“霊長類最強グラドル”染谷有香「消費されない存在でいたい」。グラビアの世界で覚悟を決めた瞬間

2021.11.2
染谷有香

文=於ありさ 編集=高橋千里


“霊長類最強グラドル”や“リアル峰不二子”などの異名を持つグラビアアイドル・染谷有香。

デビューから10年、2022年1月には30歳になる彼女は、2021年9月28日に5年ぶりの写真集『This is the beginning』で再スタートを切り、ネット書店で売り切れが続出。見事重版がかかるほどのヒット作となった。

今まさにターニングポイントにいる染谷に、自身のキャリアを振り返ってもらった。


「これでダメなら諦めよう」のタイミングで芸能界入り

──芸能界を目指したきっかけを教えてください。

染谷有香(以下:染谷) 『笑っていいとも!』(フジテレビ)に選ばれるようなタレントさんになりたくて。小学生のころは時間割とテレビ番組表を見比べてスケジュールを立てていたような子だったんですけど、特に『笑っていいとも!』が大好きで。それでオーディション雑誌を買ってきて、応募して……を繰り返すようになりました。

小学校の卒業アルバムには可能性を込めて“将来の夢はマルチタレント”ってこっそり書いていましたね。

──中学生、高校生になっても夢は変わらず?

染谷 そうですね、オーディションは受けつづけていました。父が豪快な男で「お前ならいける!」って言いつづけてくれて。

だからといって、褒めてくれるポイントは身長が高いこととオーラがあることだけだったんですけど、それがすごく心強かったですね。

染谷有香

──諦めようとは思わなかったんですね。

染谷 私が芸能界入りをするきっかけになった『少年タケシ』(フジテレビのWebマガジン)のイメージガールオーディションというのがあるのですが、このオーディションを最後にしようと思っていました。

──結果として、そのタイミングでオーディションに受かったと。

染谷 そうなんです。ただ、この時点で「グラビアでやっていこう」とは思っていませんでしたね。

想像していなかった「グラビアアイドルとしての自分」

──グラビアでやっていこうと思ったのはなぜだったのでしょう?

染谷 受かって所属した事務所がイメージDVD制作会社の子会社で、ちょうど立ち上げのタイミングだったので、私も働く社員さんたちも何から始めたらいいのかわからないことだらけだったんですね。そんななか、ある日社長室に呼ばれて「グラビアやりませんか?」と言われたんです。

──そのときはどう思ったんでしょう?

染谷 まったく想像していなかったので驚きました! 私の中でのグラビアアイドルって、小池栄子さんやMEGUMIさんなど、いわゆるイエローキャブ軍団のお姉様方がたくましく活躍しているイメージで。私にそのたくましさがあるのかと自問自答の日々が始まりましたね。

でも、お話をいただいたときに、自分の身長やプロポーションを活かす活動は夢への突破口になるかもと思いました。

染谷有香
『This is the beginning』 (C)光文社/週刊FLASH 写真◎ND CHOW

──実際にグラビアのお仕事をしてみていかがでしたか?

染谷 現場の雰囲気は意外に温かくて、カメラマンさんや先輩方のこだわりに触れるのがすごく楽しかったです。もちろんライバルも多い業界ではあるんですけど、こんなにやりがいのある世界なんだって思い知りました。

けれど、活動をすればするほど、厳しい世界だなと感じるようにもなりました。DVDも簡単に出せないですし、グラビアファンの方向けの撮影会のときは列の長さで人気度合いがくっきり見えるし……。

ひとり30秒ずつ撮影してもらうとして、私の列は途切れてしまったのに、人気のある子はまったく列が途切れず忙しくしているという光景を見たのも一度や二度ではなかったです。

──そこから、どう挽回を図ったのでしょう?

染谷 秋葉原の街中で自分のSNSアカウントを掲載したチラシを配ったり、自己紹介する場面では興味を持っていただけそうな一文を添えたり、「染谷有香」という人間を覚えてもらえるように考えていました。

あとはイベントで着用する衣装を告知して、「どういうの着てほしいですか?」って直接聞いてみたり。高身長を覚えていただくためにあえて12cmヒールの靴を履いて、特徴を強調したりしていました。

──想像以上に地道……。実際に目に見えて変化が起こるまで、どれくらいかかりましたか?

染谷 3年……いや、もっとかな。ただ、ファンの方が爆発的に増えたというわけでなく、そういう行動を見て覚えてくれた方が少しずつ増えていったという感覚が近いです。

それから撮影会スタッフの方々とも、何年も毎週顔を合わせる仲になり、相談に乗ってくれたりツイートをリツイートしてくださったり、「染ちゃんの列が途切れないように」と交代で来てくれる“チーム染谷”みたいなファンのコミュニティが広がっていったり。

本当に皆さんに支えていただいて、やっと「DVDをリリースしませんか」とお声がけいただけました。

染谷有香
『This is the beginning』 (C)光文社/週刊FLASH 写真◎ND CHOW

──そのDVDを皮切りに“霊長類最強グラビア”などの異名がつくようになったんでしょうか?

染谷 それが、1枚目のDVDはまったく売れなかったんですよね。

──え! そうなんですか?

