安達祐実「ズルい自分をやめたくて」41年もがいた“子役イメージ”からの脱却

文=於 ありさ 撮影=洞澤佐智子 編集=高橋千里


幸せのかたちが多様化しているように思える現代。その一方、結婚・出産・キャリアなどにおいて、まだまだ肩身の狭い思いをしている女性は少なくない。

安達祐実さんが今回挑んだFODオリジナルドラマ『愛してるって、言いたい』は、そんな女性たちのもどかしさが凝縮されているエモーショナルラブストーリーだ。

安達さん自身、2歳から芸能活動を始め、今年でキャリア41年。「世間からのイメージと、あるがままの自分の姿にギャップを感じていた時期もあった」と話してくれた。

「子役イメージ」のまま進む未来が見えなくなった

──安達さんが演じる主人公・上田樹は、自分が望む生き方と、世間からの見え方や評価に対するギャップがある役だなと感じました。安達さん自身、そのようなジレンマにぶつかったことはありますか?

人から持たれるイメージを変える難しさには、ずっと直面し続けてきました。やはり子供のころから芸能界にいるので、いつまで経っても自分は子供のイメージが強いんだろうな、と悩んでいた時期が長くて。

自分自身は成長しているし、大人に近づいているんだけど、まわりからそのことを受け入れてもらえないというジレンマがあったんですよね。

ずっとモヤモヤは感じていたのですが、10年ぐらい前、30代に差しかかったタイミングで「このイメージのままで進んでいく未来は見えないな」とせっぱ詰まってしまって。

「今までのイメージを守る方向はもうやめよう」と、まわりの方たちと意見のすり合わせを始めたんです。当時の事務所の方々にも「みなさんが思っているような私はもういないから、世間の人にも今の私を知ってもらう方向にシフトしたい」と言って。

そうですね。当時の事務所は子供のときからいたので、なおさら。気づいたら、成長していく自分とのギャップがどんどん大きくなっていました。

実感できるようになったのは、ここ5年ぐらいですかね。「もう(子役から)抜けているよ」という周知をすることに時間を費やしたのと、子供のころの私を知らない世代の人たち、なんのフィルターもなく今の私を見てくれている人たちが増えてきたなと感じるようになりました。

正直、まだまだ人によっては「子役から抜けた」と思っていない方も、もちろんたくさんいると思いますよ。でも、それはしょうがないかなって。

昔は100人いたら100人からいい子だと思われたかったんですけど、それって不可能だし、あんまり健全じゃないなって。今は、自分とは違う捉え方や感覚の人のことも受け入れられる人間になりたいって思っています。

意見が言えなかった「ズルい自分」との決別

そうですね。私自身は樹さんと逆で、なんでも言葉にして伝えてしまうタイプなんですけど、樹さんの気持ちはすごく理解できるなと思いました。恋愛関係や、人間関係の作り方において、自分の気持ちをストレートに相手に伝えることの怖さは共感する人が多そうだなと。

子供のころは、まわりの人の顔色をうかがってしまうタイプだったと思います。仕事を通して、大人の人たちが何をしたら喜んでくれるかなとか、そういうことばかり考えていましたし、衣装を決めるときも「こっちのほうが好きだ」と言えない人間でした。

でも、20代を過ぎたあたりで「なんかそれって、ズルいな」と思い始めたんです。相手と意見が違ったとしても、それをすり合わせる作業から逃げちゃいけないなって。

10代のころは子役の延長で、言われたことをやっていればOKだったんです。でも、20歳前後になったときに、お芝居の部分で「あなたのプランはどうなの?」って意見を求められることが増えてきて。自分の考えで動いたり選択したりしていかなきゃいけないんだなって思い始めました。

41年続けた芝居「辞めたほうがいいな」と思ったことも

年々、自由になっているなとは感じます。以前の事務所にいるときも、ずっと自由にやらせていただいていたんですけど、2021年に独立して、よりシンプルに自由になったなって。

それから、お芝居をする上でも、経験が長いから受け入れていただきやすく、信頼していただいているなと感じることは年々増えていて。ひとつのことをずっと続けてきた経験が、今の私の大きな助けになってくれているなと感じます。

