決定「この野球マンガがすごい2020」コロナに負けるなベスト3

2020.4.4

2位『メイカン』「プロ野球選手名鑑」を巧みにフックに

『メイカン』(原作・野球漫画制作工房、作画・テリー山本/小学館 ※既刊1巻)

オグマ 2位は『メイカン』。1位同様、両者一致での選出でした。まだ1巻しか出ていないので、今からでも追いかけやすい作品。タイトルどおり、「プロ野球選手名鑑」をフックにしつつ、一軍半の捕手を主人公にするというキャラクター配置がうまい。同じく選手名鑑を題材になど、中継ぎ投手にスポットを当てて始まった『グラゼニ』(足立金太郎・森高夕次/講談社)を彷彿とさせますが、グラゼニの場合、選手名鑑の中の「年俸」に寄り過ぎだったのかな、と。

ツクイ そうですね。選手名鑑との親和性でいえば捕手目線のほうが噛み合うし、「プロフィールに書かれている愛車から性格面を分析する」といった選手名鑑の活かし方もうまいですよね。確かに以前は愛車が書いてある名鑑はあったし、家族構成まで書いてある名鑑もあった。好きなタレントとかも書いてあったなぁ。

オグマ 個人情報ダダ漏れでしたよね。

ツクイ ただ、ここから先どうするんだろう?と。名鑑ネタってそんなにないぞ、という不安点もあるなかで、うまく広がりを見せられればおもしろい、という伸び代も期待しての2位です。ちなみに、『メイカン』の作画は少し前まで『ナツカツ』を描いていたテリー山本さん。終わってから1年ちょっとで次作、ということでペースが早いですね。『ナツカツ』では生徒の数が多く、その描き分けで難点もありましたけども、今回はバッテリーに主眼を置いているので見やすいです。

オグマ 2番手・3番手という今の立場から正捕手を目指すのか、ベテラン投手専属捕手としての立場から独り立ちしていくのか……そんな展開でしょうか。ちなみに、公式サイトにおける謳い文句が「史上初の漫画家、原作者、担当者すべてが夏の甲子園優勝高校野球部出身(ただ、在学時に優勝したわけではない)」であること。そして原作者は「あの名作『ラストイニング』の原作チーム残党です」と紹介しています。

ツクイ だから、捕手目線が得意なんですよ。『ラストイニング』(原作:神尾龍、監修:加藤潔、作画:中原裕/小学館)の主人公だった鳩ヶ谷監督も捕手出身、という設定の作品でしたから。その「捕手目線」描写には間違いがないと思います。

3位『球詠』「野球×萌え」だけじゃないガチさ

『球詠』(マウンテンプクイチ/芳文社 ※既刊6巻)

ツクイ 3位は女子野球マンガから。4月からアニメ化もされる、ということで、旬な作品でもあるのかなと。

オグマ アニメ専門チャンネル「AT-X」を中心に、ABCテレビ、TOKYO MX、メ~テレ、九州朝日放送、長崎文化放送で放映と、なかなかの大展開です。

ツクイ 『まんがタイムきららフォワード』という媒体で、あの絵柄なので「野球×萌え」の作品ね、と見られがちなんですけど、実際はもっと野球ガチな、いわゆる本格的な野球マンガです。

オグマ 硬式女子野球部がバッテリーを中心に全国制覇を目指す、という。「女子」を抜けば、今や普通の高校野球マンガでは描きにくい、ど直球の熱血野球もの。でも、そこがいいですよね。その一方で、魔球もあって百合もある、という満載感も。

ツクイ 絵柄に反して、というと失礼かもしれませんが、野球フォームやプレーの描写もしっかりしています。その点は、過去の女子野球マンガとは区別したい点で、野球のひとつひとつの描写が真剣に読めます。アニメがどうブレクスルーするかで、さらに化ける可能性もあるな、と。

オグマ アニメ化に当たっても、モーションアクターとして女子プロ野球選手(埼玉アストライア)に協力を仰いでいるみたいですね。その部分でも、マンガ同様、「ガチ描写」を売りにするのかもしれないです。

ツクイ 作品の舞台は女子高校野球部ですけども、今、女子プロ野球界がチーム解散や集団退団などで混沌としているなかで、この作品から女子野球が再び盛り上がっていくといいな、と期待したいです。

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オグマナオト

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オグマナオト

福島県出身。ライター/構成作家。『野球太郎』『週刊プレイボーイ』『昭和50年男』などでスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。主な著書に『福島のおきて』『ざっくり甲子園100年100ネタ』『爆笑!感動!スポーツ伝説超百科』『甲子園レジェンドランキング』など。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構..

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