“映画館で観る”ということの意味──濱口竜介&三宅唱が語る<ミニシアターの未来>

2021.2.8


「映画の観方がわかりません」という観客の質問に

特別講義の後半の約20分は全国の劇場から質問を受けつけるQ&Aが展開された。その中には「映画の観方がわかりません。意味を考えてしまって感じ取ることができません。皆さんは映画を観ながらどんなことを考えているのですか?」といった問いかけも。

それに対して、「最近同じような質問を濱口さんにしたんですよ」と前置きをしながら三宅監督が答える。

「濱口さんに聞いて感心したのは、『撮影現場にいるかのように、グッと(スクリーンを)観てるんだ』と。さも自身の目の前で被写体を撮っているかのような、何が起こるかをずっと注視するかのような気持ちでスクリーンを見つめていると言っていて。
たとえばiPhoneで写真を撮るとき、ちょっと違うスイッチでグッと被写体を見ていますよね。それと同じようにスクリーンを観ることができれば、「うわ、瞬きした!」とか、「食べた!」とか、「今、気ゆるんだでしょ」とか動きに敏感になっていくのかなと思います」

「『ミツバチのささやき』を初めて観たとき、寝たんだけどすごくいいもんを観たなという気持ちになった」と話す濱口監督

映画館がカメラやマイクに近い状態にしてくれる

いよいよ特別講義も終わりに差しかかり、最後に「アートハウスのこれから」についてそれぞれ思い思いの言葉を口にした。

三浦 『ミツバチのささやき』の内容とも重なりますけど、映画は“イニシエーション”(=通過儀礼)の側面がありますよね。僕もジョン・フォードの『わが谷は緑なりき』をユーロスペースで観て、これがイニシエーションだってはっきり思った。映画館で観るからこそ、『ミツバチのささやき』のアナみたいな気持ちが起こることってあると思います。

三宅 生活の延長線上でいろいろな映画を観られるのが楽しいと思うんですよね。うちの親父なんかよく、ただお昼寝するためだけに映画館に行く生活があって。その親父のお気に入りの映画館は廃業されちゃって、今はどこで昼寝してるかわからないんですけど。土日というよりは平日に、こうやってふっと寄れる場所があるのはうれしいことだなと思います。

濱口 僕自身は映画を撮るにあたって、ひとつの夢として「カメラのように観て、マイクのように聴きたいもんだ」ってことを思ったりするんです。それは難しいんですけど、映画館っていうこの環境では、真っ暗闇にして椅子に固定される。そのときにほんの少しだけカメラとかマイクに近い状態にいけるように、自分がセッティングされているとすごく感じる。映画館とはまずもってそういう(ことが可能になる)場所だってことですね。
そして、そういった状態でないと受け止められない映画もあると思うんです。映画館で観るというだけで、カラダに深く残るものは絶対にあるので。この『現代アートハウス入門』と名づけられたものを皮切りに、日本のアートハウスシーンがもし盛り上がるんだったら、これから豊かな体験がどんどん生まれてくることになるんじゃないかなと期待しています。全国の劇場の皆さん、ありがとうございました。

東京都などへの緊急事態宣言の発令に伴い、当初の予定からタイムテーブルが繰り上げになり20時前に終演となった『現代アートハウス入門』第1夜。緊急事態宣言の延長により20時以降の上映ができない状態がつづくなど、適切な営業補償がないと苦しい時期に全国のミニシアター=アートハウスはまた突入している。

これからのアートハウスシーンの盛り上がりと、アートハウスで上映されゆくクラシック、ネオクラシック、現代の映画作家による新しい映画に期待をせずにはいられなかった一夜。カメラやマイクに限りなく近づいた状態で、映画をカラダ全体で感受する。そんな時間の豊かさを、いつまでも味わえる世界であってほしい。

『現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜』企画・運営:東風、企画協力:ユーロスペース


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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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