「最初は仕事と思ってなかった(笑)」新しい学校のリーダーズ・KANONにプロ意識が芽生えたきっかけ

2024.4.18

新しい学校のリーダーズ。「オトナブルー」で社会現象を巻き起こしたセーラー服の4人組は、今まさにブレイクの渦中にいる。地道に根を張り水をやってきた8年間と、外の広い世界へ飛び出した1年間。彼女たちは激動の日々の中で、肉体的にも精神的にも大きな変化を強いられてきた。

本稿では、2024年4月12日(金)発売の『クイック・ジャパン』vol.171に掲載した80ページ以上にわたる新しい学校のリーダーズ総力特集から、KANONのロングインタビューを一部抜粋して公開。

どんなに過酷なスケジュールでも他のメンバーへの気遣いを忘れず、グループへの愛を感じさせる KANON。 グループ結成当時は「私たち4人が楽しければいい」という感覚だったものの、数々のライブや海外での経験を通じて、外に発信する意識が強く芽生えたという。昨年は「オトナブルー」のブレイクによって、グループの関係性や仕事に対する意識にも葛藤があった。4人が積み重ねてきた9年間の変化と成長を語る。

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趣味を楽しんでいるような感じだった

新しい学校のリーダーズ・KANON(撮影=ヤスダ彩)

──活動開始当初の新しい学校のリーダーズ(以下、AG!)は、どのような雰囲気でしたか。

KANON 時代に呼ばれた4人が集まって、小指をつなぎ合わせたときから仲よしでした。最初のころは私を含め3人が中学2年生で、MIZYUが高校2年生だったので、学生キャピキャピみたいな感じ。お休みの日があったら、4人で遊びに行くくらい仲がよくて。みんなで横浜へ行って、中華街へ行ったり、コスモワールドでジェットコースターに乗ったりしたこともありました。

──最初から4人のグルーヴが噛み合っていたというか。

KANON そもそもグルーヴが合うとか目指す方向が一緒とか考えたことがなかったかも。いい意味で芸能界を意識せず、「ただ楽しくてやってます、私たち」みたいな感じだったので。時が経つに連れて、だんだん4人としてのグルーヴが生まれて、目指す方向もちゃんと定めるようになって、足並みとか歯車のスピードとかがそろっていった というか。最初は部活やクラブのような感覚だった活動が、だんだん大きなものになり、ちゃんとお仕事として理解するようになっていったんです。今になって振り返ると、最初はお仕事と思ってなかったかも(笑)。趣味を楽しんでいるような感じだったんじゃないかな。

──「仕事なんだ」と意識するようになったのは、いつごろからですか。

KANON 学校を卒業して、海外へ行ったり関わる人の数が増えたりして、だんだんと「自分の好きなことを仕事にできているな」と思い始めました。今は4人の青春をいろんな人たちに大きくしてもらえて、お仕事として成り立っているような感覚です。4人が楽しみながらお仕事をしているのは、今も昔も変わらないけど、以前は今よりも自分たちのことを理解できていなかったような気がします。 「AG!とは、こういうものだ」っていう根本は変わっていないけど、“個性や自由ではみ出していく”とか“青春”っていう言葉の深い意味まで、自分たちが理解していませんでしたね。

──どこかで自分たちのことを理解するようになったタイミングがあったんですか。

KANON メジャーデビューしてからインタビューをしてもらう機会が増えて、普段から自分たちが言っている“個性や自由ではみ出していく” や“青春”の意味を聞かれるようになったんです。「自分はどうやって、はみ出してるの?」とか「どういう個性を持ってるの?」とか。あのときはコン セプトを落とし込みキャラクターを作り込んでいたから、素の私たちを見せていなかったし、自分たちの想いを伝えることもなかった。MCの言葉や動きもすべて決めていたくらいなので、新しい学校のリーダーズとしての自分たちと本当の自分たちがイコールでつながれてなかったんです。だから、質問されても、自分でわからないというか。作り込んだ世界観の中で「こうかな」って言葉を探しているような感覚で。今だったら自分たちのことを理解しているから、自分の中から言葉が出てくるんですけど、あのときは「なんか変わったことを言おう」みたいに考えていましたね。 

