岡野玲子『両国花錦闘士』はなぜ舞台化されたのか。相撲と演劇に共通する祝祭性

2021.1.9

2021年、世界が男女問わず祝祭感であふれますように──

『両国花錦闘士』でその土俵が何を表しているか、力士とは何かが語られたとき、はらりと憑き物が取れたような気持ちになった。ジェンダーについて考えるとき、不利益を起点にすると、堂々巡りになりかねない。それよりも男性性と女性性を根源的なところから見つめ、男性と女性の関わりに豊穣という補助線を引いたとき、目の前の景色は変わるような気がするのである。

主題歌を手がけたデーモン閣下のコメント動画

この『両国花錦闘士』の舞台化を企画し、制作している主要な人物が全員、男性であったことは興味深い。ヴィレッヂのプロデューサー・浅生博一さんと東宝のプロデューサー・鈴木隆介さん。このふたりに明治座の三田光政さんが加わり、「三銃士」として共同プロデュースしている。彼らはどういうスタンスでこの作品に取り組んだのか知りたくて話を聞きに行った。作品の感想はどう感じても自由だと思うけれど、どんな人がどう思って作っているか勝手に想像して記したくなかったからだ。

話を聞くことができたのは、浅生さんと鈴木さん。ふたりは高校の同級生だという。そのころ一緒に演劇をやったこともあるものの、そのままずっと一緒に演劇の道を歩んだわけではなく、16年ぶりに再会したことがきっかけで、同世代の明治座の三田さんも交えた三銃士のプロジェクトが誕生した。

老舗の劇場・明治座で、観たことのない新しいものを作るというプロジェクトで、『両国花錦闘士』を提案したのは鈴木さん。岡野玲子さんの描く相撲と演劇に共通する祝祭性を丁寧に説いてくれた。

浅生さんは、主にビジネス面の話や、キャスティングの話をしてくれた。劇団☆新感線という小劇場活動から始まって、それまでの演劇の価値観を壊しながら巨大化してきた制作会社の若手らしいアグレッシブな雰囲気を漂わせる浅生さんと、スターシステムのもと商業演劇を作ってきた老舗・東宝に所属する鈴木さんとでは、同年齢の男性でも、個性がまるで違う。

脚本と演出は青木豪。女性の描いた物語の本質を、女性たちで作るというやり方もあると思うが、男性たちが丁寧に解読し舞台化したことにもまた、この舞台の清々しさがあるように感じる。『両国花錦闘士』のターゲットは40〜60歳代のある程度生活に余裕のある女性(商業演劇はたいていこのあたりの層を対象にしている)というが、男性も楽しめるだろう。

自粛を強いられた2020年。2021年は世界が男女問わず祝祭感であふれますように。


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木俣 冬

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