超えた場所へ──“ダサかっこいい”の成熟

──Time of GOLD 感動を超えた場所へ/感じよう NEW ERA

これは『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』の開演直前SEとして流されていた、「Time of GOLD」の一節だ。

超特急が初めてさいたまスーパーアリーナに立った『BULLET TRAIN Arena Tour 2018 GOLDEN EPOCH』のテーマソングだった同曲は、時を経て、今の超特急の佇まいを誇示する楽曲となった。オーディション『超特急募』による二桁号車(新メンバー)加入から4年、彼らはひとつの成熟を迎えている。

期待を優に上回る歌とダンスのスキル、かっこよさもかわいさも全力で引き受けるコンセプト昇華力、グループのみならずソロやユニットでも個性を発揮するバイタリティ、そしてライブを重ねるなかで磨き上げてきた8号車(超特急のファンネーム)との一体感。

活動初期からアイデンティティとして掲げてきた“ダサかっこいい”が、独自のカラーとして確立されたことを『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』は映し出していた。

なお、リーダーのリョウガは、体調回復を目的とした休養期間のため4カ所8公演のうち後半の4公演を欠席。不在となった公演では、ほかのメンバーが彼のパートをカバーしたり、本人の映像や音源を使用したりするなど、8人体制での最善を追求した。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”』でも、ダンサー・アロハの制限やボーカル・タカシの療養を経験していた超特急。このタイミングでのリーダー不在は、東京ドーム公演前、最後の試練を神が与えているように思えてならなかった。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

15年のすべてを乗せ、東京ドームへ

今回のツアーテーマは、いろいろな景色へ8号車をエスコート。「超特急といえば○○」と言いたくなるような側面を抽出し、ブロックごとに異なるムードを描き出していく。

ツアーのタイトルソングである「Secret Invitation」で華やかに幕明けし、「No.1」「Hey Hey Hey」とダンスソロで惹きつけるオープニング。「POKER FACE」を筆頭に魅せるクールセクション、「OVER DRIVE」から始まるポップセクションと、かっこよさにも愛らしさにも振れる超特急の多面性を表していた。

それでいて、「バッタマン」や「超えてアバンチュール」といった代表的な盛り上がり曲、「gr8est journey」や「Billion Beats」など大切な場面に添えられてきた曲をリストインせず、「Hey Hey Hey」や「BREAK OFF」を含む7曲を“Re-ver.”として再構築し、セットリストに組み込んだのも印象的だ。

中でも、元メンバーのコーイチをモチーフとしていた「ライオンライフ」をシューヤに合わせて調整し、9人体制として復活させた覚悟には度肝を抜かれた。新たなリテイク楽曲を迎えることで、よりいっそう“超特急らしさ”を拡張してみせたのである。

加えて、これまでの15年にわたる歴史を総括するかのように、幅広い年代の楽曲を満遍なく選曲。7人でスタートした超特急は、6人にも5人にもなり、今の9人となった。現体制から生まれた楽曲に固執しないセットリストは、どの時代で出会った8号車の想いも背負い続けると同時に、「これまでの歴史とともに東京ドームへ行く」と力強く語りかける。

オオトリの「Drawイッパツ!」を前に、マサヒロが「超特急を前に新規とか古参とか関係ない。お前ら全員で東京ドーム行くぞ」と豪語していたように、チーム超特急にとって“いつ出会ったか”は関係ない。

どの時代も大切な軌跡の1ページとした上で、今一緒に歩んでいる真実に目を向ける。どこから乗車しても(超特急ではライブへ行くことを「乗車」という)チーム超特急の一員になれるムードは、8号車をつかんで離さないひとつの要因なのだろう。

カイ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
カイ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
リョウガ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
リョウガ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
タクヤ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
タクヤ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
ユーキ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
ユーキ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
タカシ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
タカシ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
シューヤ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
シューヤ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
マサヒロ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
マサヒロ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
アロハ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
アロハ/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
ハル/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
ハル/『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

止まることのない挑戦

常に挑戦を続ける姿勢も、特筆すべきポイントのひとつだ。『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』では、各曲の一部やつなぎにダンサーのソロパートを取り入れ、さらにはユニットステージも展開された。「Hey Hey Hey」後のつなぎでハルが雄々しい表情をのぞかせたかと思えば、アロハは「POKER FACE」で狂気を解き放ち、「Spice」ではダンサーを引き連れたタクヤがパワフルなモーションで魅了。

カイは「Never Mine」で言葉にならない感情を表現に宿し、マサヒロは「MORA MORA」につなぐビートでスワッグな色気を香らせ、ユーキは「Steal a Kiss」で映像とリンクしたパフォーマンスを繰り広げる。

短い見せ場だけでもそれぞれの強みやギャップを駆使し、個性をはっきりと浮かび上がらせてみせたのだ。本来であればリョウガが担当していた「Full moon」へのつなぎのダンスパートは、ユーキが代打を担当。引き継がれたパフォーマンスは艶っぽくなめらかで、リョウガへのリスペクトがたっぷりと込められていた。

ふたりのボーカルも、それぞれの声で対照的な世界観を作り出す。タカシが「凱歌」で荒々しくロックスターの風格を漂わせれば、シューヤは「Full moon」を優しく歌い上げて場内を抱擁。

