パン屋になるはずが特撮ヒーローに。グラビアでも活躍する大久保桜子の夢

文・編集=菅原史稀 撮影=二瓶 彩


2017年にスーパー戦隊シリーズ『宇宙戦隊キュウレンジャー』でハミィ/カメレオングリーン役を演じ、連続テレビドラマデビューを果たした大久保桜子。その後2019年に1st写真集『SAKURAKO』を発売以降はグラビアのシーンでも注目を集め、今年8月18日から始まる公演『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』では舞台に初挑戦するなど、活動分野を精力的に広げている。

今年でデビューから5年目を迎えた彼女にこれまでのキャリアを振り返ってもらうと、その語りからフレキシブルだからこそ力強いチャレンジ精神が伝わってきた。

大久保桜子
(おおくぼ・さくらこ)1998年生まれ、神奈川県出身。『宇宙戦隊キュウレンジャー』や映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦』などに出演。2019年、20歳最後を記念して自身初の写真集『SAKURAKO』を発売、その後グラビアデビューを果たす。2022年1月には2nd写真集『sol』を発売。2021年、自身の誕生日である7月20日にYouTubeチャンネル『大久保桜子ちゃんねる』を開設している。


人前が苦手な「世話が焼ける子」が、芸能界を志した理由

──もともとはすごく恥ずかしがり屋さんで、お遊戯会でもずっとうしろに隠れているタイプの子供だったのだとか。

そうですね。幼稚園の送迎バスに乗りたくないがあまり泣き叫んだり、卒業アルバムでもまともな写りのものが一枚もなかったり、とにかく人前へ出るのが苦手でした。母からは「世話が焼ける子だった」とよく言われます(笑)。

──人前へ出ることの苦手意識は、いつごろなくなっていったんですか?

高校3年生のとき『宇宙戦隊キュウレンジャー』に出演することが決まり、たくさんの人がいる環境に身を置くようになったことで、だいぶ鍛えられました。

──人前が苦手だった大久保さんが、芸能界を志そうと思ったのはなぜだったんでしょう。

『キュウレンジャー』の撮影が全部終わったあとに舞台挨拶があったんですけど、それまで1年間ずっと放送を見守っていてくださったファンの皆さんやキャストの仲間たち、スタッフさんたちがすごく泣かれていて、それを見たとき「この世界は、こんなにも人の心を動かす場所なんだ。すごい」と思って、それからですね。

──芸能界でやっていくことを決めたのは、『キュウレンジャー』の撮影がすべて終わってからのことだったのですね!

そうなんですよ。もともとオーディションを受けたときは、1日くらいの撮影で終わるつもりでいたんです。当時すでに大学も決まっていたので、自分が目指すもののために勉強しようと考えていました。

──何を目指していたんですか?

パン屋さんです。パンが大好きで、高校生のときは毎朝家で焼いたりしていました。

なので将来は絶対にパン屋さんになろうと思っていたんですけど、うちの母は私に芸能のお仕事をやってほしかったみたいで、勝手にいろんなところへ書類を送っていて。その流れで『キュウレンジャー』に出ることになって、「ちょっと! 私、パン屋さんになりたいんだけど!」って(笑)。

──パン屋さんになるつもりが、特撮ヒーローに。

はい。本当に思いがけない展開でしたけど、今振り返るととてもいい意味で人生が変わった転機だったなと思います。

不安だったグラビアの撮影が、楽しくなった

──キャストの皆さんとは、すぐに打ち解けられたのでしょうか。

みんなとっても優しい人ばかりだったんですけど、最初のころは私が人見知り過ぎて、打ち解けるのに時間がかかってしまいました。たとえば足場が悪い崖での撮影で、「危ないよ」と手を差し出してくれても「いや、大丈夫です! ひとりで歩きます」ってバリアを張ってしまったり。それでも、本当にありがたいことにみんな歩み寄ってくれて、撮影開始から半年経ったあたりでやっと仲よくなれて。今では本当の兄弟みたいに親しい関係です。

──なるほど。ヒーロー作品への出演は、いかがでしたか?

