『アンという名の少女』シーズン2<7話>『ジェイン・エア』を朗読するアン「荒野は待ち受ける、危険を顧みずに突き進む者たちを」



ジョセフィン叔母さんの恋人

ジョセフィン叔母さんのパーティーは素敵な自由さに満ちている。
世界的なピアニスト、セシル・シャミナードの演奏もある。
セシルは実在する人物だ。“経済的に自立した最初の女性作曲家”といわれている。
セシルに「音学家になるの?」と聞かれて「いいえ。趣味としてつづけられたらいいなと思ってます。結婚相手が許してくれれば」とダイアナは答える。
親のしつけと違う道を示されてダイアナは混乱してしまうのだ。
アンは、自由な雰囲気の中で、いつも以上に活き活きとしている。
ジョセフィン叔母さんとガートルードが恋人であることがわかると、ダイアナはショックを受け、アンは感動する。

ジョセフィン叔母さん自身も、気持ちを抑え込むようにしつけられていたと、コールに語る。だが、ガートルードに出会って、その影響で、感性豊かに、初めて自分らしさを出すことができるようになった、と。
「それは、まるで奇跡ですね」とコールはジョセフィン叔母さんの目を見て応える。

マリラは頭痛で苦しみながら、過去を思い出している。
兄のマイケルが死んで母が心痛で起きられなくなった過去を、マリラもマシューも思い出している。
ふたりは親からネグレクトされて育った姉弟だったのだ。

第7話は、アン、コール、ダイアナ、マリラ、マシューが、捕らわれていた過去の記憶にどう対処するかを描いた物語なのだ。
アンは、世界がとても広いことを実感して、自分の可能性について思いを馳せた。コールは、出会った芸術家のアドバイスどおりに粘土を試してみることにした。ダイアナは、親からしつけられた世界とは違う世界に直面して戸惑っている。
マリラとマシューは、アンと出会って自分たちの世界が変わったことを再認識した。アンが帰ってきて、パーティーの話を聞いたマリラは「気分がよくなってきた」と笑う。

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コールはジョセフィン叔母さんに救われる/Netflixシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中

可能性のペン

そして、もうひとりの未来が示唆される。ダンロップさんだ。
3話のレビューでこう書いた。

“ダンロップは、アンの優しさや快活さに心惹かれ、アヴォンリーの村を好きになった。アヴォンリーの村に残って、生まれ変わろうと望んでいたのだ。
直感を研ぎ澄ましても、アンもマシューもマリラも、その心の変化を捉えることはできなかった。「あのふたりは悪党だ」という大きな判断に、繊細な気持ちの変化は(その小さなしるしもいくつもあったのに)気づくことはできなかった。”

気持ちの変化は届かず、ダンロップは悪党の道から抜け出せないままに物語からフェイドアウトしていった。
レビューにはいくつかの反論のコメントがついた。
「ダンロップは根本が悪人だ」「改心していない」「やり直せない」といったものだ。
だが、『アンという名の少女』は、ダンロップさんを突き放したまま終わらせない。
第7話のラストシーン。コールは粘土を試み、アンは自分の可能性にワクワクしている。

そこでアンは、ダンロップさんの「詐欺師のペン」を持ち、「これより汝を可能性のペンと名づける」と言うのだ。
詐欺師のペンは、可能性のペンになった。
誰もが過去に縛られずにやり直せる世界であってほしいという祈りが響く素晴らしい回だった。

最後に、アンの朗読した『ジェイン・エア』の言葉を引用する。
「私は、今、世界がとても広いと気づいた。果てなき荒野には希望、不安、感動、興奮があふれているのだ。荒野は待ち受ける、危険を顧みずに突き進む者たちを。真の知識を追い求める勇気を持った者たちを」。

『アンという名の少女』シーズン2 予告編 - Netflix [HD]

『アンという名の少女』

原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット

キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)

Netflixシーズン1から3まで配信中

ジェットコースターみたいに感情の動きが激しいアン。Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中
シーズン2のアンは少し大人になった印象。Netflixシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中

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米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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