“映画館で観る”ということの意味──濱口竜介&三宅唱が語る<ミニシアターの未来>

2021.2.8

文=原 航平 編集=森田真規


「真っ暗闇の空間で、椅子に固定されるようにして座る。そのときにほんの少しだけ、カメラとかマイクに近い状態にいけるように自分がセッティングされているとすごく感じる。映画館というのは、まずもってそういう場所なんです」(濱口竜介)

2021年1月30日、映画上映イベント『現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜』の第1夜が開催された。このイベントは、<アートハウス>=ミニシアターの歴史を彩ってきた映画を7夜連続の日替わりで、渋谷のユーロスペースなど全国18館の劇場で上映する試みだ。

上映後には映画監督などが講師として作品に関するレクチャーを行い、地方の劇場にも中継・録画再生される。その第1夜には、講師として映画監督の濱口竜介と三宅唱、映画研究者の三浦哲哉が登壇。ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』(1973年)が上映されたのち、3人による60分の特別講義が行われた。ここではそのイベントレポートをお届けする。


クラシックとネオクラシックを研究する3人

ユーロスペースでは30歳以下を対象とした特別先行予約もあったことから、当日は20代と見受けられる多くの若い映画ファンが劇場へ足を運んだ「現代アートハウス入門」第1夜。

この日、上映される作品は1973年にスペインで製作された『ミツバチのささやき』。長編映画は3本しか撮っていない寡作でありながらも映画史に大きな名を刻んでいる巨匠ビクトル・エリセの、これが長編デビューとなる作品である。日本では次作の『エル・スール』と共に1985年にシネ・ヴィヴァン六本木(1999年閉館)で上映され、「記録的な動員数となり、当時のミニシアターを代表するような伝説的な作品となった」(洋画専門チャンネル『ザ・シネマ』、「今年の冬は、極上の時間とともに過ごそう。」より)という。

そんな『ミツバチのささやき』の上映が終わり、15分の休憩を挟んだのちに監督たちが登壇した。まずは映画研究者の三浦哲哉が「私たち3人は定期的に勉強会をやっているメンバーで、古典映画いわゆるクラシックとネオクラシックを一緒に研究する仲間なんです」と、3人がこのイベントに集った経緯を述べる。

theアートシアター vol.1 ビクトル・エリセ監督『ミツバチのささやき』予告編

エリセと共通する濱口監督と三宅監督の課題

「ビクトル・エリセが映画を撮り始めた1960年代にはすでにテレビが誕生し、映画産業、映画スタジオが以前の黄金時代のようには存続していなかった。エリセはそのことを強く意識し、“映画とは何か”を問い直しつづけ、クラシックの映画に比肩する映画をどのようにして作っていくかと考えつづける映画作家でした」

そのような問題意識を抱える映画製作の姿勢に、今回のイベント名にも入っている「ネオクラシック(新しい古典)」の起源がある。エリセが『ミツバチのささやき』を撮った時代の背景をそのように説明した三浦は、本日登壇したふたりとの共通項も見出す。

(写真左から)濱口竜介、三宅唱、三浦哲哉

「三宅さんと濱口さんの課題もおそらくエリセと少し共通しますよね。クラシックな映画の時代が終わったなかで、なおかつそれを愛して比肩するような作品を作るのは可能なのか、そう考えているところがあると思うんです」

時代は移り変わり、映画が作られる環境も、観られる環境も変わる。そこで「映画の新しさとはなんなのか」と問いつづけているのが、ビクトル・エリセや、現在の濱口監督、三宅監督なのだろう。

【連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」】予告篇

「アート映画を観て寝ちゃうことが多かった」(濱口)

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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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