“映画館で観る”ということの意味──濱口竜介&三宅唱が語る<ミニシアターの未来>

2021.2.8


「アート映画を観て寝ちゃうことが多かった」(濱口)

三宅 唱(みやけ・しょう)1984年、北海道出身。映画監督。主な監督作に『Playback』(2012年)、『THE COCKPIT』(2014年)、『きみの鳥はうたえる』(2018年)、Netflixオリジナルドラマ『呪怨:呪いの家』(2020年)、星野源「折り合い」MV(2020年)など

「ここからは、具体的にどうご覧になったのか、お聞きできれば」と感想を促された三宅監督は、「とりあえず今日、『ミツバチのささやき』をスクリーンでかけてくれてありがとうございます!」と感謝を述べながら、主人公・アナの目の素晴らしさに言及する。

「改めてこの映画のこと、そして核であるアナのことを言葉にすると、とにかく目がいいんだなと。この目を持った人を見つけてしまったのならば、その人物と心中する覚悟で一瞬たりとも目の動きを逃さないぞ、という思いのもと撮られていると思う。その緊張感がすごいですよね。今日はずっとアナの目を追いながら観ていました」

『ミツバチのささやき』 (c)2005 Video Mercury Films S.A.

『ミツバチのささやき』は、6歳の少女・アナを起点として描かれる。舞台は1940年ごろのスペイン・カスティーリャ地方にある小さな村。移動巡回映画の劇中で「フランケンシュタイン」を観たアナは、姉・イサベルに言われるがままにそれを「精霊」だと信じ込み、その精霊が住んでいるという村外れの廃屋に惹きつけられていく。映画の持つ虚構性が少女の生活と混淆していく様子を、アナの目や動きを通して雄弁に語りかけてくる作品。

つづく濱口監督は「『現代アートハウス入門』ということで、ちょっとだけ自分の思い出話もすると」と切り出し、自身の映画製作へもたらした影響についても話す。

「まさに映画を観始めた大学生のころに、入門編として『ミツバチのささやき』とか『エル・スール』を観ました。しかし、今日も同類がいるはずなんですが、寝たんですよね。
それから何度か観て好きになっていく過程があって、サークルで8mmの映画を作ったときに引用したこともあったんですよ。今日改めて観ていて、自分がそういうことをやりたくなった気持ちがわかった。虚実の区別がつかないアナの姿が全身で表現されている感じがあって、僕自身もそういう映画を作りたくなったんだろうなと」

濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)1978年、神奈川県出身。映画監督。主な監督作に『親密さ』(2012年)、『ハッピーアワー』(2015年)、『寝ても覚めても』(2018年)など。村上春樹原作の最新作『ドライブ・マイ・カー』が2021年夏に公開予定

さらに濱口監督が回顧するのは、「最初は拒絶されている感覚があった」というアート映画との関わりについて。

「最初はアート映画を観て寝ちゃう、何がいいのかわからないっていう体験がけっこうありました。でも『ミツバチのささやき』は何か自分を受け入れてくれてる、より退屈な映画へと導いてくれる感じがあったんですよね。
それがなんでだったんだろうと思って今日改めて観たら、この映画はセリフが少なくてすごく静謐だけど、音楽は多いんだなと気づいたんですよ。牧歌的な音楽であったり、不穏な音楽であったり。だから、起きている出来事(の意味するもの)が定義されているわけではないけれども観ていられるし、そういうふうに観ていいんだよって言われているような気持ちになる。その体験のおかげで、今まで退屈だと思っていたものが徐々に観られるようになってきて、感覚が開き始めました」

濱口竜介監督作/映画『寝ても覚めても』90秒予告

“沈黙”は映画館じゃないと味わえない


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原航平

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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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