『ヘレディタリー/継承』の監督最新作は鬱病ヒロインの“失恋セラピー”映画!?

2020.2.21
ミッドサマー_2

文=高橋諭治 編集=森田真規


映画ファンから圧倒的に支持されているライムスター宇多丸氏が、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の2018年シネマランキング第1位に選出したことでも話題になったホラー映画『ヘレディタリー/継承』。

その監督アリ・アスターの長編第2作となる『ミッドサマー』が2020年2月21日から公開される。主演を務めるのは今年のアカデミー賞助演女優賞にもノミネートされた注目の若手女優フローレンス・ピュー。『ヘレディタリー/継承』とは真逆のエネルギーに満ちた異端の“失恋セラピー”映画を、ぜひ劇場で!


アリ・アスター監督、長編第2作!今作では自身の傷心体験を主人公に色濃く反映

『ヘレディタリー/継承』(2018年)で脚光を浴び、一躍ホラー映画の新たな旗手となったアリ・アスター監督。彼の長編第2作『ミッドサマー』は、スウェーデンの田舎で90年に一度行われるという夏至祭を背景にしたホラー映画だ。このジャンルに慣れ親しんだ観客は、のこのこ現地を訪れたアメリカ人大学生の一行がどのような運命をたどるのか、おおむね想像がつくだろう。

文明社会の常識でははかり知れない田舎や秘境の恐怖を描き上げたホラーは、ジョン・ブアマンの『脱出』(1972年)、ロビン・ハーディの『ウィッカーマン』(1973年)、イーライ・ロスの『グリーン・インフェルノ』(2013年)など枚挙にいとまがない。

ところが『ミッドサマー』は様相がかなり異なっている。このジャンルにおいて観客の目線を担う登場人物は、どんちゃん騒ぎ好きのお気楽な若者と相場が決まっているが、本作の主人公ダニーはまったくそうではない。心を病んだ妹が引き起こした一家心中によって、家族全員を亡くすという取り返しのつかない悲劇に見舞われた彼女は、その後遺症を引きずった最悪の精神状態でスウェーデンへ旅立つことになる。

しかも同行する恋人クリスチャンは、そんなダニーを慰める素振りを見せつつも、ホンネではひどく重荷に感じており、事あるごとに姑息な言動を連発する。そう、この上なく哀れな天涯孤独のダニーは、最後の心のよりどころである彼氏にまで捨てられようとしているのだ!

『ミッドサマー』予告編

つまり本作は、カルト集団の土着信仰を題材にしたホラーであると同時に、ダニーのどんよりと沈み切った複雑な内面を探求したサイコロジカルなスリラーでもある。ちょうど実生活で失恋したタイミングでスウェーデンのプロデューサーからホラー映画製作の話を持ちかけられたというアスター監督は、自分自身の傷心体験をダニーのキャラクターに色濃く反映させた。


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高橋諭治

(たかはし・ゆじ)純真な少年時代に恐怖映画を見過ぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞、映画.com、ぴあアプリ、劇場パンフレットなどに映画評を執筆中。日本大学芸術学部映画学科で非常勤講師もやってます。

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