それまで特撮作品を観たことはなかったんですけど、小さいころから『マーベル』シリーズが大好きで、新作が出るたびビデオ屋さんに行って借りてきては食い入るように観ていたので、ヒーローに対する憧れはもともと強かったんです。特に『スパイダーマン』は、シリーズごとに変化していってるところがカッコいい。

そういうチャレンジ精神って、戦隊シリーズにもありますよね。出演させていただいた『キュウレンジャー』も、戦隊ものとして革新的なところがいっぱいあったと思うし、そもそもオーディション当時はキャリアもなければお芝居経験もゼロだった私に、こんなに大きなチャンスを与えていただいて。

──チャレンジ精神というのは、大久保さん自身の活躍からも感じられることだと思います。2019年、1st写真集『SAKURAKO』の発売を皮切りに、グラビアの世界へと足を踏み入れて。

ありがとうございます。1st写真集が私にとって初めてのグラビア撮影になったんですけど、写真集のお話をマネージャーさんにいただいたときは正直、色んな不安があって。最終的にはマネージャーさんと話して、熱意も感じて、「やってみよう!」と決意しました。

──『キュウレンジャー』のときは、役になりきって写真撮影することはあったと思いますが、グラビア撮影のマインドはまた違うものなのでしょうか。

私は、グラビア撮影のときは完全に自然体というより「この衣装のときは明るい感じでいこう」「このシチュエーションは悲しい感じでいこう」と、スイッチを入れてやっています。

実は未だに、“そのままの自分”で人前に出ることはないんです。ふと我に返ると、どう立ち振る舞えばいいのかわからなくなってしまうこともあって。

──なるほど。今ではグラビア撮影を楽しんでやっていらっしゃるんでしょうか。

今はとても楽しいです! 1st写真集ではスタッフさんが初めましての方ばかりだったこともあり、私が人見知りを発動させてしまって(笑)、せっかく撮影地がグアムだったのにずっとロケバスにいて黙ってる、みたいな感じだったんですけど……グラビアのお仕事をつづけていくうちに、知っているスタッフさんも増えていって、撮影することもどんどん楽しくなっていきました。

そういう内面の変化って、すごく写真に表れるものなんだなと感じます。私自身グラビア撮影のとき、心がどんどんとオープンになっていっているのを感じているので、数年前と今のグラビアでは見え方が別人のようになっていますね。


次は舞台へ。挑戦によって変わるものと、変わらないもの

──グラビアのお仕事を始めてから約3年が経ち、さまざまな変化を感じているのですね。

でも同時に、根本的には幼稚園のころから何も変わってないなとも思います。いまだに全然、恥ずかしがり屋で人見知りですし。

ただ今は、そう見せないようにするにはどう振る舞えばいいかということがわかってきたというか。あまり人とお話しできなかったり恥ずかしがってばかりいると、まわりの人を困らせてしまったり気を遣わせてしまうので、それはないようにしたいなと思います。

あとは、自分のことが前よりも好きになってきているのを感じています。昔は自分が嫌いで仕方がなかったんですけど、今ではありのままの自分を受け入れられるようになって、好きでいられるようになりました。そういうのは、成長を実感できるところですね。

──根幹は変わらずも、進化をつづけていっている大久保さん。まもなく公演初日を迎える『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』では舞台に初挑戦されるということですが、このオファーが来たときはどんな心境でしたか。

今までに何度か舞台のお話はいただいていたんですけど、やっぱり人前に立って何かをするということがどうしても怖くて……「もうちょっとキャリアを積んで、自信が持てるようになってから挑戦したいです」って言い訳をしながら避けつづけていました。

でも今回の舞台は、1st写真集のときと同じくらいマネージャーさんが熱意を持って勧めてくれて、前向きに考えたいと思ったんです。それで台本を読んでみたら、物語が本当におもしろくて。

──物語に胸を打たれて、舞台に立つ決心ができたんですね。

はい。私は、自分でも「ドMなのかな?」って思うくらい、いい意味で心にダメージを与えてくるような作品が好きなんですよ。そのせいで落ち込んで夜眠れなくなっても構わないから、「もっと刺して!」って言いたくなる(笑)。『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』はまさにそんな、心にずっしりとくる作品だったので、「これに私が出れるの? やりたい!」という思いでいっぱいになって、舞台に対する恐怖心は薄れていきました。早く多くの方に観ていただきたいですね。

