アーティストである以前に、ひとりの人間

――政治的・社会的な発言の有無も、海外のミュージシャンとの差になっていますよね。日本の芸能の世界では、そういった発言を避ける節もあると思います。一方でSKY-HIさんは自身の意見をしっかりと発信されていますが、BMSGに所属するアーティストはどんなスタンスを取る予定ですか。
SKY-HI 浮世離れしたものにはしたくないですね。どんなに人間離れした美しさや技術を持っていたとしても、人間として一緒に生きていきたいですから。人間として生きるということは、社会に属しながら生きることと同義。結果的に発言が社会や政治に触れることも、当然のことだと思っています。発言や行動は何事においても、止められるべきものではないですから。
――社会に属する一員である以上、身の回りの出来事に触れるのは当然のことってスタンスですね。
SKY-HI 「そういう発言を絶対にさせる」っていうのも、違うと思いますけど。「ラッパーだったら社会に文句言え」みたいな。そういったカテゴライズを、すべて排除したいだけなんです。

――アーティストとしてのスタンスは、歌詞に直結する部分でもありますよね。
SKY-HI 日本のパフォーミングアーティストの歌詞力の弱さは、日頃から痛感しています。言葉を選ばずに言うなら、「なんでこんな歌詞にしてしまったんだろうな、もったいないな」って思う曲がめちゃくちゃ多い。それは自分がなんとかしていきたいですね。
――日本のアイドルやダンス&ボーカルの歌詞って、依然として彼らや彼女らを偶像的に描くものが少なくないと思うんですけど、SKY-HIさんがプロデュースしていくアーティストはどのような歌詞を想定されていますか。
SKY-HI 少なくともアイドルやアーティストを、架空の存在であるかのように扱うことはないと思います。結果的に、彼らの意志や存在が見えるように感じることはあるかもしれません。ただ、現段階では「たぶんそうだと思います」としか言えないかな。

――それはなぜですか。
SKY-HI 実際にオーディションを経た結果、どういう思考のどういう人間かによってまったく変わってきてしまうから。彼らがメッセージや自主性を持てるような文化的・芸術的教養みたいなものはできる限り与えたいと思いますけど、俺が「メッセージを持て」と強要するべきことではない。
「SKY-HIに影響されてラップを始めた」みたいな子がいたとしたら、俺が言ったことはすべて正解に聞こえてしまうこともあるかもしれない。アーティスト兼社長の自分が、一番気を遣わないといけないのはそこかな。あまり軽々しく「メッセージやスタンスがないとダメ」とは言えないです。
自我がある子だったら尊重するし、ふわっとしている子でも向き合っていく。BMSGは大きな会社でもないので、そういうことにスタートの段階からひとりずつ向き合えますし、それがクオリティや数字、アイドルやアーティスト本人のメンタルの充実、といった結果につながっていったら、それぞれの個性を大切にできる時代が日本にも来るのかなと思っています。
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