宇垣美里「“好き”を布教すると、生きてる実感が湧く」大好きなマンガと共に明かす、局アナ時代と今

2021.12.14
宇垣美里

文=ちゃんめい 撮影=洞澤佐智子 編集=高橋千里


数多くの人気番組にレギュラー出演し、TBSのアナウンサーとしてスポットライトを浴びていた宇垣美里さん。

2019年よりフリーランスに転身。テレビ出演のほか、モデル、執筆業などさまざまなフィールドで活躍の場を広げ、2021年12月14日には彼女のマンガ愛が炸裂する『週刊文春』の人気連載「宇垣総裁のマンガ党宣言!」を書籍化した『今日もマンガを読んでいる』(文藝春秋)が発売される。

本書の発売を記念し、宇垣さんに局アナ時代の話や今後の展望について、大好きなマンガと共に語ってもらった。


「好き」を言葉に、そして取捨選択することの難しさ

──初めに、『今日もマンガを読んでいる』の発売が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

宇垣美里(以下:宇垣) いろいろな媒体で連載させていただいているのですが、その中でも「宇垣総裁のマンガ党宣言!」はすごくエネルギーを使う連載のひとつです。毎回唸りながら執筆していたので、それがこうして一冊の本になるとお聞きしたときはとてもうれしかったです。

──執筆中はどういったことに苦労されたんですか?

宇垣 この連載では、特に自分の好きなマンガを取り上げさせてもらっているのですが、まず「好き」という気持ちを言葉にすることが大変でした。この作品の何がよかったのか、どこが自分に刺さったのかというのを精査していき、その結果、膨大な量になってしまった「好き」を取捨選択して、推敲していく作業にも毎回、四苦八苦していましたね。

宇垣美里

──お好きなマンガは数え切れないほどあると思いますが、宇垣さんの人生に影響を与えたマンガがありましたら教えてください。

宇垣 好きなマンガは本当にたくさんあるんですよ! 著書でも紹介している、水城せとなさんの『窮鼠はチーズの夢を見る』(フラワーコミックスα)は大好きで何度も読み返していますし……。あと、吉野朔実さんの『恋愛的瞬間』(小学館文庫)や、よしながふみさんの『愛すべき娘たち』(Jets comics)も好きです。何度読み返しても、その時々の自分を救ってくれますね。

──『恋愛的瞬間』と『愛すべき娘たち』については、本書のあとがきでも触れていましたね。さすがマンガ好き!と感じさせる選書だと思ったのですが、今挙げられた作品と出会ったきっかけはなんだったのでしょうか?

宇垣 友達や先輩におすすめしてもらったことがきっかけですね。もちろん自分で選んで読むこともあるのですが、世間ではあまり知られていない隠れた名作は、年上の友人たちにおすすめいただいて出会うことが多いかなと思います。

──確かに、人のおすすめから、思わぬ素敵なマンガと巡り会えることってありますよね。

宇垣 その方が「あなたに合う」って私に勧めてくれたものだから、読むときの心理的ハードルも下がりますし、読んで吸収するものもまた変わってくるのかなと。とてもありがたい出会いでしたね。

宇垣美里

──本書の後半に「拝啓、貴方様」という、宇垣さんがTBSアナウンサーだったころに『クイック・ジャパン』で執筆されていた連載も収録されています。TBSアナウンサー時代のやりがいや思い出を教えてください。

宇垣 そもそも私は生きていくために働いているので、そこまで仕事にやりがいを求めていないんです。でも、その中でどうやって自分のモチベーションを上げていたかというと、一緒に仕事をしている方々や私が信頼している方たちからの評価……。

たとえば、スタッフの方や先輩方に「ここがよかったよ!」とか「あのときの切り返しはさすがだね!」って言ってもらえるのがすごくうれしくてがんばっていましたし、あと、私の上司がすごくいい方だったので「この方に褒めてもらいたい!」というのをひとつのモチベーションにしていました。

──評価してくれる人がまわりにいたというのはすごく幸せなことですよね。反対に大変だったことや苦悩はありましたか?

