日本の味噌や醤油の魅力に取り憑かれたカルロさん
座ったとたん、挨拶もそこそこに、「麹菌とは」「発酵とは」と機関銃のように話し始めたマエストロ・カルロ。さっきまでのニコニコおじさんは影を潜め、発酵の鬼現る。
「発酵とは太古の時代からある食品保存のテクニックで、人類と同じぐらい古いものなんだ。最近、やたら発酵ブームでいろいろと自家製する人も増えているみたいだね。でも昔は食料が手に入らない季節に備えて、野菜や肉や魚を、発酵させることで栄養価を高くして保存するための、重要だけど当たり前の技術だった。身近なところをよく考えれば、現在でも発酵はあちこちに溢れているよ」。
パン、チーズ、サラミ、酢、野菜の漬物などなど、言われてみればたしかに、世界の食卓は発酵食品に溢れている。じゃあなぜ、今さら発酵を研究して、自作なさっているんですか、マエストロ?
「現代ではちゃんと作られた発酵食品はほとんど消えてしまって、その代わりに工業化されスタンダード化された食品が取って代わった。それは品質的には安定しているけど、生きていない、死んだ食べ物なんだ。グローバル化された商業のシステムが、食料品はより均一で扱いが簡単なほうを好むからね」。
なるほど。瓶の中で商品の発酵が進んだり、同じ商品なのに味が違っていたりしたら、現代の商業システムの中では欠陥商品としてはねられてしまう。カルロさんはそんなことに疑問を感じ、生きた発酵食品の魅力に取り憑かれた。発酵食品の研究を極めまくったカルロさんが、日本の味噌や醤油に辿り着くのは当然の結果だった。
そんなカルロさんの商品ラインナップはこんな感じ。
■しょうゆソース4種類
「Salsa Ariete サルサ・アリエーテ」 (ひよこ豆と麦)
「Salsa Favola サルサ・ファーヴォラ」(そら豆とファーロ麦)
「Salsa Lentis サルサ・レンティス」(黒レンズ豆とファーロ麦)
「Salsa Pisa サルサ・ピーサ」(グリーンピースと麦)
大豆は使っていないのでソイソースとは呼ばず、材料別に独自のネーミング
■味噌8種類
「Miso Nero di Tuscia ミソ・ネーロ・ディ・トゥーシャ」黒レンズ豆とファーロ麦の味噌
「Miso Morbido di Ceci e Orzo ミソ・モルビド・ディ・チェーチ・エ・オルツォ」ひよこ豆と大麦のやわらか味噌
「Miso Novello di Nocciola e Orzo ミソ・ノヴェッロ・ディ・ノチョーラ」ヘーゼルナッツと大麦の初物味噌
「Miso Morbido di Ceci e Farro ミソ・モルビド・ディ・チェーチ・エ・ファーロ』ひよこ豆とファーロ麦のやわらか味噌
「Lentimiso レンティミソ」レンズ豆の八丁味噌風
「Ceciomiso チェチオミソ」ひよこ豆の八丁味噌風
「Miso Uno di Ceci e Orzo ミソ・ウノ・ディ・チェーチ・エ・オルツォ」ひよこ豆と大麦 1年もの味噌
「Miso Uno di Ceci e Farro ミソ・ウノ・ディ・チェーチ・エ・ファーロ』ひよこ豆とファーロ麦の1年もの味噌
■「Umori(ウモリ)」粉末調味料
しょうゆソースを作る際に出るモロミを乾燥しパウダーにしたもの。食料廃棄を減らすために考案したが、今ではとても人気商品に。今のところ全11種類
その他、サワークラフトやコンブチャ、モロッコ発祥の塩レモンやそれをアレンジした塩オレンジなどなどの発酵食品たち。大豆、GMO食品、保存料や添加物などの化学薬品は一切不使用。
おもしろいのは、すべての商品のラベルに「加熱しちゃダメ!」と書かれていること。発酵菌が生きていて、それを食べるからこそ身体にもいい、だから加熱はNOってことらしい。ってことは、時として煮たり焼いたりしてしまう日本料理の味噌や醤油の使い方って、どうなんだろう? 発酵という観点からはダメなんだろうか? 発祥の国だぜ、と驕ることなく、味噌醤油作り発展途上国の研究に耳を傾けるのは大切なことかもしれないなあ。それはともかく、私は今のところヘーゼルナッツ一推し発酵食品なんかもいつか試してみたい。
そんなわけで明日は、カルロさんの味噌や醤油たちの誕生秘話などに迫ります。乞うご期待。
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