「悔しい、と思える自分がうれしかった」新しい学校のリーダーズ・RINが味わった悔しさと次なる野望

2024.4.17

文=真貝 聡 撮影=ヤスダ彩髙木美佑


新しい学校のリーダーズ。「オトナブルー」で社会現象を巻き起こしたセーラー服の4人組は、今まさにブレイクの渦中にいる。地道に根を張り水をやってきた8年間と、外の広い世界へ飛び出した1年間。彼女たちは激動の日々の中で、肉体的にも精神的にも大きな変化を強いられてきた。

本稿では、2024年4月12日(金)発売の『クイック・ジャパン』vol.171に掲載した80ページ以上にわたる新しい学校のリーダーズ総力特集から、RINのロングインタビューを一部抜粋して公開。

卓越したダンススキルを武器に新しい学校のリーダーズ(以下、AG!)のパフォーマンスを支えているRINは、誰よりも冷静にグループを俯瞰して見ているメンバーでもある。そんな彼女が長年、葛藤していたのが自己肯定感の低さだ。実は、小さいころから人一倍引っ込み思案でシャイだったRIN。彼女はいかにして、今の自分を形成していったのか? グループでの活動を通じて彼女に生まれた変化と自信とは? その道程を探る。

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消極的でシャイな自分も受け入れられた

新しい学校のリーダーズ・RIN(撮影=ヤスダ彩)

──今回、みなさんを密着していた担当編集者に話を聞くと、RINさんは誰よりも周囲のスタッフがどんな動きをしているのか気にされていて。自ら話しかけに行ったり作業の様子を見ていたり、グループの内側にすごく興味を示していた、と聞きました。

RIN 何か気になることがあったら、すぐに聞きに行くタイプなんです。あとは、まわりの方々がすごく尊敬する大人だからこそ、勉強になるし「自分も誰かに何かしてあげられる人間になりたい」と学びになっていますね。

──AG!の中で、RINさんの役割とかポジションってどう捉えていますか?

RIN 中和することが多いかもしれないです。 それぞれが自分の意見を持っているので、メンバー間で意見が食い違ったときに「どっちも間違ってないよね」とか「みんなで再確認しよう」と促します。それ以外の役割でいうと、私は先頭を切ってリードするタイプではないと思っていて。仕切るよりかは「そこは私がやっとくから、ここはよろしくね」と全体のバランスを見て譲っている気がします。メンバーそれぞれが、その時々の適材適所にいます。

──その視点はどこで培ったんですかね。 

RIN 新しい学校のリーダーズとして、9年過ごした中で培ったのが一番大きいと思うんですけど、さらに遡ると私は小さいころからダンスをやっていて。“自分が自分が”という気の強い子がたくさんいる世界にいたんです。そこは常にセンターの奪い合いだし、誰が先生に気に入られるかの戦い。そういうアグレッシブな子がキッズダンサーにはたくさんいて。私はグイグイ行くのがそんなに得意じゃなかったんですよね。むしろ人見知りで、人一倍シャイ。でもリーダーズになってからは、“興味があったら自分から行く”精神のメンバーを見て「その姿勢って大事だな」と気づかされた。自分が気になることや、人に対して思うことも、全力で言葉にしないと伝わらない。自分の気持ちを言葉にするのは、このグループになってからより好きになった気がします。ひとりで派手にいるのが好きだったか?と聞かれたら、100パーセントそうでもなかったように感じますね。その名残があるのかもしれない。

──Brand New StylersとかSmooth Doggころは、2、3歩引いてるタイプだったと。 

RIN なんでキッズダンサー時代のグループを知ってるんですか!? でも、そうですね! グループ活動がそもそもあまり得意じゃなかったんですよ。当時はグループの中にも、生まれながらにパッションを持っている子がとても多くて。自分もこういうふうになりたいけど、なれないなぁと思っていました。

──はみ出したいけど、はみ出せずにいた。

RIN そう。誰よりも先生にグイグイ行くとか、レッスンのときも一番前で指導を受ける野心も含めて、まわりの子に憧れてはいたんです。だけど、恥ずかしさと消極的な気持ちが勝っちゃって、行動できなかった。そういう時代があっての今だなって思えるぐらいに、肯定できるようになりましたね。

「レコード大賞を獲りたかった」と思えた自分がうれしい

香港で開催されたClockenflapでのRIN(撮影=髙木美佑)

──歯がゆかった時期ってあるんですか?