宇垣 (情報を)伝えることがアナウンサーの仕事なのですが、自分がどう思っているのかは求められていないので、自分のことは伝えないんですよね。そうすると、自分とは大きくかけ離れた“宇垣美里像”みたいなものが形作られていくときがあって、苦悩というよりは不思議に思っていました(笑)。

でも、私はその他大勢よりも自分の近くにいる方からの評価を指標にしていたので、そこまで振り回されることなく、自分らしくがんばれていたかなと思います。

宇垣美里

自分の大切なことが表現されていると「間違ってなかった!」と思える

──多忙なTBSアナウンサー時代に宇垣さんを支えたマンガを教えてください。

宇垣 忙しければ忙しいほど少年漫画を読んでいましたね。現実離れしたマンガのほうが、かえって自分のことを忘れられて息抜きになったりするので。それこそ諫山創さんの『進撃の巨人』(講談社コミックス)みたいにダークで血みどろで厳しい世界観の作品を読むと「あー! 現実離れできた! ひと息つけた!」みたいに爽快な気持ちになっていました(笑)。

──恋愛漫画に癒やしを求めることはなかったんですか?

宇垣 キュンキュンするタイプの王道な恋愛漫画はあまり手に取らなかったです。私の場合、そういった作品は忙しいときではなく、自分に余裕があるときのほうが素直に摂取しやすいのかなと。

強いていえば、水城せとなさんの『世界で一番、俺が○○』(イブニングKC)など、大人の恋愛を描いた作品を読んで癒やされていました。

宇垣美里

──フリーランスになろうと決意したとき、自身の背中を押してくれたマンガがありましたら、教えてください。

宇垣 フリーランスになることの背中を押してもらったということはないですが、女性が社会で生きていく上で背中を押してくれたマンガならたくさんあります。

──この記事を読まれている読者の方におすすめするとしたら、どのマンガを選びますか?

宇垣 最近読んだマンガの中だと、谷口菜津子さんの『今夜すきやきだよ』(BUNCH COMICS)という作品がすごくよかったです。読んでいて「これはもう救い!」って思いました(笑)。

あと、著書でも取り上げたのですが、ゆざきさかおみ先生の『作りたい女と食べたい女』(it COMICS)も最高ですね。どちらも、私たちが生きていく中で勝手に課せられるものから自由にしてくれる作品なので、ぜひ皆さんにも読んでほしいなと思います。

──ふたつとも「食」がメインで描かれているところも共通点ですよね。

宇垣 私、食べることも好きですが、人と食事を共有することがすごく好きなんです。私にとって大切な人とは、おいしいものを食べて一緒に「おいしいね」と言える人なんだと思います。

たとえば、食べ物に対する欲望の深さが同じってすごく大切ですよね。「焼肉食べよう!」って言ったときに、迷いなく「そこは極上で!」って返してくれる人がいい(笑)。私は「何を食べても同じ」って言う人とは一緒に食事を楽しめないと思うんです。そういった意味でよしながふみ先生の『きのう何食べた?』(モーニング KC)とか、食事シーンのあるマンガはすごく好きです。

宇垣美里

──宇垣さんが大切にされていることが、物語にしっかりと反映されているんですね。

宇垣 自分が大切にしていることが物語の中でも大切にされていると「間違ってなかったんだ!」と思うし、すごく背中を押してもらっている感じがするんです。

生きていると「そこは別によくない?」と思うような意見が聞こえることがあって。でも、それに対して「そうじゃない! 私たちは誰に何を言われてもこれを大切にするべきだ!」って力強く描いている作品がすごく好きですね。

「好き」が仕事になった今、思うこと


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ちゃんめい

マンガライター。マンガを中心にエンタメ系のインタビュー、レビューの執筆や、女性誌のマンガ特集に出演。毎月100冊以上マンガを読む。