VTuber出雲霞の「卒業」を考察。「出雲霞」を愛した「出雲霞」は、引き伸ばすことを選ばなかった

2020.11.8

出雲霞とは何者か

2018年にデビューしてから今まで、長い活動の中でずっと「出雲霞」という少女を軸にした物語は進行していた。そのため話はとても複雑で、描かれている出来事の分量は膨大だ。時にはゲーム実況や雑談など一般的なVTuber配信も多々あるが、それらの中にも物語上の「出雲霞」というキャラクターの生活状況が混ぜ込まれているため、アーカイブすべてが「出雲霞の人生の再現」ですらある。

Report.1

序盤のおおまかな部分だけざっくり紹介していきたい。いつも眠そうなぼんやりした中学生の少女・出雲霞。デビュー時は5人のイマジナリーフレンドを持っているとほのめかしていた。次第に同じ中学生の友人、卯月コウ・鈴木勝(通称・OD組)とのやりとりの中で、彼女の存在に違和感が生じてくる。

【おなえどしコラボ】OD組の夏休み【 #SEEDs24h 】
出雲霞について【総集編#1】

VTuberとして活動しているバーチャル空間(実際に視聴者が観ている配信画面)では3人は幼い中学生だ。しかし本体の3人は18歳だという。なかでも本体の出雲霞は昏睡状態にあり、バーチャル(視聴者が観ている配信画面内)で動いている彼女は人間ではなくAIであることが判明。自我が揺らぎ、悩む彼女。出雲霞の5つの内なる人格は、昏睡している本体とは別に動く5つのAIとして並行して存在することになった。

事実が明かされたり問題が起こるたびに、出雲霞は配信で視聴者と対話を重ねた。視聴者はそれにコメントで口々に意見を述べた。その意見の一部は物語に反映されていく。こうして視聴者は、物語の共犯者になっていく。時に、視聴者と出雲霞が話し合って納得した結果は、意図せず誰かを仮想的にひどく傷つけることすらも起きてしまう。

たとえば存在するAIのひとりが自分を模索するために、しゃべり方を変えたことがあった。これに対しVTuberを観つづけてきた一部の視聴者は「元のほうがよかったな」という発言をなんの気もなしに文字にした。後日、そのAIの苦悩が明かされる。「声」が変わっても人格は「私」のままなのに失望されるなら、自分はいったいなんなのか? 出雲霞の物語内における、AIの心、存在意義問題の地雷をもろに踏んでいたのだ。

応援していたVTuberを傷つけたトラウマを、身を持って味わう体験。この手のひらの上で転がすような手腕は、相手の印象に鋭く刺さる表現手法としてファンに衝撃を与えた(なおこのやりとりを物語化した経緯についての種明かしは、卒業前配信で語られている)。

Postlude.F【出雲霞/にじさんじ】

これらの視聴者を巻き込んで物語が進行していくタイプの配信を「劇場型配信」と呼ぶことがある。この手法だと生きた人物としてキャラクターが動けるので、「IF」を生々しく表現することも可能になる。たとえばエイプリルフールのとき、「嘘」を出雲霞は2度提示している。何もかもだめだったときのIFと、何もかもうまくいっていたときのIFの話。リアルタイムで動いている状態と比較で見せられると、あり得なかった世界線へのモヤモヤは半端じゃない。物語を掘り下げるのにもってこいなタイミングとなったのも、リアルタイム進行ならではだ。

Outro.C
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出雲霞配信の構造(解釈例)作表/たまごまご
出雲霞配信の構造(解釈例)作表/たまごまご

未来に向けて動き始める物語


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