「心配しないで大丈夫だよ」48歳・独身のふかわりょう、“ひとりで生きる”と“決めた”理由を明かす

2022.12.4
ふかわりょう

文=於 ありさ 撮影=西村 満 編集=森田真規


おひとりさま、ソロキャンプ、ひとりカラオケ……ここ10年の間に“ひとり”を謳歌することの尊さを表す言葉が急増した。そんな時代を象徴するかのような、エッセイ集『ひとりで生きると決めたんだ』(新潮社)が11月17日に刊行された。著者は、お笑いタレントのふかわりょう。

捉え方次第では、諦めとも、覚悟とも思えるような、このタイトル。しかし、ふかわ曰く「独身宣言ではない」という。では、ふかわが考える「ひとりで生きる」とは何か、なぜ“決めた”のか。複数の求められ方に応え、芸能界を渡り歩いてきたふかわが20代、30代のころに抱えていた葛藤と共に語ってもらった。

ふかわりょう
1974年8月19日生まれ、神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学在学中の1994年、お笑い芸人としての活動をスタートさせる。長髪に白いヘア・ターバンの姿から独特なリズムで放つネタ『小心者克服講座』でブレイク。さらに、「ROCKETMAN」の名義でクラブDJをしつつ多数のアルバムをリリース。著書に、『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)などがある。2022年10月、かつて担当していた人気ラジオ番組『ROCKETMAN SHOW!!』がSpotify独占配信のPodcast番組『ロケショーplus』として名前を変えて配信スタート。活動は多岐にわたっているが、「マルチタレント」という表現に強い嫌悪感を抱いている。


“ひとりで生きると決めた”は独身宣言ではない

まず、上梓された『ひとりで生きると決めたんだ』にちなんで、ひとりで生きることを意識したのはいつなのかと聞くと、ふかわは「ある日、ふと自分がそう思っていることに気づいてしまった」と話した。

「まわりが結婚していくのを見て、ひとりで生きることを恐れた経験はありませんでした。それ以前に意識したことがなかったんです。

ただ、次に住むなら、どんな家に住もうかを想像したときに、誰かと住む家を想定していない自分に気づいただけ。同じ家にパートナーがいたり、子供と一緒に遊んだりすることをイメージしていない自分は、ひとりで生きていくつもりなんだなと思ったんです」

ただ、そのことに気づいたときも、ふかわは冷静だったそう。「このままでいいとも、よくないとも思わなかったんですよね。この先、何かが巻き起こるなかで、何か起きたらそれは受け入れるし、このままならこのままでもいいし……というのが本音なんです」とつづけた。


正直、意外な答えだった。『ひとりで生きると決めたんだ』──今回の本のタイトルは、てっきりふかわの強い覚悟を込めているように思えたから。

そのことを、ふかわに伝えると、タイトルの言葉に込めた意味を話し出した。

「確かに額面どおりに受け取ると、強い覚悟を感じたり、独身宣言とも受け取れるでしょうね。でも、けっしてひとりを謳歌するとか、ひとりが悲しいとか、そういう二元的なものではないんです。結婚していても孤独を感じることはあるだろうし。

強いて言うなら、自分がフラっと倒れてしまいそうなときに支えてくれる言葉だなと思っています。この書籍の中に書いてあることは、もしも私が30代で結婚して、子供がいて……という環境だったら、おそらく出会っていなかった出来事。どれも、この人生だったからこそ出会ったもの。

受け取り方はそれぞれですけど、たとえ強がりや見栄であったとしても、“ひとりで生きると決めたんだ”というフレーズを支柱として、今の場所から見えるものを大切にしてほしいということを伝えたいなと思っています」

社会的役割を削ぎ落とした自分とは

今回のキーフレーズである“ひとりで生きる”という言葉。しかし、ふかわは本書の「おわりに」の中で「ひとりで生きていくことは不可能」だと書いている。

「たとえ自給自足生活を山奥で始めたとしても、どこかで社会の恩恵は受けているわけで、山林だって、どこかの管理下にあるわけで、知らないところで、必ず誰かが支えています」

では、ふかわが“決めた”、“ひとりで生きる”とはなんなのだろう。

「たとえば家族の中での父だったり、会社の中でのリーダーだったり、誰かとの関係性における自分を表す言葉って、いろんな場面であると思うんですね。でも、そういう関係性を削ぎ落としたときに自分がどう歩んでいるかが、“ひとりで生きる”ことなんじゃないかなと思います。

何者かになりたい人や、自分とは何かを探している人はいますけど、極論、それは見つからなくていいんですよね」

補足するように、知り合いの話を例に出した。

「僕の知り合いに、“ひとりで生きる自信がついたから”と結婚を決めた人がいました。それがすごく象徴してると思うんですよ。助け合うのはもちろんよいことだし、必要なことだけど、人との距離感や関係性に振り回されずに生きる感覚を持つことが大切なのかなって。

今は個人が尊重されるようになっていますから、将来的に、肩書があまり意味をなさない時代が来るんじゃないかなとも思っています。だからこそ、まわりを削ぎ落としたときの自分というものを見つめることが大事。自分の好きなことや、勘を大切にすることのほうが重要になってくる。それこそが“ひとりで生きる”ことなのかなと思います」

「10年で結果を出そうと思ったことはない」


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於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。

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