女性の側から「怖い」を捉えてみると
はらだ おふたりに聞いてみたいのが、もし山の中をひとりずつ歩いていて突如どちらかに遭遇したらどう話しかけますか。
藤野 こんな大きい顔の人がいたらやばいから、ケータイでこっそり写真を撮りつつ静かに退避ですね。
谷澤 成り立ちがわからなかったら横目で通り過ぎるかなあ。スルーですね。怖いものが得意じゃないので。
藤野 バズったときに、白い大きい顔が追いかけてくる『恐怖の森』っていうゲームをもとにした映画があるのを知りました。
谷澤 検索したときめっちゃ怖くて。でも、そういう怖さではないですね。
はらだ 作者が出くわしても、怖いんですね(笑)。『恐怖の森』みたいに追いかけられる怖さと、木霊に遭遇する怖さ、ふたつの怖さを比較して違いを考えると自分が何を怖がっているのかわかるかも。
藤野 「怖さ」っていうのはある種の過剰さですよね。過剰さというのはあまりに極まると笑えるし、シャットダウンにも聞こえる。
谷澤さんに伺いたいんですが、木霊のお面が女性の形っていうのはどうしてですか。わたしにとっては女性であるということはすごくしっくりくるんですけど、男性の顔って選択肢もあったじゃないですか。
谷澤 女性に見えますか?
藤野 だと思ってました。
谷澤 生物じゃないから設定はしてないけど、自分が女性っていうことが関係して自然とこういう形になり、結果そう見えたのかもしれません。
藤野 さっきすごくしっくりくると言いましたが、こういう強い次元の違うものが女性の姿形をしているのは、私にとっては救いのようにも思えます。ホラーに出てくる幽霊ってたいてい女性ですよね。でもそれって、女性は幽霊になってからじゃないと言えないことが多いからだと思うんですよね。社会的弱者であるからこそ死んでからでないと強さを獲得できないし、その強さは不特定多数の者にとって致命的なまでのものになってしまう。
はらだ 生きている間に言うと力で報復されるから、死んでからでないと言えない。
藤野 はい、本当にそうです。
谷澤 女性像については私も最近の作品で特にテーマにしていて、美術史の中でも女性の像はずっと消費されてきたから、それをこちら側に取り戻したいなと思っています。
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六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020
会期:2020年9月12日(土)〜11月23日(月・祝)
開場時間:10時〜17時
※ナイトミュージアム開催中につき、一部会場において夜間延長営業あり
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