アートは不要不急か?「社会という檻」でタブーに向き合い、分断ではなく“共生”するために(小田駿一&A2Z)

2021.1.23


アーティストはどうすれば社会と接続できるのか

A2Zによる2020年の作品。著作権が消滅した名作を改変し、絵画の“再生”を表現した

──今回展示されているような現代美術は、見た瞬間にわかりにくく、背景にある文脈重視の側面が強いように感じます。そのことでなかなか近づきにくい方も多いと思います。

A2Z 問題提起をすることがアーティストの役割のひとつである反面、問題提起を重視するあまりに文脈重視の側面が強くなり過ぎ、シンプルなことを複雑にする傾向が強くなっているのも感じます。それは、見る人たちの網膜を喜ばせることができているのだろうかと思うことがありますね。

もう一度、表現第一主義に戻り、自宅に飾ったら気持ちが晴れるようなエモーショナルな作品を作る方向へ流れるのもいいのかもしれません。つまり、見た瞬間に心が洗われるような作用を持った作品です。

ただ、山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社)がヒットして以降、アートがかなり身近になり、雰囲気が変わったようにも思います。

小田 先ほども言ったように問題提起の側面はありますが、それが行き過ぎてパッと見たときに何も感じない、そして長い文章で説明している作品に関しては疑問を持っています。

そもそもアーティストは言語表現があまり得意ではないために、非言語領域で言葉にできない何かを表現するために作品を制作している。そのため言葉で説明した瞬間に何かが抜け落ちてしまう。要は、パッと見たときの美しさとその裏側にある文脈のバランスが重要だと思いますね。

──文脈に依存して過度に難解になったアートは、いくら問題提起をしても一部の人たちにしか響かない。そのため、アーティストと一般の人たちの距離があるのではないかと。A2Zさんは、若いころは社会との接点をなかなか持てなかったとおっしゃっていました。それが変わったのはいつでしょうか?

A2Z 新型コロナウイルスが蔓延する前に、デジタル上で自身の作品を一方的に発表するアーティストに違和感を感じていました。SNSで作品を発表すると社会と接点を持っているような錯覚に陥るのです。実際には、アーティストが作品を発表するだけで、一方通行なのですが。

そこで匿名アーティストとして作品を発表しようと考え、2日間で作品を完成させたのが始まりです。これまでの別の活動でのストレスがよい作用となり、風刺画として急に降りてきたんです。その後、1年間の制作期間を経て個展を開くことができた。その作品を通じて、リアルなスペースで問題提起することができて、社会との接点をきちんと持てましたね。

小田 昔のアーティストは、戦争を経験している人も多い。つまり、政治や社会によって、自身の生活が激変してしまう鮮烈な原体験がある。だからこそ、社会へメッセージを発信しつづけていたのはあると思います。

それに比べ、私たちの世代は飽食の時代に生まれ、人生は揺るぎない平和と安泰に守られていると考えている人が多い。そこに今回の新型コロナウイルスの蔓延により、戦争ほどではないにしろ自らの生活を制限されるようになった。そこで、「社会という檻」で生きていることを再認識した。だからこそ、今後、アーティストはより強くメッセージを発信し、社会と接続していくのではないでしょうか。

A2Z(エートゥージー)
東京を拠点とする匿名アーティスト。2019年より『AtoZ MUSEUM』の活動を開始。日用品や身の回りのものを再定義してアート作品としてパッケージしている。昨年9月にOIL by 美術手帖ギャラリーで初個展を開催。

小田駿一(おだ・しゅんいち)
1990 年生まれ。2012 年に渡英し独学で写真を学ぶ。 2017 年独立。2019 年に symphonic 所属。人物を中心に、雑誌・広告と幅広く撮影。

緊急事態宣言下、東京の夜の街を撮影した『Night Order』シリーズを発表。社会とのつながりの中から着想を得て、人の心と行動を動かす「Socio-Photography」を志向する。


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  • 『Gallery of Taboo』

    ・参加アーティスト:A2Z、BORING AFTERNOON、KAITO SAKUMA aka BATIC、KOMIYAMA TOKYO、SATOSHI MIYASHITA、SHUNICHI ODA、TEMBA、yabesian
    ・会場:東京都中央区日本橋室町1丁目5-15 真光ビル3F-5F(地下鉄三越前駅より徒歩3分)
    ・会期:2021年1月14日~2月5日

    ・開館時間:13時~20時(※最終入場は閉場の30分前まで)
    ・休館日:会期中は無し
    ・観覧料:無料

    ・協力:日本橋料理飲食業組合/GROWND nihonbashi

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本多カツヒロ

(ほんだ・かつひろ)1977年神奈川県横浜市生まれ、東京都育ち。2009年よりフリーランスライターとして活動。健康・医療からエンタメまで幅広く執筆。

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