ジョセフィン叔母さんの恋人
ジョセフィン叔母さんのパーティーは素敵な自由さに満ちている。
世界的なピアニスト、セシル・シャミナードの演奏もある。
セシルは実在する人物だ。“経済的に自立した最初の女性作曲家”といわれている。
セシルに「音学家になるの?」と聞かれて「いいえ。趣味としてつづけられたらいいなと思ってます。結婚相手が許してくれれば」とダイアナは答える。
親のしつけと違う道を示されてダイアナは混乱してしまうのだ。
アンは、自由な雰囲気の中で、いつも以上に活き活きとしている。
ジョセフィン叔母さんとガートルードが恋人であることがわかると、ダイアナはショックを受け、アンは感動する。
ジョセフィン叔母さん自身も、気持ちを抑え込むようにしつけられていたと、コールに語る。だが、ガートルードに出会って、その影響で、感性豊かに、初めて自分らしさを出すことができるようになった、と。
「それは、まるで奇跡ですね」とコールはジョセフィン叔母さんの目を見て応える。
マリラは頭痛で苦しみながら、過去を思い出している。
兄のマイケルが死んで母が心痛で起きられなくなった過去を、マリラもマシューも思い出している。
ふたりは親からネグレクトされて育った姉弟だったのだ。
第7話は、アン、コール、ダイアナ、マリラ、マシューが、捕らわれていた過去の記憶にどう対処するかを描いた物語なのだ。
アンは、世界がとても広いことを実感して、自分の可能性について思いを馳せた。コールは、出会った芸術家のアドバイスどおりに粘土を試してみることにした。ダイアナは、親からしつけられた世界とは違う世界に直面して戸惑っている。
マリラとマシューは、アンと出会って自分たちの世界が変わったことを再認識した。アンが帰ってきて、パーティーの話を聞いたマリラは「気分がよくなってきた」と笑う。
可能性のペン
そして、もうひとりの未来が示唆される。ダンロップさんだ。
3話のレビューでこう書いた。
“ダンロップは、アンの優しさや快活さに心惹かれ、アヴォンリーの村を好きになった。アヴォンリーの村に残って、生まれ変わろうと望んでいたのだ。
直感を研ぎ澄ましても、アンもマシューもマリラも、その心の変化を捉えることはできなかった。「あのふたりは悪党だ」という大きな判断に、繊細な気持ちの変化は(その小さなしるしもいくつもあったのに)気づくことはできなかった。”
気持ちの変化は届かず、ダンロップは悪党の道から抜け出せないままに物語からフェイドアウトしていった。
レビューにはいくつかの反論のコメントがついた。
「ダンロップは根本が悪人だ」「改心していない」「やり直せない」といったものだ。
だが、『アンという名の少女』は、ダンロップさんを突き放したまま終わらせない。
第7話のラストシーン。コールは粘土を試み、アンは自分の可能性にワクワクしている。
そこでアンは、ダンロップさんの「詐欺師のペン」を持ち、「これより汝を可能性のペンと名づける」と言うのだ。
詐欺師のペンは、可能性のペンになった。
誰もが過去に縛られずにやり直せる世界であってほしいという祈りが響く素晴らしい回だった。
最後に、アンの朗読した『ジェイン・エア』の言葉を引用する。
「私は、今、世界がとても広いと気づいた。果てなき荒野には希望、不安、感動、興奮があふれているのだ。荒野は待ち受ける、危険を顧みずに突き進む者たちを。真の知識を追い求める勇気を持った者たちを」。
『アンという名の少女』
原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
関連記事
-
-
天才コント師、最強ツッコミ…芸人たちが“究極の問い”に答える「理想の相方とは?」<『最強新コンビ決定戦 THE ゴールデンコンビ』特集>
Amazon Original『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』:PR -
「みんなで歌うとは?」大西亜玖璃と林鼓子が考える『ニジガク』のテーマと、『完結編 第1章』を観て感じたこと
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
「まさか自分がその一員になるなんて」鬼頭明里と田中ちえ美が明かす『ラブライブ!シリーズ』への憧れと、ニジガク『完結編』への今の想い
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
歌い手・吉乃が“否定”したかった言葉、「主導権は私にある」と語る理由
吉乃「ODD NUMBER」「なに笑ろとんねん」:PR