オリラジの吉本退社、小林賢太郎の引退から考える「テレビ芸能界」の終焉。“テレビからネットの時代”の行く末とは?

2021.1.10

文=TVOD 編集=森田真規


2020年1月、20年代の始まりに『ポスト・サブカル焼け跡派』という書籍を上梓した1984年生まれのふたり組のテキストユニット、TVOD。同ユニットのパンス氏とコメカ氏のふたりが、前月に話題になった出来事を振り返る時事対談連載の第2回をお届けします。

今回はラーメンズ小林賢太郎の表舞台引退とオリエンタルラジオの吉本興業退社の話題からスタートして、「テレビ芸能界」からYouTubeやオンラインサロンへと活動の場を移しつつあるお笑い芸人たちの動き、さらにその先の展開について考えていきます。


ラーメンズ小林賢太郎の表舞台引退とオリラジの吉本興業退社

パンス 明けましておめでとうございます。昨年は世界もTVODも怒涛でしたが、新年最初の対談となりますね。12月の話が中心になるかと思いましたが、どうでした?

コメカ 12月も相変わらずCovid-19感染拡大が止まらなくて、これはホントにどうしたものか……と思いながら過ごしていました。とりあえず先月の文化に関するニュースで個人的にウワッと思ったのは、ラーメンズ小林賢太郎の表舞台仕事からの引退と、オリエンタルラジオの吉本興業退社。

パンス そうなんだ。僕はどちらもあまりなじみがないもんで、ウワッとなるというのは気になるな。

コメカ このふたつの出来事にもちろん関連性はないんだけど、ただ小林もオリラジも「テレビ芸能界」という環境、それも80年代以降に構築されたバラエティの世界に対する距離を模索した結果としてここに辿り着いたことが、けっこう感慨深かったんだよね。
小林はお笑い芸人でありながら「テレビ芸能界」にはコミットしないことをゼロ年代の時点で選択していて、その際の活動環境としてテレビではなく舞台を選択していたわけだね。そして今回、身体的な事情もあり表舞台での活動は終えることになった。
で、オリラジは(中田敦彦が)「テレビ芸能界」から離脱し、YouTubeやオンラインサロン、つまりネットを活動環境として選択した。戦後日本の情報環境においてテレビというのは絶対的な力を持つメディアだったわけだけど、そのメインプレイヤーたるお笑い芸人たちのなかに、テレビ環境を相対化する動きがいよいよ目立ってきたことのひとつの実例。まあただ、中田の動き方や志向を僕は肯定はしないけどね。

パンス なるほどねー。小林賢太郎は僕が小さいころのラーメンズの記憶こそあったものの、劇作家として大物になっていたというイメージだったなあ。パラリンピックの演出から離れることが明らかになったのも12月でしたね。テレビの有名人がYouTubeに場を移すというのは最近加速しているけど、まあ当人としての動機はそれぞれあれど、テレビという環境でできることが減っているとか、そういうことなのかな?

コメカ 単純に、80年代以降に構築されたテレビ・バラエティの世界というのはヒエラルキー構造が固定化されちゃったじゃないですか。プレ段階として萩本欽一がお笑い芸人の地位を高め、そしてビートたけしがお笑い芸人がその他タレントを見下ろすような構図を作る「革命」を起こしたあと、その王国の中でずっと環境維持がつづいているわけよね。
お笑い芸人=プレイヤーでありながらそういう「テレビ芸能界」から距離を置こうとした場合、これまでは舞台ぐらいしか選択肢がなかったんだけど、ネット環境がインフラ化して新しい手段ができ上がったと。石野卓球がかつて「日本はテレビ教だ」と言っていたけれど、この宗教の盤石さに陰りが見えてきたということだね(笑)。
まあテレビでの活動をつづけながらYouTubeなどのネット活動をやり始める芸人も多いけど、かつてはそれこそ80年代フジテレビがそうだったように、「表層的で使い捨ての、スピードの速いメディア」だったテレビというものが、どんどんネット世界の速度に敗北していっている様は感慨深いものがある。

パンス 自分たちが子供のころのテレビが「速過ぎた」という感じがするねー。どうしてもそこと比べて考えてしまうというのもある。宗教性に陰りが見えてきたといえば、今は『M-1』にしろ紅白にしろツイッターとかでみんな実況するよね。そっち側におもしろさが発生して、テレビもそっちを意識した作りになったりして。もう一方的に「放送」するものではなくなって久しい。むしろネットのほうが使いようによっては「一方的に」情報を送るメディアになってきているのかもしれない。昨今のオンラインサロンの動向なんかを見ているとね。

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コメカ(早春書店)とパンスによるテキストユニット。サブカルチャーや社会についての批評活動を、さまざまなメディアで展開中。2020年1月に発売したTVODとしての単著『ポスト・サブカル 焼け跡派』(百万年書房)では、70年代以降のさまざまなミュージシャンやアーティストを、「キャラクター」としての角度か..

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