L.M.モンゴメリ不朽の名作『赤毛のアン』に、大胆な現代的アレンジを加えたNetflixドラマ『アンという名の少女』シーズン3第8話「突然におとずれる変化」では、いよいよギルバートとアンの恋愛模様に大きな変化が訪れる。ギルバートの懊悩は、『ドラゴンクエストV』のビアンカを選ぶかフローラを選ぶか問題にも似て深刻だ。『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』などのゲームの作家でライターの米光一成(ビアンカ派)による全話レビュー。
ギルバートがウィニフレッドにプロポーズ?
『アンという名の少女3』第8話「突然におとずれる変化」、いよいよシーズン3、ギルバートとアンの恋が急展開する終盤に突入した。
ギルバートは、ウィニフレッドの家に行き、彼女の両親に会う。ウィニフレッドの父親が、男同士で語ろうとギルバートを誘い、結婚を許可する。それどころか、結婚すれば、念願のソルボンヌ大学へ行く学費もパリで住むところも援助すると言うのだ。
ギルバートがウィニフレッドにプロポーズして結婚という流れがバッチリできてしまった。
ギルバートは、アンに相談する。アンが「なんで迷ってるの?」と聞くと、ギルバートは「理由はひとつだよ」とアンを見つめる。アンは「何も言えないよ」と戸惑う。ギルバートの幸せを壊したくないし、自分の気持ちがまだわかってない。
ギルバートの気持ちははっきりしていたはずだ。何しろ、テストが終わったみんなでラム酒を飲んで、海賊の頭領になったつもりで、
アン「空腹の海賊と酔っぱらいの海賊の違いは何かな?」
全員「教えてー!」
アン「一方はお腹グーグーで、一方は足元グラグラー!」
とバカ騒ぎしているアンが、優雅に美しく踊っている女性に(スローモーション!)見えているのだから。
一応、アンのためにフォローしておくと、「お腹グーグーで、足元グラグラー」のところは、英語では、“One has a rumbling tummy, and the other’s a tumbling rummy!”で、「rumbling(ゴロゴロ鳴る) tummy(お腹)」と「tumbling(ぐるんぐるんの)rummy(大酒飲み)」で完成度の高いダジャレになっている(有名な海賊ジョークらしい)。
原作とはアンとギルバートの立ち位置が逆
原作の『赤毛のアン』シリーズ(『アンの愛情』)では、ふたりの恋に関して、アンとギルバートの立ち位置が逆だ。ギルバートはアンひと筋で、ドラマのギルバートのようにふらつかない。一方で、原作のアンは、ふらふらしまくりだ。ロイと2年間付き合い、愛していると思っている。ロイは、“ハンサムで、頭が良くて、お金持ちで、いい人”である。
ロイが「どうかお願いします」と言えば、アンが承諾することも疑いようがなかった。アン自身は、こうした現状を、穏やかに受け入れ、満足していた。彼女はロイを深く愛していた。
『アンの愛情』L.M.モンゴメリ 著/松本侑子 訳/文藝春秋
アンは、ロイのプロポーズを受け入れる寸前まで進むのだ。
『アンという名の少女』のギルバートは、てっきりアンに振られたと考えて、アンを諦める決心をしてしまう。バッシュに、アンのことは諦めて、ウィニフレッドにプロポーズすると話す。
そんなとき、アンはまだ決心がついていない。ジョセフィンおばさんにこう相談している。
「これが愛だって確信が持てなきゃ、言えません。それじゃ、あなたの夢が叶うもうひとつの選択肢を捨ててって」
ジョセフィンおばさんは、「愛ってとても複雑なのよ。焦って答えを出そうとああだったらこうだったらと考えている間は、どんなにがんばっても真実を感じ取ることはできないでしょうね」とアドバイスするが、アンは、自分の心が鎮まるまで待つ時間的な余裕がないことも知っている。
ギルバードは、幼なじみでよき「TEAM」であるアンにプロポーズするのか、資産家で美人のウィニフレッドにプロポーズするのか。まさに『ドラゴンクエストV』のビアンカを選ぶかフローラを選ぶかの問題に直面しているのだ。
リンド夫人の大活躍
第8話は、アンとギルバートの恋愛模様以外も激動した。
ダイアナは、ジェリーに別れを告げ、借りていた『フランケンシュタイン』を突き返した。さらに、パリの花嫁学校に行くつもりだったのを、ジョセフィンおばさんに助言されて、アンたちと一緒にクィーン学院の入学テストを受けた。数々の決断を経て、さらにミニー・メイに「お姉ちゃんがいい子のふりをしているから私が“なぜダイアナみたいにできないの?”と怒られるのだ」と泣きながら抗議されたことで、素直な気持ちをアンに伝えることを決心、絶交状態だったアンとダイアナの関係も修復した。
寄宿学校に閉じ込められていたカクウェットは、脱走し、ミクマク族の村に戻り、家族と再会する。
そして、印刷機泥棒と学校炎上事件を引き起こした評議委員の男たちは、リンド夫人の大活躍でやり込められる。リンド夫人は、評議委員の蛮行を「とにかくずうっと話しつづける」と脅して、白状させる。そして、秘密を守る代わりに、評議員に女性3人を加えて、男女同数にすることを確約させるのだ。
シーズン3、残すところあと2話。アンとギルバートの恋はどうなるのか? そして家族と再会できたカクウェットはこのまま村で静かに暮らせるのか?
『アンという名の少女』全話レビュー・あらすじまとめ/記事一覧
『アンという名の少女』概要
原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
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