エンタテインメントの世界での引退、卒業は「リアルタイムで見ること、会うことはもうできない」という意味合いで使われる。しかし、VTuber出雲霞は違った。そもそも「VTuberが卒業する」ってどういうこと? 生身ではない存在が引退するって? VTuber世界を探求するライター・たまごまごが「出雲霞の卒業」を考察する。
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卒業しなければ演目が完結しない
VTuberの引退・卒業はどちらかというと寂しい出来事として語られることが多い。新しい道に進むため。仕事や進学や家庭などで活動が難しくなったため。契約上の問題などなど。リアル側の事情が主だ。そしてVTuberは引退理由を明かさないことが多い。バーチャルではリアルの話をする必要はないし、場合によっては身バレの危険もあるからだ。
10月31日、バーチャルライバープロジェクト「にじさんじ」のVTuber出雲霞が卒業を発表した。彼女が卒業した理由は「物語を終わらせるため」だった。
出雲霞は他の「にじさんじ」のバーチャルライバー同様、アバターをまとって配信を行うスタイルを踏襲していた。しかし彼女は「アバター=自身」を軸とした配信者スタイルとは異なり、活動の根本が「物語づくり」の上に成り立っていた。人形浄瑠璃で言えば、画面に登場して動く「出雲霞」はストーリーを見せる人形キャラクターであり、創作者「出雲霞」は演出家、動かす黒子、かつ脚本家。そのためまったく画面上には出てこない。自身で自身の物語をプロデュースしていた。
だから卒業しなければ演目が完結しない、という考えだったようだ。チャンネル登録者は10万人以上。配信者として理由をつけて継続していくこと自体はいくらでもできたであろう。しかし何よりもキャラクター「出雲霞」を愛したクリエイター「出雲霞」は、引き伸ばすことを選ばず終わりを選択した。
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