“指定日時に荷物が届かない!”のクレームが年末年始に急増するワケ「宅配員は何も対処できません…」(アンバランス黒川)

2023.12.21

ネットショッピングの普及などに伴い、特にコロナ禍以降は、宅配便の取り扱い個数が急増している。普段人々が何気なく利用している宅配サービス、しかしその荷物一つひとつは人の足と手によって届けられている。

2022年に結成30年を迎えたお笑いコンビ・アンバランスの黒川忠文は、最近まで芸能活動の傍ら宅配業に15年従事したベテラン配達員だった。本コラムでは“宅配のプロ”だった彼が、長年の経験をもとに積み重ねてきた配達テクニックや、その過程で経験した数々のエピソード、宅配業の裏側を明かす。

あなたの荷物はどんな経緯を辿り、どんな思いを背景にして届けられているのか。

ブラックフライデーで、年末の宅配業界はますます多忙に

師走。師(僧)が仏事で忙しく走り回る12月。配達員は一年中忙しくて走りまくってます(笑)。

いよいよやってきました繁忙期。ブラックフライデーが終わったのも束の間……お歳暮、クリスマス、正月と、一気に荷物が増量する時期です。かなりのお値打ちで商品を売り出すブラックフライデーは、普段なら購入しない物でも「この値段なら買ってみようか」と思わせる魔法的なセールじゃないですか? 

前から欲しかった物ならいいんですが、たとえばたまたまネットで見かけたスムージーミキサーが驚きの価格だったので購入、いざスムージーを作ろうと食材を買いに行くが……意外と金額かかる。朝作ろうと、いつもより早起きする。うーん、けっこう面倒くさい。 やっぱり飲みたいときにコンビニで買えばいいか、となる。

という私の実例ですが(笑)、年々ブラックフライデーを開催する会社が多くなっているので、当然ながら配達荷物も増えています。お歳暮、個人間で贈るものは昔よりは減ったと思いますが、会社関係でのお歳暮は相変わらずです。会社間の贈り物は定番商品が多いようで、菓子や、コーヒー・ビールなどの飲料系と、そこまでの重量物はないかなと思います。

荷物量とともに増えるクレーム

宅配受け取り

個人間での贈り物の内容は、ここ数年で産地直送品が多くなりました。地場の特産物(フルーツや海産物など)を現地から送るので、SDGsにもつながっている……など、世間の意識にも変化があるのではと感じております。

また、クリスマス関連のお届け物は、日付指定されているのがほとんどです。お子さん、お孫さんへのプレゼントでしょうかね? ケーキなどのクール便もあります。12月24日着指定の注文が多いので、配達する側としては大変です。この量を配達回りきれるのか不安になるくらい(笑)。

この日ばかりは、たとえ受取人が不在だったとしても、ほとんど当日に再配達の連絡が入ってくるので、夜遅くまで配達してました。できれば日にちの余裕を持って、23日までの日付指定で受け取ってもらい、ご自身の手元で保管してもらえると大変助かります(生鮮食品などは別ですが)。

というのも、この時期だからこそ荷物の遅延が増えるからです。年末になり、物量が増加することも理由のひとつですが、冬本番に入って大雪などが降ったり、道路の渋滞などが原因で荷物が停滞してしまう恐れがあるからです。降雪により、車が立ち往生したせいで物流がストップした……などのニュースを、年に一度は目にすることがあると思います。こればかりは、宅配員は何も対処できません。

注文された方、送り主の方から「日付指定しているのに、なぜ守らない!」といったクレームをよくいただいたものですが、日付指定は料金をもらってやっているわけではなく、あくまで「無料のサービス」です。各社が注意として「天災・事故などによる交通渋滞、悪天候が原因でお届けが遅れる場合がございます」と案内しているので、皆様のご理解をお願いいたします。

正月も繁忙期!

そのあとは、お正月に向けての配達です。年末から、お正月に家で楽しむ食材、お酒などの配達が増えてくる上、最近では「ふるさと納税の返礼品」の海産物が集中してきます。クール便のお話は前に少し書きましたが、夏ではなくこの時期がクール便の超繁忙期です!

12月30日・大晦日ともなると、クール便のおせち料理の荷物量がとんでもないことになります。当然これらは、受取人ご自身が正月三が日で食べる用として注文しているものなので、しっかり日時配達指定をされてるし、不在であれば当日・翌日に再配達が入ってくる。

意外と、元旦着の指定や再配達も多いです。年末と比べると荷物は減る年始ですが、配達員も休みを取らないといけないので、限られた人員で配達するのがけっこう大変なんです。年末、三が日と出勤したことがありますが、1月2日になってようやくひと段落って感じです。

そんな忙しい時期、軽自動車で配達してると、荷台うしろの跳ね上げ式のドアを閉め忘れて次の配達先まで走ってしまうことが何度かありました。幸い事故には至らず、落とした荷物などもなかったのでよかったですが、気づいたときは心臓バクバクもんでした。先日、バックドア全開で今から走り出そうとしている車を見て、そんなことを思い出しました(ちゃんと声をかけて、閉めてあげました)。もしもそんな車を目撃した際には、教えてあげてくださいませ。それでは皆様、よい年末をお迎えください!

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黒川忠文(アンバランス)

(くろかわ・ただふみ)1972年生まれ。太田プロダクション所属のお笑い芸人。山本栄治とのコンビ「アンバランス」のメンバー。『ライオンのごきげんよう』(フジテレビ)の前説を18年半務めたことでも知られる。

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