中川翔子「ほかの家族と違う」と気づいた幼少期。父亡きあとに見つけた“ちょうどいい”家族の距離感

中川翔子

文=於 ありさ 撮影=須田卓馬 編集=高橋千里


幼いころに父を亡くし、母、祖父母、そしてネコたちと生きてきた歌手・タレントの中川翔子。彼女に“家族”について話を聞くと「どの家族も同じじゃないし、それでいいと思っていました」と笑顔で話してくれた。

今では当たり前となりつつある多様な家族の在り方に、幼少期から気づけた転機とはいったいなんだったのか、話を聞いた。

中川翔子(なかがわ・しょうこ)
1985年生まれ、東京都出身。2002年に芸能界デビュー。歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐にわたり、多数のバラエティ番組に出演中。人気アニメや映画の主題歌を担当。海外でのコンサートも数年にわたり行い、その人気・知名度は世界にも広がっている。2023年2月22日には自身の芸能界デビュー20周年を記念したベストアルバム『超!しょこたん☆べすと――(°∀°)――!!』をリリース。同年5月には自身が主催する音楽フェス『祝・日比谷野音100周年 しょこたんフェス』を開催予定。YouTubeチャンネル『中川翔子の「ヲ」』は登録者95万人を突破(2023年3月現在)。

「私が体調不良のときに…」ネコの身に起きた、ウソみたいな出来事

中川翔子

──映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』で、「3びきのくま」と暮らす少女・ゴルディの吹き替えを担当された中川さん。ゴルディに共感したポイントを教えてください。

ゴルディと3びきのくまたちが本当に心から“家族”のような存在であるというのは、観ていてすごく共感しました。私と、一緒に暮らす8匹のネコたちの関係性に似ているなって。

──そうなんですね。

うちには、今回の映画の主人公・プスにそっくりなメポというネコがいるんですけど、彼は私の生きがいであり、息子であり、相棒なんです。私がしばらく仕事で地方に行って、家に帰ってきたら、自分の体よりも大きな枕をくわえて持ってきてくれたことがあって。きっと「お疲れさま、母さん。一緒に寝よう」って言ってくれたんですよね。

それから、私が体調不良で寝ているときに、胃薬をくわえて持ってきてくれたこともありました。それは今でもお守りとしてポーチに入れています。

──まさに相棒ですね。

そういうウソみたいな出来事とか、言いたいことをお互いにわかり合えている感じから、私とネコたちは魂でつながっているんだなと感じることが多々あります。

「生きること」しか考えないネコたちから学んだこと

中川翔子

──ネコと暮らすなかで、学んだことはありますか?

ネコって、長くても15年しか生きられないといわれているんですね。だから、本当に「生きること」しか考えていないんです。人間ってすぐ悩んだり落ち込んだり、死にたいなって思うじゃないですか。でも私は、ネコたちが前だけを見ている姿からパワーをもらって、バランスを取っています。

──なるほど。

昔、友達が「人間の人生って3万日しかないんだって」と言っているのを聞いて、すごく驚いたこともあります。そういう考えに触れてからは、お仕事をするたびに「これが最初で最後かも」と思うようになりました。

そういうふうに自分の人生の時間を使おうって考えたら、無理にストレスの溜まることをしないようにもなったんです。人生の限りある時間を、自分が大事にしたいと思う人や、好きな相手と過ごすことが、本当に重要だと思います。

「なんでお父さんがいないの?」それでもいい、と思えた理由

中川翔子

──中川さんにとって、家族とはどのような存在でしょうか?

会えなくてもどこかでつながっている存在なんじゃないかなと思っています。そう思ったのは、私が今のお仕事をするようになってから、父の足跡が大量に見つかったからなのですが……。

──どういうことでしょう?