RIN 歯がゆかった時期は……あったかな? 頻繁に髪型を変えたくなっちゃうとか(笑)。

──RINさんはしょっちゅう、髪型を変えていましたよね。

RIN はみ出していくと言いながらも、「今の自分の個性はこれじゃないかも……」と模索している様が、髪型に反映されていた気がします。今の髪型に行き着いてからは、すごいしっくりきていてこの姿でたくさんの方に知ってもらったのもあって、自分に自信が持てた。メンバーによっては、ずっと自信がある子もいるかもしれない。私は自己分析していくと、自分の中で自信があっても、それと同じぐらい不安に襲われていたんです。それをまわりの人が「いいね」「最高だね」と言ってくれるとか、メンバー同士で「私たちって最高だよね」と確認し合えることで、自信を持てて自己肯定感も上がった気がする。初めてソロのダンスコンテストで優勝したときもそうですけど、「いいね」と言ってもらえることって本当にうれしいし、「自分ってここがいいんだ」と再認識できる は大事だなと思って。まわりにいる人がポジティブな人であればあるほど、私自身も向上していきましたね。

──キッズダンサー時代から、“自信”という名の溝を埋めていく作業をしていましたもんね。

RIN そうですね。戦うことにこだわっているわけでもなかったし、むしろ苦手なんです。でも、去年の「日本レコード大賞』はいったら賞レースなわけじゃないですか? 受賞が発表される前、椅子に座りながら「もしかしたらいけるんじゃないか」って気持ちがあったんです。もちろん、大賞を受賞されたミセス(Mrs. GREEN APPLE)さんは本当に素晴らしいし、初めて目の前でパフォーマンスを観て「あぁ、素敵だな」と思った。だけど、大賞を獲りたかったと思えた自分がいたのは、昔と比べて成長したのもあるし、より自分たちに自信があったからこその気持ちだなって気づいて。家に帰ったあと、そう思えた自分にうれしくなりました。それがあったから、次の日の『紅白歌合戦』もモチベーションもより高くなったし、アーティスト活動というものに対して、新たに向き合っていく、その第一歩を作り出せた2023年だったなと思います。

──今後のグループの歩み方について、どう考えています?

RIN 去年はありがたいことに、「オトナブルー」をきっかけにたくさんの方に知っていただけた。まだ、この曲しか知らない人もたくさんいると思うので、私たちがどんな4人で、ほかにどんなことをしていて、「オトナブルー」以外にどんなおもしろい曲があるのかを知ってもらいたい。今年も世界に挑戦していくので、日本人アーティストとして、さらに大きな一歩を踏み出す年になると思います。自分たちらしさや、日本のカルチャーをたくさんの皆様に素晴らしいと思っていただけるようなパフォーマンスを続けていくことで、今後の爆発力につなげていきたい。いつかはライブで見せている、グループ本来の姿が当たり前になり、みんなが思うリーダーズ像になっていけばいいなと思っていて。ライブが私たちの表現したいことが詰まっている場所だから、このアグレッシブさ青春感が「これこそ新しい学校のリーダーズだ」と思っていただけるように、国内外でたくさんライブをしたいです。

新しい学校のリーダーズに100日間密着!

『クイック・ジャパン』vol.171

2024年4月12日(金)より発売中の『クイック・ジャパン』vol.171は、新しい学校のリーダーズを80ページのボリュームで徹底特集。

特集テーマは「境界を越えるとき」

2023年の大ブレイクを経て大きな変化の渦中にあり、今まさに時代を変えようとしている4人が「人生の次の一歩」を踏み出す姿を記録した。そのために、『Clockenflap』(香港)、『COUNTDOWN JAPAN』、日本武道館公演『青春襲来』、新曲のMV撮影やレコーディングなど、100日間に及ぶ密着取材を敢行。およそ3000枚に及ぶ写真の中から厳選して掲載し、現場での様子を克明にレポートしている。

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真貝 聡

(しんかい・さとし)ライター、インタビュアー。記事を執筆するほか、MOROHA『其ノ灯、暮ラシ』(2017年)/BiSH『SHAPE OF LOVE』(2018年)/Mrs. GREEN APPLE『~Review of エデンの園~』(2020年)/PEDRO『SKYFISH GIRL -THE ..

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