衝撃の真犯人『真犯人フラグ』最終回 考察を無力化して博打化したドラマの凄さよ

真犯人フラグ20

文=米光一成 イラスト=たけだあや 編集=アライユキコ


日曜ドラマ『真犯人フラグ』真相編(日本テレビ)を『あなたの番です』(日本テレビ)考察の先駆チームであるゲーム作家・米光一成(『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)とたけだあやが再タッグを組んだ連載の20回目。3月13日ついに、最終回放送。真犯人が判明し、その動機も語られ、SNSも驚きの声で溢れた結末を振り返る(以下考察は、ネタバレを含みます)。


真犯人が判明した最終回のポイントをまとめる

『真犯人フラグ』最終回、ついに真犯人が判明した!
以下ネタバレありで『真犯人フラグ』とは何だったのかを振り返っていこう。

まず最終回を振り返る。
・河村(田中哲司)に問い詰められて、瑞穂(芳根京子)が告白する。
・瑞穂は、林(深水元基)の婚約話を知り、さらにホテルから林と真帆(宮沢りえ)が出てくるのを目撃。林を破滅させるため写真をネットに流す。
・瑞穂は、復讐の機会を窺っていたが、凌介(西島秀俊)と出会って実行に移せなくなっていた。
・こんどは瑞穂が河村を問い詰める。瑞穂がネット上げていた小説は、河村のパソコンから盗んだもの。真犯人しか知り得ない事実が多数書かれている。
・河村は、真犯人を名乗る人物から送られてきたものだと否定する。
・だが、“黝い(あおぐろい)”という難読漢字で凌介が、河村の文章だと見抜く(「文芸部時代の河村の文章を読んだ者なら気づくだろうから、日野(迫田孝也)が河村に罪をなすりつけるためにわざと使ったのでは!」と勘繰ったけど違った)。簡単に河村は觀念して白状する。
・河村は、真帆にプリペイド携帯と手紙を送り、呼び出していた。真帆は、プリペイド携帯と手紙を送ってくる異常な行為を問い詰めるどころか、凌介にも相談しない。なんでも相談している菱田朋子(桜井ユキ)にも相談しない。それどころか、そのプリペイド携帯でこっそり連絡をとる。
・『週刊追求』の資料室に呼び寄せた真帆を河村は脅したあげく、絞殺してしまう。
・偶然(!)、同じ日に失踪した光莉(原菜乃華)と篤斗(小林優仁)について河村は調べ、3人が何者かに誘拐されたと主張することにする。
・群馬の山奥で見つかった指輪も、その偽装のために河村が落としたのだった。
・林を翻弄したあげく、殺害したのも河村だった。
・河村は、最高のノンフィクション小説を書くためにやっていたのだとのたまう。
・なんで痛めつけたり助けたりしたのかは、「俺みたいな二律背反の悪役が必要だろ、物語には!」である、と。
・凌介の見つけた棺を開けると、真帆の死体がある。
・日野は河村にアイスピックを突きつけるが、逆に河村に脚を刺される。
・凌介は、家族の小説を書くことを決意するのだった。

というわけで真犯人は河村俊夫であったよ!

真犯人フラグ相関図2
主要登場人物相関図。イラスト/たけだあや

一貫した推理は通用しない、勘しかない

『真犯人フラグ』でおもしろかったのは、考察ドラマだと言いながら、考察不可能にしたところだろう。
考察を煽りながら、ドラマ内の出来事だけで推理することは不可能なカオスな展開にした。
登場人物たちは、われこそが犯人である!と疑われるように行動し、白状し、白状したけど犯人に脅されてましたと翻し、不倫疑惑写真を流出して好きな人を追い込み、無駄にサッカーボールを蹴り込み、主人公は白昼夢を見、自宅は誰でも入り放題にし、偶然は偶然を呼んで、たまたまがたまたまを呼んだ。

刺激的であり、状況が激変し、真犯人だと疑われる人物が次々と浮上すればいい。
誰もが、賭博にはまり込むように、こいつが犯人だあいつが犯人だと真犯人フラグを立てまくった。合理的、一貫性のある行動をする登場人物は存在しないうえに、カルト教団、闇の仕事人、画像改変、洗脳までOKの何でもアリに突入していく。最後の最後まで新しい重要な事実がドラマの都合で明かされる。もはや、一貫した推理は通用しない。強引に理由やつながりを見つけるか、勘しかない。
そのほうが、観る者にとっても楽だ。合理的な推理ではなく、えいや! この人が怪しい! チップをベットする感覚で真犯人フラグを立てる。


関係を妄想する手がかりはいくらでも

マニアックに考察する者も、早々にドラマ内の合理的な推理はみんな諦めていた。
真犯人フラグの「真」と「帆(フラグ)」だから真帆が犯人だ。日野がひとりで居る場面が映されないから日野が怪しい。ポスターの指の向きが犯人を指している。回想シーンのカレンダーがおかしい。河村が真帆ちゃん好きすぎるから怪しい。露骨に犯人フラグがまだ立ってないのが日野と河村だけなので怪しい。あの手の形は誰それだ。

などなど、胴元(製作者側)の思惑を探るのが推理のポイントになっていった。もうこうなると関係を妄想する手がかりはいくらでも生み出せる。
これが、自分のペースでじっくりと読む推理小説なら噴飯ものだ。だが、毎週、同じ時刻に、地上波で気軽に観るドラマなら、ジェットコースター的なエンタテインメントとして成り立つ。そう見極めて、そこに忠実に作った制作陣はすごい。

あの押し入れの中身であんなに恐怖するとは思わないもん!

この各話レビューでも、早々に「考察は無駄」と宣言した。それ以降は、予想展開として繰り広げた。
だが、それも外しまくった。
特に18話。「瑞穂が憎んでいる相手、一星が隠している事、押し入れの中身、すべてがつながる解はこれだ」は、ラストまでの展開を予想して、自信すら持って書いた。ハズレた。大ハズシだ。瑞穂、犯人ですらなかった。押し入れの中身も違った。ユニフォームと傘だけであんな恐怖するとは思わないもん!

翻弄された。『真犯人フラグ』が博打だったら、あれよあれよとすっからかん。めちゃくちゃ注ぎ込んで、借金して人生棒にふっていたかもしれん。

ドラマでよかった!

引退します

【関連】考察『真犯人フラグ』全話レビュー


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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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