父は、私が9歳のころに亡くなってしまったので、きちんと会話をした記憶がほぼありませんでした。でも、初めてコンサートを開催した渋谷公会堂は父がライブをした場所だったり、出会う人たちに「お父さんと仕事してたよ!」と話しかけられることが多いんですよね。

それに、歌を歌って、絵を描いて、役者をして、アニメの吹き替えをして……という、私が今やっていることを、父も全部やっていたんですよ。そういうつながりに気づけたときに、もう会えない先祖たちとも血がつながっているんだなと思えました。

中川翔子

──なるほど。昨今は家族の在り方が多様になっている印象ですが、中川さんは家族とはなんだと思いますか?

どこも同じじゃない。けど、それでいいと思っています。学生時代、友達の家に遊びに行ったときに、お母さんが家にいてご飯を作っていて、そこにお父さんが帰ってきて……というシチュエーションに遭遇したことがありました。そのときに「家族でご飯を食べるって、『サザエさん』の世界だけじゃなく、普通にあるんだ!」ってびっくりしたんですよ。

うちは母が基本的に夜働いて遅くに帰ってきていましたし、祖母は麻雀教室に行ったり、シャンソン歌手の追っかけをしたりしていましたから(笑)。でも、きっと、それでいいんだと思います。

──「それでいい」というのは、幼少期から思えたのでしょうか?

そうですね。もちろん、『サザエさん』みたいなおうちに遊びに行って「いいな」と思うことはありました。友達から「なんで翔子ちゃんって、お父さんがいないの?」と聞かれたこともありましたが、おじいちゃんが父親代わりでしたし、全然大丈夫でした。

それに、うちは母が料理をしなかったんですけど、「足りない部分は自分で補えたらいいか」と思って、私が料理していましたからね。

今の母親との距離感が、自分にとって“ちょうどいい”

中川翔子

──中川さんが考える、家族との“ちょうどいい”距離感を教えてください。

男女問わず、家族を大事にしている人って素敵だなと思います。でも、大事にしているというのは、一緒に住むとか、頻繁に会話をするとかではないとも思っています。

──なぜでしょう?

今、私は独身ですけど、母親と二世帯住宅で暮らしているんですね。ネコのために、ネコの通り道とかもある家を建てて。そこでの母との距離感が自分にはちょうどいいんですよ。

忙しいときは1週間ぐらい話さないこともあるし、かと思えば階段を行き来して「あんた、これ食べる?」と聞いてくることもありますから。毎日一緒に暮らしていたときはケンカになっちゃうこともあったのですが、今はそういうことも減りました。

──家族との“ちょうどいい”距離感も、人それぞれですよね。

そうですね。家族と毎日一緒に過ごすのが“ちょうどいい”人もいれば、一緒にいるとぶつかっちゃうから、離れて暮らすほうが“ちょうどいい”人もいる。家族との関係性から、自分にとって心地いい距離感を探るのがいいと思います。

中川翔子

連載「&Life」

今気になる芸能人たちの生き方を辿る連載「&Life(and Life)」。インタビューを通して見えた、彼女たちの“これまで”と“これから”。

第1回:重川茉弥
第2回:後藤真希
第3回:若月佑美
第4回:宇垣美里
第5回:工藤遥
第6回:本田仁美
第7回:横澤夏子
第8回:大久保桜子
第9回:milet
第10回:前田敦子
第11回:峯岸みなみ
第12回:辻希美
第13回:中川翔子

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  • 映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』

    『シュレック』シリーズから飛び出した、帽子に羽根飾り、マントと長ぐつがトレードマークの圧倒的な人気を誇る伝説(レジェンド)のネコ・“プス”を主人公として生まれた映画『長ぐつをはいたネコ』シリーズ第2弾。

    9つあったプスの命があとひとつに。急に怖くなり、家ネコになろうと決意するものの、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を聞く。命のストックを求める旅の道中に出会うのは、気まずい元カノ・キティや、ネコに変装したイヌのワンコ、「願い星」で願いを叶えようとする手強い奴ら、さらには最強の敵まで現れ、プスの冒険はどうなるのか──!?

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於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。

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