「政治に対して声を上げない若者」を作ったのは誰か――都知事選と出てこないキッズ(古田大輔)

2020.7.3


発言が求められる国と、批判される国

自分たちの社会や将来を左右する政治について発言をしなければ、「あなたは何を考えているのか」と批判されかねない。政治に関わる発言をしたきゃりーぱみゅぱみゅやローラが「素人が口を出すな」と批判された日本とはまったく違う。

日本では投票率は世代が上がるほど高い傾向がつづいている。直近の2019年に選挙があった参議院で見てみると、20歳代の投票率はずっと40%を切っており、2016年から2019年にかけても35.6%から30.9%に下がった。60歳代も低下傾向にあるが、ずっと60%を超えている。

高齢化社会の日本ではただでさえ、上の世代の人口が多いのに、投票率でも差が開いているために、投票数は高齢者に偏る。選挙に勝つためには、政治家は高齢者のほうをむかざるを得ない。政治が高齢者中心になるいわゆる「シルバーデモクラシー」だ。

与野党の同世代の政治家たちと話すとこんな声を聞く。
「シルバーデモクラシーは別に選挙だけの話じゃない。地元で集会を開いても集まるのは高齢者ばかり。暮らしぶりや困っていることも、その人たちの意見を中心に聞くことになる。自然と価値観はそちらに引っ張られてしまう」

若者ではなく、その上の世代にこそ責任がある

東京では7月5日、都知事選の投開票日を迎える。新型コロナウイルスの影響で、街頭での訴えを制限せざるを得ず、そのぶん、ネットでのアピールが重要となる。

しかし、そこに若い世代の熱狂は感じられない。

ビリー・アイリッシュは5月30日から、アメリカで広がるBlack Lives Matter(意訳すれば「黒人も人間だ」)の運動に関するメッセージをInstagramに投稿している。それぞれに数万件、時には10万件を超えるコメントがつく。

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I WANT THINGS TO BE DIFFERENT

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ビリー・アイリッシュのInstagramには多くのコメントが寄せられる

これだけの熱量の差が生まれているのは、若者当事者たちの違いというよりは、政治や社会に対して声を上げる文化を作ってこなかった世代(42歳になる筆者もそのひとりだ)に責任があると感じている。

だからこそ、今、変えていくべきだろう。その萌芽は日本にもある。大学生が自分たちでメディアを作り、芸能人の政治的な発言も少しずつ増えている。

たとえば、ジェンダー平等、セクシャルマイノリティの権利、自分たちにとって大切だと感じるテーマを自分のスタイルで語る動きがネット上には広がりつつある。もしまだ気がついていないとしたら、あなたがそれをまだ見ていないだけだ。

トーンズ・アンド・アイのミュージックビデオに出てくるキッズたちが掲げるメッセージには、こう書かれている。

WAKE UP 目を覚ませ

ACT NOW 今すぐ行動しろ

IF NOT NOW, THEN WHEN? もし今じゃないとしたら、いつ動くんだ?


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