ザ・ブルーハーツ「人にやさしく」が2020年に響く理由。映画『君が世界のはじまり』が更新する“青春”

2020.7.31


他人に「ガンバレ!」とエールを送る勇気

また、劇中での大きなポイントと言えるのが、業平をメインボーカルにして「人にやさしく」が歌われるシーンだ。朴訥とした、少しミステリアスな雰囲気のある業平が、歌い出した瞬間に露わにする激情。

NITRODAY “人にやさしく” (Official Music Video)

主人公たちは、本当は誰かに励まされたいと思っていても、そのセンシティブな内容から安易に助けを求めることができない複雑な苦悩を抱えている。そんな彼らの“もがき”を、前述の凄惨な事件を交えて丁寧に描いてきたのちに叫ばれる、「ガンバレ!」のエール。それは周囲の人間にも、自分に対しても、そして観客も含めた見ず知らずの他者に向けられた本音として届けられる力があり、胸に迫る。

ちなみに業平役を務めたのは、横浜発のオルタナティブ・ロックバンド「NITRODAY」のボーカルであり、本作が演技初挑戦となった小室ぺい(「人にやさしく」の音源もNITRODAYによる演奏)。そのナイーヴさを内包しつつエッジの効いたボーカルは物語の焦燥感ともマッチしており、音楽を本職とする彼に業平役を任せた意味が理解できる。

劇中では「陰」のある業平が「人にやさしく」を歌い上げる。映画初出演の小室の演技にも注目

また、向井脚本作品を追っている邦画ファンであれば、『リンダ リンダ リンダ』において女子高生バンドが「リンダリンダ」を演奏する光景がフラッシュバックする者も少なくないだろう。あれから15年後に描かれたセルフオマージュとも見ることが可能だし、青春や思春期のサウンドトラックとして錆びることのないザ・ブルーハーツの輝きを改めて実感できるパートでもある。

映画『リンダ リンダ リンダ』(プレビュー)

時代を超えて伝わる「ザ・ブルーハーツ」の魅力


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森 樹

(もり・いつき)編集者、ライター。編プロ勤務を経て2019年に独立。『クイック・ジャパン』本誌ほか、カルチャー誌、アニメ誌などに寄稿。映画やアニメ作品のプレスリリースやパンフレットの編集も手がけている。映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』にも宣伝協力で参加。

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