「政治に対して声を上げない若者」を作ったのは誰か――都知事選と出てこないキッズ(古田大輔)

2020.7.3

文=古田大輔 編集=谷地森 創


世界中に波紋を広げる「#FridaysForFuture」、「Black Lives Matter」、いずれも中心になって声を上げているのはSNSを駆使する10代~20代の若者たちだ。

一方、日本では20歳代の投票率はほかのどの世代よりも低く、30%ほどしかない。その上、若い世代のタレントやミュージシャンが政治に対して声を上げると「素人が口を出すな」という批判が飛んでくる。

この違いはどうして生まれたのか、日本と諸外国の違いは何か。『BuzzFeed Japan』創刊編集長であり、退任後もネットにおけるジャーナリズムの第一線に立ちつづけるジャーナリスト・古田大輔が読み解く。


世界中で若者の政治参加の意識が急激に高まっている

昨年、「Dance Monkey」の大ヒットで世界的に有名になったオーストラリア出身シンガーのトーンズ・アンド・アイに「The Kids Are Coming」という曲がある。

キッズたちの言うことなんて誰も聞こうとしない

そんなひと言で始まるこの曲は、若者世代の怒りと力に満ちている。曲が出た当時26歳だったトーンズ・アンド・アイは、その世代のひとりとして歌う。意訳するとこんな感じだ。

若者たちが誰かを殺したみたいに言うけれど
あなたたちの世代が使ってきた銃なんていらない
私たちには成し遂げようとすることがあるから

TONES AND I - THE KIDS ARE COMING (OFFICIAL VIDEO)

ミュージックビデオの背景には、紛争や環境破壊による気候変動の映像が流れる。これらはすべて上の世代による負の遺産。そんな社会を暴力を使わずに変えると訴えている。

感情あふれる甲高い声が特徴的な彼女だが、サビでは静かに繰り返す。

The kids are coming
The kids are gunning
The kids are running
The kids are coming, for you

私たちの世代が社会を変える。抑制が効いているからこそ、その決意が伝わってくる。

これは歌の世界の話じゃない。今、世界中で若者の社会変革や政治参加の意識が急激に高まっている。

「自分たちの将来を奪うな」 投票率が急上昇

2018年にスウェーデンで当時15歳のグレタ ・トゥーンベリが始めた気候変動への対策を求める運動「#FridaysForFuture」は、世界中に広がった。10代〜20代の若者たちが街頭に繰り出し、地球の未来を、自分たちの将来を奪うなと権力を握る上の世代に訴えた。

Students around the world go on climate strike

政治参加のあり方はデモだけじゃない。投票率も一気に上がった
アメリカで2014年と2018年の選挙を比較すると、ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)の投票率は22%から42%とほぼ倍(※1)になった。

イギリスでも2017年総選挙の18~24歳の投票率は64%(※2)に達した。2001年、2005年総選挙の頃は40%前後だったことを考えれば、こちらも躍進だ。若者たちはInstagramTikTokで社会を変えようと呼びかける。政治的なメッセージは至るところから出てくる。テイラー・スウィフトからも、ビリー・アイリッシュからも。

(※1)
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2019/05/29/gen-z-millennials-and-gen-x-outvoted-older-generations-in-2018-midterms/
(※2)
https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-8060/

発言が求められる国と、批判される国


この記事の画像(全2枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

古田大輔

(ふるた・だいすけ)ジャーナリスト/メディアコンサルタント 。 福岡県生まれ、早稲田大学政治経済学部卒。2002年、朝日新聞入社。社会部、アジア総局、シンガポール支局長などを経て帰国し、デジタル版編集を担当。2015年10月退社、『BuzzFeed Japan』創刊編集長に就任。ニュースからエンタテ..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。