「冷たい荷物は午前指定にしないと…」夏の宅配便、受け取りのコツと苦労とは?(アンバランス黒川)

2023.9.19

ネットショッピングの普及などに伴い、特にコロナ禍以降は、宅配便の取り扱い個数が急増している。普段人々が何気なく利用している宅配サービス、しかしその荷物一つひとつは人の足と手によって届けられている。

2022年に結成30年を迎えたお笑いコンビ・アンバランスの黒川忠文は、最近まで芸能活動の傍ら宅配業に15年従事したベテラン配達員だった。本コラムでは“宅配のプロ”だった彼が、長年の経験をもとに積み重ねてきた配達テクニックや、その過程で経験した数々のエピソード、宅配業の裏側を明かす。

あなたの荷物はどんな経緯を辿り、どんな思いを背景にして届けられているのか。

宅配業者の大敵・夏の暑さ

ようやく朝晩が涼しく感じられるようになってきましたね。それでもまだ日中の気温は30度前後で、なかなかの暑さです。

宅配業者にとって特に夏場は、体調管理に気をつけなければならない時期です。私が配達をしていたころは、多くて1日6リットルの水を飲んでたほど、水分補給をこまめに行っていました。各自熱中症には気をつけているにもかかわらず、それでも年に1、2人は病院に搬送されるドライバーがおり、応援に行ったこともしばしば。水分や塩分以外に、睡眠や栄養不足にも細心の注意をしていました。

黒川「とある日の配達中に摂取した水分です」

夏場の配達ならではの苦労とは

体調管理も大事ですが、夏場さらに気をつけないといけないのが、冷蔵や冷凍荷物の温度管理です。朝は、荷物の積み込み前からエンジンをかけ、配達車の冷蔵庫をしっかり予冷しておかないといけません。またその日の最高気温を考慮しながら、蓄冷剤(保冷剤)をいくつ積んでいくか判断する必要もあります。

宅配受け取り
※この画像はイメージです

冷蔵、冷凍荷物の温度管理で最も重宝するのは、ドライアイス。しかし、自分が勤めていたところではドライアイスの数に限りがあったため、朝からドライバー同士による争奪戦が繰り広げられていました(笑)。早朝に取りに行けば板状の大きなドライアイスが確保できますが、少し遅れを取ってしまうと、割れていたり粉々になったものしか残っておらず、「これで最後まで持つかな……」と、ちょっと不安になるのです。

冷蔵・冷凍の荷物を受け取るときのコツ

車を動かしながらの配達であれば、冷蔵庫も稼働しているため冷気が送り込まれる一方、駐車しながらの配達だと冷蔵庫も停止状態。こんな場面で蓄冷剤、ドライアイスがしっかりと保冷してくれ、役立ちます。それでも荷物の取り出しで扉の開け閉めが多いと、冷蔵庫内の気温が上がってしまうので、できるだけ短時間で荷物を取り出して閉めるのが基本です。

宅配業者の目線から本音を言えば、駐車中でも数時間ごとにエンジンをかけて冷蔵庫も稼働させたいのですが、今ではアイドリングストップが当たり前の世の中ですから、そうもいきません。

帰社するまでしっかり荷物の温度管理はしているものの、最高の保冷状態は間違いなく出発時。そのため、皆さんが冷蔵や冷凍の荷物を受け取る際は、午前中を指定していただくのがベストかと思います。私も、時間指定が特にない場合は、基本的に午前中配達に伺うようにしていました。

黒川「配達時の運動量はかなりのもの。時には、万歩計の記録が1日3万を超えることも」

配達時はショルダーバックに蓄冷剤と、冷蔵や冷凍の荷物を入れて行くのですが、蓄冷剤は意外と重いので、数枚だけでしっかりと汗をかくほど持ち運びが大変です。

最後に余談ですが、時間指定の配達が間に合うかギリギリのとき、私はあえて顔面を拭くことなく汗だらけにすることで、“がんばっている感”を演出していました。荷物を渡したあともダッシュで車に戻って、忙しいアピールをしていましたね……。(汗で荷物が濡れることはない程度に、ですが。笑)

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黒川忠文(アンバランス)

(くろかわ・ただふみ)1972年生まれ。太田プロダクション所属のお笑い芸人。山本栄治とのコンビ「アンバランス」のメンバー。『ライオンのごきげんよう』(フジテレビ)の前説を18年半務めたことでも知られる。

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