岩井俊二×行定勲、師弟対談。これからのコミュニケーションのあり方を考える

2020.9.11

(c)Munehiro Saito (c)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
文=折田侑駿 編集=森田真規


岩井俊二監督作『チィファの手紙』と行定勲監督作『窮鼠はチーズの夢を見る』が、2020年9月11日に同日公開された。『チィファの手紙』は、岩井監督作『ラストレター』のいわば「中国版」で、手紙を介しての男女の交流が描かれる。そして『窮鼠はチーズの夢を見る』は、水城せとなによる同名マンガを原作に男性同士の恋模様を描いた映画だ。

いずれの作品にも共通して描かれているのが、“想い”を伝えるためのコミュニケーションのあり方である。コロナ禍によって“コミュニケーションのあり方”そのものが大きく変化しつつある現在、この現状をふたりの映画作家はどのように捉えているのか。師弟関係でもあるふたりに存分に語り合ってもらった。


映像作りにおける幸福な瞬間に立ち会えた師弟関係

行定勲監督は、テレビドラマ『GHOST SOUP』(1992年)をはじめ、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993年)や『Love Letter』(1995年)、『スワロウテイル』(1996年)、『四月物語』(1998年)など、岩井俊二監督作品の現場で助監督を務めた過去があるというが――。

行定 岩井さんは師匠ですね。僕にとって貴重だったのは、「岩井俊二」という映画監督の存在が世界で確立されていく過程を間近で見させてもらっていたことです。ひとりの監督がひとつの作品を作るのに、どんな悩みを抱えて、映画として表現し、世に伝えていくのか。そのプロセスを見られたことはとても勉強になりました。1992年に『世にも奇妙な物語』の1編として『蟹缶』という作品があって、それがなぜかオンエアされなかったことがありました。

岩井 野球中継の延長だったかな? 確かに放送されなかったね。

岩井俊二(いわい・しゅんじ)1963年生まれ、宮城県出身。監督作に『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、『花とアリス』(2004年)、全編を英語で撮影した『ヴァンパイア』(2011年)などがある

行定 僕はまず、その作品を観させてもらったんです。それがもう圧倒的にすごくて、「自分のやりたいことをちゃんとやれている人だな」と。映画の場合は公開までプロデューサーたちが導いてくれますが、ドラマに関してはオンエアされないということも起こり得る。そこには小さな挫折のようなものがあるはず。ですが、次に何かクリエーションをするとなると、それを払拭するように追い求めているものへ屈することなく向かっていく。その姿が印象的でした。こういう人が映画を作っていけば、いろんなものをひっくり返すことができる。僕はそんなふうに魅了されて、岩井さんの下につきました。

行定 勲(ゆきさだ・いさお)1968年生まれ、熊本県出身。監督作に『GO』(2001年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、『パレード』(2010年)、『リバーズ・エッジ』(2018年)などがある

岩井 行定と一緒に仕事をした最初の作品が『GHOST SOUP』で、これが自分にとって忘れがたい1本なんです。それまでは自分を抑えて作品に携わることが多かったのですが、これはわりと自由にやらせてもらえました。プロとしての仕事をしながら、学生時代のように伸びやかに作ることができた作品です。

確かこのころ行定に、「別に映画でなくても、こういう深夜の枠で自由にやらせてもらえつづけたら、こんなに幸せなことはないよね」と話した記憶があります。それくらい伸びやかな気持ちだった。
逆に言うと、そこに辿り着くまでいろんなストレスのなかで活動をつづけ、大変なことがたくさんありました。それらを経て幸福な瞬間に立ち会えたときに、一緒にいたのが行定だったんです。自分の作品を理解してくれている安心感が、彼にはすごくあります。

映画にとって一番重要なこと


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折田侑駿

(おりた・ゆうしゅん)文筆家。1990年生まれ。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、文学、服飾、酒場など。映画の劇場パンフレットなどに多数寄稿。映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを務めている。

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