ザ・ブルーハーツ「人にやさしく」が2020年に響く理由。映画『君が世界のはじまり』が更新する“青春”

2020.7.31


時代を超えて伝わる「ザ・ブルーハーツ」の魅力

ザ・ブルーハーツの楽曲は、現在でも映画、テレビドラマ、CMなどで断続的に使用されており、アパレルブランドや栄養食品のCMでカバーされたのも記憶に新しい。そのほか、主題歌~挿入歌として複数の楽曲がカバーされたテレビアニメ『ローリング☆ガールズ』(2015年)、彼らの楽曲をテーマにした6編の物語で構成されるオムニバス映画『ブルーハーツが聴こえる』(2017)が制作されるなど、ジャンルを超えて多くのクリエイターに支持されている。

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本作で劇伴を制作した池永正二(ユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」リーダー)は1976年生まれであり、ザ・ブルーハーツ「キスしてほしい」のシングルを中学時代に購入した経歴を持つ「リアルタイム世代」の音楽家だ。こと劇伴においてはハープの柔らかな音色を主軸とし、「ブルハは過度に意識せず、キャラクターや作品の持つ世界観を支えることを第一にサウンドを構築した」と語る。それでも本作に取り組む上でそのサウンドを聴き直したという池永は、「人にやさしく」の逆説的な歌詞に改めて驚かされたという。

「あくまで僕個人の解釈ですけど、『人にやさしく』って、やさしい歌が好きで人にやさしくしてもらえなくて、やさしさだけじゃ人は愛せないからなぐさめてあげられない歌なんです。でも、ガンバレ!なんです。きれいごとじゃないし、嘘臭くなくないんです。だから、“ガンバレ!”って言葉にも説得力が生まれるのだと思います」

『君が世界のはじまり』特報/音楽を務める池永は『宮本から君へ』『もらとりあむタマ子』でも劇伴を手がける

世間体や大人の常識を気にせず、思ったことを飾らない言葉で歌にしていたザ・ブルーハーツ。権威におもねることのなかった彼らの音楽とアティテュードは、学校や社会に居心地の悪さを感じていた者たちの気持ちをフラットな立場ですくい取ってくれるものであり、だからこそ時代や世代を超えて愛されつづけているのだろう。池永も、ザ・ブルーハーツの魅力はそこにあると話してくれた。

「世の中うまくいかないことばかりだし、くじけることの方が多い。そこから噴出する怒りや憤り、自己嫌悪や落ちた気分を焚きつけるでもなく、共感して希望にするでもなく、ただその気持ちに寄り添ってくれるのがザ・ブルーハーツなのかなと。それは、他者の気持ちを想像することがテーマのひとつでもあるこの作品を通じて実感しました」

1991年生まれのふくだももこ監督と主演の松本穂香は『おいしい家族』以来、2度目のタッグ

ザ・ブルーハーツに彩られた青春群像という、悪い言い方をすれば既視感の強い組み合わせに対し、『リンダ リンダ リンダ』の遺伝子を継承しながら、より不穏な空気が漂う“今”の映画として成立している『君が世界のはじまり』。

優しさだけでは人も世界も救えないが、かといって優しさまで失ってしまっては、いとも簡単に家庭や社会は崩壊してしまう。優しさとは、他人を思いやること、他者に寄り添うこと――ゆっくりでも、そこから一歩ずつ始めようと背中を押してくれる、実直な希望の物語なのである。

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  • 映画『君が世界のはじまり』

    2020年7月31日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
    原作・監督:ふくだももこ(「えん」「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」)
    脚本:向井康介 音楽:池永正二
    出演:松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、江口のりこ、古舘寛治
    配給:バンダイナムコアーツ
    (c)2020『君が世界のはじまり』製作委員会

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Written by

森 樹

(もり・いつき)編集者、ライター。編プロ勤務を経て2019年に独立。『クイック・ジャパン』本誌ほか、カルチャー誌、アニメ誌などに寄稿。映画やアニメ作品のプレスリリースやパンフレットの編集も手がけている。映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』にも宣伝協力で参加。

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