──期待しています! それでは最後に、今後挑戦したいことをお聞かせください。

これまで特撮ヒーロー作品に出演したりグラビアの世界に飛び込んだり、そして今回は舞台に初挑戦したり、新たな扉を開くような経験をさせていただいているので、これからもチャレンジをつづけながら、そのときの私だからこそ表現できるものを残していければと思います。

そして芸能のお仕事以外にも、実はパン屋さんになる夢はいまだ変わらずに持ちつづけているので、将来何歳になってもいいからいつか実現できればとてもうれしいですね。

作品情報

劇団おぼんろ第21回本公演『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』

脚本・演出:末原拓馬
出演者:トノキヨ役・さひがしジュンペイ/わかばやしめぐみ
クラゲ役・末原拓馬/橋本真一
ワカメボーイ役・高橋倫平/日向野祥
ラッコ役・塩崎こうせい/瀬戸祐介
サンゴの姫役:大久保桜子/二ノ宮ゆい/わかばやしめぐみ(27日限定)
※役柄固定のミックスキャスト

日程:2022年8月18日(木)〜8月28日(日)全19ステージ
会場:Mixalive TOKYO Theater Mixa
公演日:8月18日(木)19:00
8月19日(金)13:00/19:00
8月20日(土)13:00/18:00
8月21日(日)13:00/18:00
8月22日(月)19:00
8月23日(火)13:00/19:00
8月24日(水)13:00/19:00 ※生配信/Blu-ray収録
8月25日(木)15:00
8月26日(金)13:00/19:00
8月27日(土)13:00/18:00★限定キャスト
8月28日(日)11:30/16:00

開場は開演の45分前。受付開始は開演の1時間前。

【オンライン生配信について】
8月24日(水)の2ステージを生配信いたします。アーカイブ配信は9月11日(日)23:59まで行います。

連載「&Life」

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第1回:重川茉弥
第2回:後藤真希
第3回:若月佑美
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第5回:工藤遥
第6回:本田仁美
第7回:横澤夏子
第8回:大久保桜子


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    【応募期間】
    2022年8月17日(水)〜2022年8月31日(水)
    ーーーーーーーーーーー
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      ▼
    【応募完了!】
    締め切り後当選された方には、『QJWeb クイック・ジャパン ウェブ』公式アカウント「@qj_web」からDMにて、ご連絡差し上げます。フォローを外さず、DMを開放してお待ちください。
    当選の発表は、こちらのDMをもって代えさせていただきます。
    ※当落についてのお問い合わせは受けかねますので、ご了承ください。
    ※本景品は非売品です。譲渡・転売はご遠慮ください。
    ※チェキのパターンのご希望は承れません。
    ※いただいた個人情報は、本プレゼントキャンペーン以外の目的には使用しません。

  • 劇団おぼんろ第21回本公演『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』

    脚本・演出:末原拓馬
    出演者:トノキヨ役・さひがしジュンペイ/わかばやしめぐみ
    クラゲ役・末原拓馬/橋本真一
    ワカメボーイ役・高橋倫平/日向野祥
    ラッコ役・塩崎こうせい/瀬戸祐介
    サンゴの姫役:大久保桜子/二ノ宮ゆい/わかばやしめぐみ(27日限定)

    ※役柄固定のミックスキャスト


    日程:2022年8月18日(木)〜8月28日(日)全19ステージ
    会場:Mixalive TOKYO Theater Mixa
    公演日:8月18日(木)19:00
    8月19日(金)13:00/19:00
    8月20日(土)13:00/18:00
    8月21日(日)13:00/18:00
    8月22日(月)19:00
    8月23日(火)13:00/19:00
    8月24日(水)13:00/19:00 ※生配信/Blu-ray収録
    8月25日(木)15:00
    8月26日(金)13:00/19:00
    8月27日(土)13:00/18:00★限定キャスト
    8月28日(日)11:30/16:00

    開場は開演の45分前。受付開始は開演の1時間前。

    【オンライン生配信について】
    8月24日(水)の2ステージを生配信いたします。アーカイブ配信は9月11日(日)23:59まで行います。

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菅原史稀

(すがわら・しき)編集者、ライター。1990年生まれ。WEBメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーシーンの分析を主な分野とする。

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