決定「この野球マンガがすごい2020」コロナに負けるなベスト3

2020.4.4

「春はセンバツから」も「プロ野球開幕」もない春……。

野球ファンにとっては本来、球春到来を告げ、野球の話題で賑わうはずの正月のようなめでたい季節。だが、新型コロナウイルスの影響で、センバツ甲子園は100年近い歴史上初めて戦争以外の理由で中止となり、プロ野球開幕も未だ日程が定まらない。球場からは球音が消え、歓声も消えてしまった。

そんな野球欲求を解消するひとつの手段として、野球マンガを手にすることを提案したい。実は3月、4月はセンバツやプロ野球開幕に合わせ、野球マンガの新作がどんどんリリースされるタイミングでもあるのだ。今年はコロナ騒ぎで「せっかくタイミングを合わせたのに……」とプロモーションが肩透かしになった作品もいくつか見かけたが、だからといって見過ごしてしまうのはもったいない。

野球マンガといえば、『ドカベン』『タッチ』『キャプテン』『MAJOR』などなど、過去作品も含めれば名作は数え切れないが、「今」の潮流を押さえた最近の作品にも読むべきものは多い。そこで今回は、発売巻数がまだ10巻に満たない作品群から、「今こそおもしろい」という旬な作品ベスト3を紹介したい。選者は私、ライターで「水島新司評論」を得意とするオグマナオトと、野球マンガ評論家として「あだち充評論」を得意とするツクイヨシヒサ、毎年「この野球マンガがすごい」を選定しつづけているふたり。2020年の今、読むべき野球マンガとは?

1位『ドラフトキング』スカウトマンたちの眼力を描く

『ドラフトキング』(クロマツテツロウ/集英社 ※既刊4巻)

ツクイ 今年の1位についてはもうぶっちぎりです。「ドラキン」で決まりでしょう。

オグマ ですね。歴代の名作と並べても上位に食い込めるおもしろさだと思います。スカウトといえば、センバツが中止になったことで「選手を評価できない」と嘆く実際のスカウトの声がニュースになったりと、野球の現場以外でもさまざまな苦労が絶えない仕事。その「お仕事探訪記」としても興味深いです。

ツクイ ドラキン、野球リテラシーに関していえば、相当レベルが高い作品ですよ。

オグマ 野球リテラシーというと、『バトルスタディーズ』(なきぼくろ/講談社)における「野球描写のリテラシーの高さ」が有名ですが、この作品はまた別なところでのリテラシーですよね。ドラフト界隈における緻密さというか。

ツクイ 実際にしっかり取材をしているんだろうな、ということがよく伝わってきます。高校球児にしても大学生にしても社会人にしても、プロに行けるかどうか、そのギリギリのラインの選手を描くのがとても秀逸です。

オグマ 作者本人の取材でなくても、野球ライターなど現場に近い人の声をしっかり聞いて描いていることを随所に伺わせます。ドラフトというと「1位指名」にばかり注目が行きがちですけども、むしろ下位指名選手への目線がしっかりしています。特に、高校の2番手投手だったり、社会人のロートル選手だったりと、今まで野球マンガで主人公になりにくかった選手たちに毎回スポットを当てているのがおもしろいし、最近の地方大学野球の隆盛だったりと、今の球界トレンドを描けているのがさすがだなと。

ツクイ 特定の条件なら活躍できる、いわゆる「ツボを持っている選手」の評価の仕方、といった視点もいいですよね。もちろん、スカウト同士の駆け引きもおもしろい。スカウトものといえば過去にも『スカウト誠四郎』(三田紀房/講談社)や『隠し球ガンさん』(やまだ浩一・木村公一/文藝春秋)などがありましたけど、力量がないとマンガとして成立しづらいジャンル。スカウトだけを描いてもつまらないし、選手だけになったら他の野球マンガと大差がない。そのバランスも絶妙だし、ひとつひとつ描いていることが奥深い。そして、スカウトひとりひとりのキャラが立っていて、それぞれちゃんと優秀なところもいい。

オグマ 4巻に「スカウトマンはドラ1・ドラ2の選手を一人前にしてこそナンボ」というセリフがあるんですけども、指名して終わりではないのもいいんですよ。1位で指名した選手がコケる、という決して珍しくない事象も描きつつ、そこからの復活劇にスカウトがどう関わっていけるのか? スカウトという仕事の奥深さを知ることができる、野球ファンなら誰もが楽しめる作品だと思います。

ツクイ そうそう。どのスカウトに獲ってもらったかを選手は覚えている、という話もよかったし、実際にそうなんだろうなぁと思わせる。プロ野球選手が入団以降もスカウトをいかに頼っているのかがわかります。

オグマ 1巻で下位指名した選手にスポットを当て、そのとき1位だった選手が実は……と、後から紹介したりと、ひとつひとつのエピソードでも楽しめるし、巻数を重ねて読んでいっても唸る仕掛けがあって、これからも楽しみな作品です。今後、このコロナ騒動を受け、公式戦が実施できないときにスカウトはどうやって選手を発掘するか、なんていうタイムリーな話題を描いてくれてもおもしろいのかも。

2位『メイカン』「プロ野球選手名鑑」を巧みにフックに

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オグマナオト

福島県出身。ライター/構成作家。『野球太郎』『週刊プレイボーイ』『昭和50年男』などでスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。主な著書に『福島のおきて』『ざっくり甲子園100年100ネタ』『爆笑!感動!スポーツ伝説超百科』『甲子園レジェンドランキング』など。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構..

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