『M-1』錦鯉の優勝は、誰もが祝福したくなる結末。オズワルド敗北で感じた「漫才は水物」の意味とは(てれびのスキマ)

錦鯉、優勝の瞬間(C)M-1グランプリ事務局

(C)M-1グランプリ事務局 文=てれびのスキマ 編集=高橋千里


テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。

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今回、審査員は板つきで登場。幕が下り、現れるという演出。カッコいい。さっそく「審査基準はただひとつ。仲がいいかどうか」とボケるナイツ塙。

トップバッターはモグライダー。まわりの芸人たちが「いける、いける!」と盛り上げて送り出したのが印象的だった。多くの人が言っているように、トップでなければファイナルに進んでいたのではないかという完璧なスタート。「来い来いトップ、くらい思ってたんですけど、いざ引かれたら少しだけ嫌でした」と芝。

つづく2番手にランジャタイ。怒涛の展開。「奇天烈の極み」というキャッチフレーズがカッコいい。入場までの廊下の道中もボケる国崎。せり上がって階段を降りる際、国崎が伊藤の背中をポンと押したのがなんともよかった。

漫才はいつもどおりの、まさしく「奇天烈の極み」。ネタ終わりの審査員の困惑した表情がおもしろい。事務所の先輩のサンド富澤は「決勝だぞ、お前ら!」と一喝しつつ、国崎の演技力を讃え、91点の高評価。松本やオール巨人の87点など低い点数が発表されているときも、楽しそうに笑っている国崎。そんななかで志らくが96点をつける。トップが高得点でその次がカオスなネタだったことで、ここから審査員の基準点に混乱が生じた感じがする。

3番手のゆにばーすがモグライダーを1点上回り、暫定1位に。そしてここで敗者復活枠。ハライチが勝ち上がり、これで半数が非・吉本ということに。

ハライチ/敗者復活戦での勝利が決まった瞬間(C)M-1グランプリ事務局
ハライチ/敗者復活戦での勝利が決まった瞬間(C)M-1グランプリ事務局

ハライチがランジャタイを上回り、ランジャタイの敗退が決まると、彼らの背後にはおなじみオール巨人パネルが。最後に「ランジャタイのときは気絶してた」と言う上沼に曲を、とギターを奏でると、そのギターはもちろんオール阪神。巨人「彼らが僕の等身大のパネルを持ってウロチョロしてたのは知ってたんですよ」と笑い、「ふたりから直接(使っていいかという)手紙をもろうたんですよ」と明かす。「人間はすごいええから、漫才は変えたほうがいい(笑)」。

ランジャタイ国崎とオール阪神・巨人パネル
ランジャタイ国崎とオール阪神・巨人パネル(ランジャタイ国崎による連載コラムより)

5番手の真空ジェシカは、638点でゆにばーすと並び1位になったが、意外と伸びなかったという印象。

そろそろ爆発が期待される状況で登場したのが、優勝候補オズワルド。その期待に応え、巨人が「直すところない」と絶賛する完璧な漫才を披露し、665点と頭ひとつ抜ける高得点を獲得。松本と巨人に対しても、伊藤は「去年はアメリカと中国に見えたんですけど、今日はトムとジェリーに見えました」と完璧なコメント。

その後、錦鯉、インディアンスがシンプルでバカなボケ・ツッコミの漫才で強さを見せ、ファイナル進出を決めた。

1本目を終えてみると、前半と後半で2部構成のライブかのよう。前半は完全にランジャタイ・ショーだった。ランジャタイは、昨年は敗者復活戦で、今年は決勝で、いずれも最下位に沈みながら2年連続で最もインパクトを残した。

後半は経験豊富な漫才師が場を締め、初出場が多かった今大会の中で、ファイナルに残ったのはいずれも連続出場組に。結果的に、経験と安定感が評価されたかたちになった。もし、ネタ順が逆からの順番だったら、オズワルドを除けばまったく違う結果になっていたのではと思う。これも川瀬名人が戦前に語っていたように「ここからは運です」ということなのだろう。

この時点でオズワルド本人も大会後に語っているように、審査員も、視聴者の多くも、オズワルドの優勝をほぼ確信していただろう。が、「50歳おバカの大冒険」というキャッチフレーズの錦鯉は、バカバカしい中にも伏線回収までする漫才で爆笑を生む。

錦鯉/決勝8組目(C)M-1グランプリ事務局
錦鯉/決勝8組目(C)M-1グランプリ事務局

伊藤は「漫才中に優勝が離れていくような感覚だった」と振り返っていたが、本当に漫才は水物。ほんの少しの歯車の狂いで変わってきてしまう。勝ち切るというのがいかに難しいかというのを感じた。

結果、5-1-1で優勝は錦鯉。抱き合うふたり。まさに長谷川の漫才の最後のセリフのとおり「ライフ・イズ・ビューティフル!」。

誰もが祝福したくなる素敵な結末だった。ふたりの涙ながらのコメントに、審査員の富澤や塙も涙を堪えることができない。塙「モグライダーが残念で泣いてました(笑)」。

明日観たい番組:『マツコの知らない世界』『ロンドンハーツ』ほか

『マツコの知らない世界』(TBS)「ティラミスの世界」「クリスマスグッズの世界」。

『華大さんと千鳥くん』(フジ)「クセがすごい観客大喜利」。

『LIFE!』(NHK)に小芝風花、赤楚衛二、和牛・川西、西田尚美、シソンヌじろう、ムロツヨシ。

『ロンドンハーツ』(テレ朝)「芸人アンケートリサイクル」。

『フリースタイルティーチャー』(テレ朝)ザ・マミィ酒井vsそいつどいつ市川刺身、ウエストランド井口vs霜降り明星せいや。

『ホリケンのみんなともだち』(テレ朝)「乃木坂46賀喜ちゃんに謝りたい!!~仲直りデート完結編〜」。

『ぼる塾のいいじゃないキッチン』(テレ朝)「歯磨き粉ビュッフェ」後半戦。

『紙とさまぁ~ず』(テレ東)に尾田栄一郎。

『HAPPYクリスマスおもちゃ屋MISIA』(日テレ)に明石家さんま、EXIT。

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    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。