そもそもやりたくて始めた仕事でもないですからね、入った当時の記憶はまったくないので(笑)。その時々でモチベーションになるものは全然違うんですけど、まわりにいた人たちに恵まれたこと、楽しいなと思わせてくれたことは大きいかなと思います。

正直、お芝居すること自体をまったく楽しくないと思っていた時期もありました。そういうときでも仕事場に行ったら、自分の居場所があったので、続けてこられたのかなと思います。

辞めても、ほかにできることがなんにもないから、続けるしかないと思っていたからですかね。

正直、才能がないなとか、私がいることによって誰かが傷つく可能性があるなとか考えるタイミングは何度かあって。そのたびに「辞めたほうがいいんだろうな」とは思ったんですけど、(本気で)「辞めよう」というところまでは至らなかったんです。

はい。でも、ある時点から「別に楽しくなくてもいいか」と思うようになったんです。昔はお芝居が楽しくないと思うことに罪悪感を抱いていたんですけど、楽しいと感じられない時期があっても別にいいやって。結果、ここまで続けてきて、今はめちゃくちゃ楽しいですけどね。

生き方に悩んだときは「誰の人生?」と考える

プライベートの自分と俳優の自分が、同じ電車に乗ってくれないときがあって、今はそういう感じですね。

結婚していたときが不自由だったわけではないんですけど、シングルになって、より自由になった感覚があります。子供たちのことは守りながら、穏やかに生きたいなと。そう思う一方で、俳優としては、もう一回“攻める時期”があってもいいかなと思っています。

最近、演劇がおもしろいなと思っていて。もともと映像出身で、映像作品が大好きで「映像のほうが細かいことをたくさん伝えられるじゃん」と思っていたところもあったんですけど、演劇には演劇のおもしろさがあることに気づいてしまったんですね。なので、演劇に本腰を入れたいです。

それ以外でも、私にはできないことがすごく多いから、もうちょっとがんばれたらいいなって思っています。できないことがあるって、幸せなことだと思っているので。

できない自分を認めてあげる、わからないことを人に聞ける自分でいることって、すごく素敵だと思うんですよ。年齢関係なく自分よりも魅力的だったり優れていたりする人って、たくさんいるわけですから、そのことをきちんと自覚して、逃げない人って魅力的だなって。

やっぱりみんなまじめに、一生懸命がんばっていると思うんです。「本当はこうしたい」とか「本当はそういう人間じゃない」とか、いろんなことを考えながらも。

でも、最近私が悩んだときに自問しているのは、「誰の人生なんだろう?」ということ。 秩序やモラルを保つのも大事ですけど、人のために自分の人生をあきらめてしまったら「私の人生、私以外の誰が責任取ってくれるんだろう?」って思いますよね。

自分勝手になるのも、人を傷つけたりするのも絶対によくないですけど、もっと自分の幸せを優先していいときもある。そう思い続けると、ちょっと楽になるはずです。

連載「&Life」

今気になる芸能人たちの生き方を辿る連載「&Life(and Life)」。インタビューを通して見えた、彼女たちの“これまで”と“これから”。

第1回:重川茉弥
第2回:後藤真希
第3回:若月佑美
第4回:宇垣美里
第5回:工藤遥
第6回:本田仁美
第7回:横澤夏子
第8回:大久保桜子
第9回:milet
第10回:前田敦子
第11回:峯岸みなみ
第12回:辻希美
第13回:中川翔子
第14回:西野未姫
第15回:松本まりか
第16回:鈴木亜美
第17回:安達祐実

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  • FODオリジナルドラマ『愛してるって、言いたい』(全10話)

    毎週金曜日20時に最新話配信(1話無料)
    ※配信日時は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください
    出演:安達祐実、櫻井海音、優希美青、草川拓弥(超特急)、桜井玲香、山谷花純/吉沢悠/小池徹平
    原作:今村リリィ『愛してるって、言いたい』(フェアベル)
    (c)今村リリィ/フェアベル フジテレビ

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於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。

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