その対照性は『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025 「EVE」』で、タカシとシューヤに重ねられていた太陽と月のイメージを想起させると同時に、ボーカリストふたりの表現力を鮮やかに伝えていた。

ユニットとエアリアルで切り拓く“NEW WORLD”

3グループに分けられたユニットステージも、バラエティに富んだアプローチとなった。

タクヤ・タカシ・ハルは女子高校生ファッションに身を包み、「キャラメルハート(Sped Up)」をキュートにステージング。これまでも適宜用いられてきた本気の女装を、照れを見せることなく堂々とやりきった。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

ユーキ・シューヤ・マサヒロは「Fantasista」を、スタイリッシュかつセクシーにパフォーマンス。カイとアロハはマイクを握り、「One Life」で伸びやかに歌声を響かせる。本来はリョウガがピアノ伴奏を担い、『BULLET TRAIN Arena Tour 2018 GOLDEN EPOCH』を彷彿とさせるひと幕には、撮影済みの映像と音源を用いてリョウガの気配が感じられるように演出された。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

さらには、タカシとシューヤ(通称、せぶいれ)が「スピカ」で美しい歌声を響かせる。ニュアンスやサステインに至るまでお互いの呼吸を感じながら生み出されるハーモニーは、まさに唯一無二。歌唱が終わり交差する瞬間にロータッチする様子は、ふたりの強固な絆を静かに物語っていた。

ソロであっても、ライブのために生み出されたユニットであっても、ダンサーだけボーカルだけであっても、各形態で最高を叩き出せるのが、今の超特急。楽曲ごとに個性を前へ出したり、周囲と溶け合わせたりしながら、無限の化学反応を生み出していくのだ。

なお、ソロパフォーマンスは『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2023「T.I.M.E -Truth Identity Making Era-」』、ユニットステージは『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』で取り入れられた演出でもある。各公演で磨き上げた、ひとりでもユニットでも魅せる力を東京ドーム前のステージにも遺憾なく発揮した。

そして、彼らにとって新境地となったエアリアル(フライング)も、本公演を語る上で忘れてはいけない。メインダンサーたちは、立方体のオブジェ(キューブ)と球体(アース)を用いて上空5mでのアクロバットへ挑戦。ユーキに至っては、天井から垂れる白い布を操り、最高8mまで舞い上がった。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

しかも、当該楽曲が9人編成で初めて臨んだ公演『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2022「新世界-NEW WORLD-」』のテーマ曲、「NEW WORLD」というのも粋だ。新しい世界への意志を歌ったナンバーに、今までにないチャレンジを重ねて、過去の節目を次なる挑戦の場へと更新してみせた。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

一朝一夕では生み出せない8号車の声

飽くなき探求心を持っているのは、なにも超特急の名を背負い活動しているメンバーだけではない。グループの一員と称される8号車も、コールのブラッシュアップに心血を注いでいる。

「超ネバギバDANCE」「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」と、熱量を高めた上でドロップされた「ガチ夢中!」のなんと凄まじいことか。思わずカイが「みんなの声がイヤモニを貫通して、めちゃくちゃ聴こえてくるんですよ」というほどの声量が、満員のKアリーナ横浜にこだまする。まさに8号車は同曲の歌詞にある「全力 猪突猛進/証明すんだ愛の証」を、全身全霊のかけ声で体現しているのだ。

しかも、アンコールのラストナンバーであり、東京ドーム公演前のラスト曲となる「Drawイッパツ!」になると、さらに歓声はパワーアップ。「夢のドームへ向けて、しっかりと背中を押すんだ」といわんばかりのハツラツとした声援が、鮮烈なエネルギーを伴って会場に響き渡る。長い年月をかけて培われてきたお互いへの信頼は、一朝一夕では生み出せないエモーショナルな情景を作り出していた。

『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)
『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』より(撮影=米山三郎、小坂茂雄)

8人で示した最善、9人で向かう東京ドーム

“超特急らしい”の概念をひと回り広げるとともに、個人やユニットとして確固たる実力も鮮明に示した本公演。ツアー後半はグループのリーダーであり精神的支柱でもあるリョウガが不在となってしまったが、メンバーを欠いた状態でステージに立ってきた過去の経験を活かし、今できる精いっぱいを詰め込んだ公演になっていたことは言うまでもない。

一方で「やっぱり超特急は9人がいいよね」と強く感じたのも事実だ。ハルが「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」の始まりにリョウガの話題を出したり、ユーキがMCでリョウガへの想いを口にしたり、“9人そろっていない”ことが“9人そろっている”ことの奇跡や素晴らしさを、如実に浮き彫りにしていた。

また、かっこよさもかわいさも、一見するとダサく思えるトンチキな演出も、本気で取り組めば究極のかっこよさへと昇華され、“感動を超えた場所”へ到達する。それを改めて噛みしめたツアーだったようにも思える。

どんな表現も妥協せず、しっかりとやりきる彼らの姿勢は、昨今目にする“嘲笑”というワードの真逆に位置するといっても過言ではない。

泥臭いのも、ジタバタもがくのも、真剣に取り組むのも、誰かが小バカにしていい道理はなく、むしろ尊いことなのだと、超特急の生き様は訴えかける。

彼らを待ち受ける次なる大舞台は、東京ドーム。このリアルこそ、いつどんなときも“ダサかっこいい”を貫いてきた超特急がホンモノであることを証明している。

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験ののち、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャー..