年々規模を拡大している『M-1グランプリ』。2021年大会は錦鯉の優勝で幕を閉じ、初の50代のチャンピオンが誕生した。
大会終了後、『M-1』についての記事が多数公開されたが、それらの多くは出場者のライフストーリーに焦点を当てたものや、ネタに対する批評だ。対してこの記事は、出場者やネタよりも今回の大会自体にフォーカスして書かれた。今大会の意義や構造的問題について、いくつかのトピックに分けて考えていく。
地下芸人の台頭と“地上芸人”のアドバンテージ
決勝のメンツが確定したときに話題となったのが、ランジャタイ、真空ジェシカ、モグライダーといったアンダーグラウンドなシーンで活動するコンビ、いわゆる地下芸人の台頭だ。
地下シーンから上り詰め2020年王者となったマヂカルラブリーが間口を広げた部分もあるだろうし、『M-1』のファンダムにおけるコアなお笑いファンの存在感が年々強まってきた影響も考えられる。
そういった状況はYouTubeで公開されているネタ動画の再生回数からも窺い知れる。おおむねの印象として、テレビでよく見かける人気者に再生回数が集中しているというよりも、ライブシーンで評価されてきたコンビが着実に再生回数を伸ばしていると言えるだろう。
しもきた空間リバティ、しもきたドーン、中野Studio twl、新宿バティオスといったハコの匂いのする芸人たちがあの大舞台に立っていることは、コアファンにとって痛快な光景だっただろう。
また、地下シーンが注目を集めたことを受けて、今改めて“地上”と地下の違い、あるいはよしもと所属とそれ以外の芸人との環境の違いについて整理したい。よしもとが贔屓されているということではなく、環境要因で優位性を持ち得るという話だ。論点はひとえに事務所がハコを所有しているということに尽きる。
よしもと芸人の多くは、養成所を卒業後、若手向けのハコでより上のランクにのし上がるためにしのぎを削り合うが、よしもと以外のほとんどの事務所にはそもそもその自社のハコがない。定期的な事務所ライブや外部のイベントに呼ばれるといったことはあるにしても、時には自分でイベンターやハコの人間と話してどうにかしなくてはならなかったり、自腹を切ってライブに出たりといった状況。
よしもとでは売れっ子であれば1日に何ステージも舞台に立つことになるので、日々どころか1日のうちに何度もM-1に向けてネタを微調整して現場でテストしていける。
こういった環境の違いが実際にどれだけ響く格差になるのかは当事者でない限り判断し得ないし、究極的には事情は人それぞれだろう。ただ、その点を踏まえて出場者の動向を窺っていると見えてくるものもあるはず。
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