2017年から2018年初頭、歌うVTuberは「富士葵」と「ときのそら」くらいしかいなかった。2020年、「バーチャルシンガー(Vsinger)」を名乗るVTuberも増えた、歌動画投稿も毎日すごい量だ。バーチャルで音楽をやる利点と可能性を、斯界を見守ってきたたまごまごが考察し、おすすめVTuberを紹介する。
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memexの試みからVR表現を再考
バーチャルオルタナアーティストを名乗るふたり組のユニット、memex。音楽をバーチャルな世界で表現することにこだわっているVTuberだ。
memexは主にVRChatでのライブやMV撮影に力を入れている。VRChatはネットを介して世界中の人が交流できるVR空間だ。映画『サマーウォーズ』(2009年)で描かれていた「OZ」のようなアバターが行き交う仮想空間の路上でパフォーマンスして観客に披露する、というイメージが近いだろう。
5月30日には「観測することによって実在する」という命題を表現した、全インスタンス(空間)同時ライブ「解釈不一致」を開催。個々の観客が空間を作ることでmemexをそこに「実在」させ、視聴者個々の解釈で自由に空間を演出できる仕組みをVRchat上に設計した。VRならではの、感覚に直接訴える音楽表現だ。
memexは実写では撮影できないMVを作ったり、VRワールドでのゲリラ路上ライブを行ったり、音で遊べるワールドを制作してユーザーに解放したりと、音楽とVRを利用した表現を探りながら多岐にわたって活動している。ふたりが発表したオルタナジャンルの曲は、アーケードゲームに起用されるなど高く評価されている。
このように音楽中心に多様な表現をするVSinger、バーチャルトラックメイカー、バーチャルアイドル、バーチャル演奏家などが日々増えつづけている。中にはすでにメジャーレーベルで活躍していたり、人間と一緒にインディーズレーベルに所属していたり、「BOOTH」や即売会で楽曲を頒布している人もいる。