怪談は新たなフェーズへ。11時間半に及んだ怖い話No.1決定戦『OKOWA』から探る可能性

2020.7.20
『事故物件 恐い間取り』

(c)2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会
文=森 樹 編集=田島太陽


息を呑むようなただならぬ緊張感がつづくなか、さらに寒気と熱気が交互に迫りくる特異な11時間半だった。2020年6月6日、オンライン上で開催された、ジャンル不問の怖い話No.1決定戦『OKOWA(オーコワ)connect』のことである。

Netflixでは『呪怨』シリーズの新作が公開され、8月には亀梨和也主演×中田秀夫監督のホラー映画『事故物件 恐い間取り』の公開が予定されるなど、「怪談」に今まで以上に熱い視線が注がれている。その魅力はどこにあるのか、なぜ今「怪談」なのか。『OKOWA』の熱狂的な盛り上がりに、そのヒントがある。


717万円もの寄付が集まったチャリティー「怖談」イベント

『OKOWA connect』は、コロナ禍で休業を余儀なくされた全国のライブハウスと医療従事者へのチャリティーを掲げた有料配信『OKOWAフェス connect』に加え、OKOWAの現王者である芸人・中山功太の防衛戦を中心とした無料配信『OKOWAタイトルマッチ四の章』の二部構成で行われたイベント。最終的に717万円もの寄付が集まるなど、彼らが提唱する怪談・都市伝説・人怖(ヒトコワ)を含めた物語「怖談(コワダン)」への注目度が改めて高まっていることを実感できる時間となった。

これで〝OKOWA〟のすべてがわかる!『OKOWAヒストリー』

2018年から開催されている『OKOWA(正式名称=OTUNE KOWAI OHANASHI WORLD ALLIANCE)』は、大阪に本社を持つ映像制作会社「ちゅるんカンパニー」主催の怖談イベント。ベストセラー『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房刊)の作者で、“事故物件住みます芸人”としても知られる松原タニシを中心に創設された。

松原タニシ
松原タニシ

松原は、人気配信番組『おちゅーんLIVE!』のメインホストであり、お笑い、ライトなエロなども取り上げつつ、怪談や都市伝説をその語り手も含めて掘り下げることで新たな魅力を提示した立役者である。そんな彼が力を入れているイベントのひとつが、実力者による怖談バトル『OKOWA』なのである。

もともと、怪談や心霊スポット体験などは、夏の風物詩としてテレビでもたびたび取り上げられる人気コンテンツであった。だが、「嘘」か「真実」か判別できない、グレーな在り方にこそ意味があるこれらのコンテンツは、コンプライアンスに抵触する可能性もあってか、現在では激減。一方で、ネットメディアとの相性はよく、匿名掲示板をのぞけば都市伝説・怪談の類はいくらでも発見することができる。少し趣は異なるが、松原ともコラボレートしている事故物件紹介サイト『大島てる』なども、ネット発だからこその存在感がある。

さらにメットメディアでの隆盛を加速したのは、YouTubeなど配信系ツールとの相性のよさだ。見せ方を考慮する必要はもちろんあるが、話芸として身体とマイクひとつあればコンテンツとして成立する手軽さがある。一方でリスナー側からしても、スマホやPCから好きな時間に自分のペースで楽しめ、恐怖をコントロールできる環境を獲得したことも大きい。ギャラリーやトークライブハウスを用いた小規模な怪談会も、老舗出版社やネットメディアと連携する形で増加。『OKOWA connect』でも、松原タニシ及びちゅるんカンパニーがハブになる形で築き上げてきた怪談師のネットワークを活かし、東京、名古屋、札幌、大阪、京都、香川のライブハウス/トークスペースからリモート中継を行うという手法が採られた。

『OKOWA』から見えた怖談の豊かなバリエーション

さて、話を6月6日の『OKOWA』に戻そう。第1部の『OKOWAフェス connect』では、怪談師によるチームバトル「決戦!怖談軍団闘争」をメインコンテンツとして配信。「OKOWA」でも初の試みであった「軍団闘争」は、3人1組というチーム対抗戦がバトルにおける緊張感を分散したこともあってか、各人がその実力を遺憾なく発揮。ハニートラップ梅木ら、お笑い芸人によるチームに至っては、怖談のフリをしたお笑いトークを投下するなど、フェスとして特別感のある内容となった。

結果は、札幌のトークスペースから発信した、語り部・匠平をリーダーとする「スリラーナイト軍」が優勝を獲得。一方で、第2部『OKOWAタイトルマッチ四の章』では、2代目王者の中山が、怪談マニアにはファンも多い実力者・田中俊行を下し、見事に防衛を果たしている。

『OKOWA』王者・中山功太
『OKOWA』王者・中山功太

チャンピオンシップの詳細は後述するとして、『OKOWA』総勢29名の怪談師から次々と繰り出されるエピソードに耳を傾けたことで感じたのは、そのバリエーションの豊富さだ。ある者は心霊体験を、ある者は土着的な風土・風習を、そしてある者は人間そのものを、といったジャンルのみならず、話術や話の組み立て、その際の表情や声色なども十人十色である。構成や間、演技力においては中山功太や石野桜子、ガリガリガリクソンといった芸人や俳優陣に一日の長があるが、話者自体が持つ繊細な佇まいや声から滲むムードやオーラといったものが恐怖へと転化されていくのも醍醐味。

また、この日ゲストとして登場した『OKOWA』初代王者・三木大雲は、寺の住職という肩書にふさわしい、人間の業をあぶり出していくような怪談説法を得意とする。あくまで怖い話No.1を決めるバトル方式ではあるのだが、そこで垣間見えたのは、さまざまな在り方が許され、評価される怖談の多様性と言えるだろう。

常連怪談師「Apsu Shusei」が語る怪談の魅力


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森 樹

(もり・いつき)編集者、ライター。編プロ勤務を経て2019年に独立。『クイック・ジャパン』本誌ほか、カルチャー誌、アニメ誌などに寄稿。映画やアニメ作品のプレスリリースやパンフレットの編集も手がけている。映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』にも宣伝協力で参加。

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