「大豆がなければ、ヘーゼルナッツでいいじゃない」イタリア製「ヘーゼルナッツの味噌、しょうゆ」が一流シェフに愛される理由

2021.10.16
イタリア味噌2

文・撮影=宮本さやか 編集=アライユキコ


美味しい「ヘーゼルナッツの味噌」の作り手、発酵マエストロ、カルロ・ネスラーにさらに聞く。そもそも、なぜ発酵食品に興味を持ったのか? イタリアで味噌やしょうゆに夢中になったカルロ少年に何があったのか。フードジャーナリスト・宮本さやかが、マエストロの「なぜなぜ人生」に迫る。

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地産地消の本当の意味

「日本の味噌や醤油の作り方をいろいろ研究して、まあまあ納得できるモノができるようになった。麹菌だけは日本のものを取り寄せて、大豆は地元で作ってもらったものを使って。だけど、あるとき、気がついたんだ。味噌を作るのに必要な大豆は、もともとイタリアで食べているものではない。それはなぜかと言えばイタリアのこの地域で栽培するのには適していないからだってことに。大豆栽培には水がたくさん必要だけど、このへんは雨が少なくてとても乾燥している。そんな土地で無理に大豆を育てたら環境に大きな負荷をかけるし、食べ慣れていない僕らイタリア人の胃腸には、消化しにくいという問題もある」。

作業中、ほんとに楽しそうなカルロさん
カルロ・ネスラー(Carlo Nesler)発酵スペシャリスト。2016年、発酵と自然農法に特化した生産、トレーニング、実験の拠点「CibOfficina」を設立。大豆を使わない味噌醤油を生産、イタリア全国で教室も開催。受講生は海外の発酵コミュニティにも広がっている

地産地消とよくいうけれど、それは地元で作物を作り、km0(農家から食卓まで0km)でさえあればいいということじゃない。その土地の土壌や気候に適したものを作り、その土地で生まれ育った人の身体に合うものを食べる、それが大事なんだ。発酵というプロセスを経て、人間の身体が消化・吸収しやすいように菌が食物を分解してくれるとはいえ、イタリア人の身体が消化しにくい大豆を使うというのも違うのではないか。

そう考えたカルロさんは、地元ヴィテルボ近隣の農家が作っていた豆類──レンズ豆やひよこ豆、そしてヘーゼルナッツで味噌、しょうゆソースを作ってみることにした。結果は上々。香り高く、美味しいだけでなく、環境にも食べる人間の身体にも優しい、そんな味噌やしょうゆたちができ上がった。さらに、地元の農家にも仕事が増えた。いい豆類をコツコツ作っている農家に注目が集まったから、じゃあ俺もいい豆作ろう! じゃあ俺も俺も、と地元の農業が活性化したのだ。

こんなふうにカルロさんは、発酵食品を武器にして、環境問題やSDGsにも取り組んでいる。今年の春からは、日本、イタリア、ドイツの企業をつなげ、地球規模の環境、生態系の回復に取り組む団体「JINOWA」でも、中心的な存在として活動している。

JINOWA LIVE TALK Vol.1【日本語吹替版】

6歳から始まった「なぜなぜ人生」


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宮本さやか

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