染谷 「グラビアをやらないか」と提案してくれた社長の部屋に呼ばれて「言いにくいのだけど、これだけしか売れませんでした」って教えられたときは、「えー! これで終わっちゃうじゃない」って思いましたね。

それからしばらくDVDのお話ももらえなくて……。なので、そのあと2枚目を出すことになったときには覚悟を決めたんです。

──どういう覚悟でしょう?

染谷 2枚目のDVDで提案された衣装の露出度がいきなり上がったんですよ。1枚目のDVDはビキニも既製品の面積で、下はショートパンツと王道のイメージDVDでした。それに比べて2枚目は、あまりに衣装の面積が小さくてどう着るのかわからないくらいで、当時は「騙されているんじゃ……」なんて思ったけれど(笑)。

今思えば、制作チームが私のプロポーションを最大限に活かそうと作ってくれた衣装で、カメラマンさんやプロデューサーさんのこだわりにも共感し、「飛び込んでみよう!」と決心しました。

──やってみてどうでしたか?

染谷 照れましたね。でも、楽しかったんです! スタッフの方々のグラビア作品に対する熱に触れて、グラビアにより興味を持つきっかけになった作品となりました。

──ファンの方の反応はどうでしたか?

染谷 さまざまでしたね。ただ、いきなり売り上げランキングで1位になったり、自分でもびっくりするくらい反応がありました。

そこからDVDをコンスタントに出させていただけたり、撮影会の列も長くなったり。紙面の取り下ろしグラビアに呼んでいただけるようにもなり、雑誌編集の方がなんとか私を広めようと“霊長類最強グラドル”や“リアル峰不二子”とコピーをつけてくださったのも、このころだったと思います。

染谷有香
『染谷有香 2022年カレンダー』

5年ぶりの写真集。消費されない存在でいたい

──今回発売した写真集『This is the beginning』は5年ぶりの作品となりましたね。

染谷 カメラマンさんはいつかご一緒したいと思っていた方で、素敵なものになると思っていたので、やるかやらないかの判断は迷いませんでした。ヘアヌードが特異なものとも思っていなかったですしね。

ただ、身が引き締まる感覚は、2枚目のDVDを出したときと似ているなと思いました。今回の作品を、自分の中でもお守り代わりにして、これを超えるものを出しつづけられるように心身共に磨きつづけていきたいなと思っています。

染谷有香
『This is the beginning』 (C)光文社/週刊FLASH 写真◎ND CHOW

──再スタートとなる作品を出して、1月には30歳を迎えられるとのことで、今がターニングポイントなのかなとも思いました。これからの目標を教えてください。

染谷 『笑っていいとも!』への出演は叶いませんでしたが、タモリさんと共演させていただけたら幸せだなぁと思います! それからグラビア活動はもちろん、表現力をさらに磨いて、映画や映像作品で体格を活かしたボンドガールの役などもやってみたいです。

あとは、消費されない存在でいられるよう、自分自身を磨いていくことも目標です。

──消費されないために意識されていることはありますか?

染谷 自分にできること・できないことをちゃんと持っておくことで、自分の強みが磨かれるのかなと今は思っています。

ただチャレンジはどんどんしていきたいので、新たな提案をいただいたら受け入れて、表現の幅を広げられるように日々挑戦していきたいと思っていますね。

デビューから10年。昔の自分に伝えたいこと

──デビュー当時は想像していなかったグラビアのお仕事を10年もつづけてこられたのは、なぜだと思いますか?

染谷 ファンの方の存在はとても大きいですね。今はSNSがあるので「(写真集)買ったよ」とか「応援してます」って報告を国内外いろんな方からいただけて、そういうコメントを見るたびにもっと喜んでもらえるようにがんばりたいなと思います。

私が落ち込んでいるのを察知して「自分のペースでいいんだよ」とファンの方から逆に励まされてしまうこともあって。うれしかったコメントはスクリーンショットをして保存しているんです。

染谷有香
『This is the beginning』 (C)光文社/週刊FLASH 写真◎ND CHOW

──すごい! コメントをくれた方のことは覚えていたりするんでしょうか?

染谷 もちろん! 撮影会での会話も、昨日のことのように覚えています。

考えてみれば、デビュー当時から応援してくださっている方とは出会って10年ぐらい経っているんですけど、そういう方がリプライで「結婚したよ」とか「子供が生まれるよ」って報告してくれるたびにうれしくなります。私が「写真集出します!」って告知しているときに、不思議だなって。

──確かに(笑)。

染谷 普通は10年も経てば、いろんなことが変わっていくじゃないですか。それでも私と関わりつづけてくれたり、いろんなかたちで思い出してくれたりすることが、すごくうれしいんです。「新しいジャンルのお仕事に挑戦します!」と告知すると、懐かしいアカウントから突然リプライをいただけたりする。見てくれているんだなぁ、と本当にありがたく感じています。

──最後に、10年前の染谷さんに何かメッセージを伝えるとしたら、なんて伝えますか?

染谷 「今、すごく楽しいよ」って伝えたいですね。

「すごく充実しているし、人に恵まれているので、自分を信じて選択していったら今の環境に辿り着くと思う。きっとこのまま信じていたらタモリさんにも会えると思うよ。まだ会えていないけどね(笑)」って伝えたいです。

染谷有香
『染谷有香 2022年カレンダー』

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於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。

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