『VRおじさんの初恋』がロスジェネ世代に突き刺さる「オタク、ネクラ、キモい、だって俺その通りなんだもんな」暴力とも子に聞く

2021.4.16
暴力サムネ

40歳独身男性のナオキ。家でひとりVR世界に入っていたところ、ある女性アバターのホナミという存在に出会う。アバターを利用しているのが誰なのかはわからないが、ふたりの間には特別な感情が芽生え始める。

ギャグではなく、ロスジェネ世代の現実のシビアさとVR空間での純愛を正面から描く『VRおじさんの初恋』がツイッターとnoteで何度もバズり、オンライン書店では品切れしっぱなしなほど大人気だ。

なぜ題材がおじさんなのか、なぜVRなのか。VTuber文化に詳しいライター・たまごまごが、作者の暴力とも子に作品の根幹にある考え方を聞いた(一部作品のネタバレを含みます)。


おじさん+VR+恋愛で

──この作品は何万RT単位でものすごい勢いでバズったなーという感覚がありました。しかも2回3回と。

暴力 2020年2月にnoteで最初のバズがあり、遅れてツイッターでバズりました。今年の2月に単行本が出るのに合わせて宣伝として全文掲載し、それが3度めのバズになりました。

──この作品を書こうとしたのはなぜですか?

暴力 最初『マンガコネクト』で連載の依頼を頂いたときのお題の中から「百合」「ナイーブな恋愛もの」「異世界もの」を選んで自分なりに組み合わせたとき、「女性同士のキャラで百合を成立させながらも、別世界ではそれぞれが男性のままである」という流れが作れたらおもしろいと思ったからです。そこにVRを挟むと、元の男性の身体があるというのが物語のギミックとして生きる。現実の世界がなくなったわけじゃない。

『VRおじさんの初恋』暴力とも子/一迅社

──なるほど、転生や移動はしないと。

暴力 現実のしんどさは依然として残るとおもしろそうな気がして。もうひとつが、ロスジェネ世代の人たちのしんどさとかをちゃんと描くチャレンジをしたかったってのもあります。たとえば『おっさんずラブ』(テレビ朝日)や『きのう何食べた?』(テレビ東京/原作よしながふみ)の登場人物は見た目がそんなに悪くない、いい感じのおじさんだと思うんですよ。人格としても魅力がある。そうじゃなくて、なるべくしてしんどくなってしまったロスジェネのおじさんを描いて話を成立させるチャレンジがしたかったんです。

この作品がバズった際、幾度も話題に出たのが40歳であるナオキの外見だった
(C)暴力とも子/一迅社 2021

──見た目の年齢の話は感想でよく出ましたね。ナオキが40歳に見えない、と。

暴力 髪が薄かったりしわがすごく深い40歳は現実にもいますよね。一般的なイメージと比べると老けて見えるというのはわかった上で「こういう疲れた40歳の人いるよね」って思ってもらえればOKだと思っていました。

──「『普通』こんな40歳はいない」って言った時点で、作中でナオキを爪弾きにしている人と同じになってしまう仕組みは、やられた、と感じました。

暴力 受け取ってもらえるかどうかは賭けでしたが、狙ったところに反応があってありがたかったです。

「バ美肉」の衝撃


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