──そこが、 意識が変わるきっかけになったと。

KANON  4人が4人とも、質問されて困ってたんですよ(笑)。「また聞かれたね」みたいな話から始まり、「そりゃ聞かれるよね」ってなって、「自分たちを理解していないままだとよくないんじゃない?」って4人で気づいて。そこから、自分たちとちゃんと向き合おうと決めて、「自分たちはどういう存在なんだろう」とか「何を伝えたいんだろう」とか4人ですごく話し合うようになりました。

──グループのコンセプトに関する質問をされることで、自分たちのことを考え、理解するようになっていったと。

KANON そうですね。でも、インタビューに答えるだけではなく、振り付けを作るとかライブに出るとか、いろんな面で自分たちと向き合って、ちょっとずつ答えを出していった感じで。なんなら「私はこうなんだな」って見つけられたのも、わりと最近です。自分の内面や発信する自分、4人としての見え方をずっと研究し続けてきました。常に悩んでいるわけじゃないですけど、1、2年前くらいまでは、いつも大きな何かと葛藤していたような感じがします。

どんなに仕事が広がっても自分たちの軸を見失わないために

「COUNTDOWN JAPAN 2023」楽屋でのKANON(右)とRIN(左)(撮影=木村心保)

──ブレイクを経て外的な変化はたくさんあったかと思うのですが、 内面にも大きな変化はありましたか。

KANON 根本は変わってないです。ただ「自分たちって何がしたいんだっけ」とか「私たちって何をしてるときが一番楽しいんだっけ」と葛藤することは多かったですね。ひと括りに芸能や音楽活動といっても、いろんな種類の仕事があるじゃないですか。テレビだけでも、音楽番組もあれば、バラエティもあって。いろんなことをしすぎると、自分たちが何をしたいのかもわからなくなってくるし、「自分たちってなんだっけ」ともなってくる。だからこそ、4人での会話をやめないようにして、なんとか去年を乗り越えてきました。何をしているときの自分が気持ちよくて、何に対して「これは嫌だ」と感じるのか、常に4人で共有して。今では自分たち+大人の人たちも含めて、みんなで「こうやっていくぞ」という方向性を新たに定めて、道を切り開いていけてます。

──そのときの葛藤を通して、どのようなことが見えましたか。

KANON やっぱり私たちはライブがしたいし、アーティスト活動を一番にがんばりたいということ。 昨年の夏、フェスにいっぱい出て 「オトナブルー」で広がった世界を目の当たりにしたとき、自分たちが思っていた以上にいろんな人たちが集まって、喜んでくれていることが目に見えてわかって。 やっぱり生のライブで味わえる気持ちが、4人ともすごく好きなんです。 昨年は北米ツアーもしたし、絆の深まった4人で日本武道館に立って、素晴らしい景色を見ることができて、本当に心から「これが好き!」と思いました。

──では最後に、現段階の理想的な新しい学校のリーダーズ像を教えていただけますか。

KANON 昨年は知ってもらう機会がすごく多かったけど、まだ「オトナブルー」しか知らない人もたくさんいると思います。そういう人たちに 「そんなもんじゃないんだぞ」って伝えたい。 今年はアーティストの新しい学校のリーダーズ、 ATARASHII GAKKO! として発信できる機会がすごく多いので、その中でどれだけ自分たちを鍛えて、自分たちがおもしろいと思うものを発信していけるかだと思っています。海外にもいっぱい行くし、新しくできるアルバムもヤバいし、日本でももっとたくさんライブをし たいし。すべてを楽しみながら、4人で仲よく幸せに今年の1年をまた突っ走れればいいですね。

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2024年4月12日(金)より発売中の『クイック・ジャパン』vol.171は、新しい学校のリーダーズを80ページのボリュームで徹底特集。

特集テーマは「境界を越えるとき」

2023年の大ブレイクを経て大きな変化の渦中にあり、今まさに時代を変えようとしている4人が「人生の次の一歩」を踏み出す姿を記録した。そのために、『Clockenflap』(香港)、『COUNTDOWN JAPAN』、日本武道館公演『青春襲来』、新曲のMV撮影やレコーディングなど、100日間に及ぶ密着取材を敢行。およそ3000枚に及ぶ写真の中から厳選して掲載し、現場での様子を克明にレポートしている。

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ライター_坂井彩花

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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