視聴者との共犯創作スタイル
出雲霞は「キャラクター」の語を大事にしていた。活動中はいわゆる「本人の人格」のアバターと「キャラクター」の中間的扱い。そのためある程度の「半ナマモノ」としての線引きはあった(例・二次創作で恋愛ものは見えないところでやってほしい、など)。しかし、これからはまったく変わることを説明している。
「これからはある種、みなさんの中からは消えないけどみなさんの前からは消えるので、好きなようにしてもらえればなと思います」「出雲霞はこれからはナマモノではなくて、完全にアニメとかのキャラクターと同じ扱いになります」
『p.s.出雲霞を愛する人たちへ』
卒業後、受け取り手はキャラクターを「コンテンツ」として自由気ままに手に取り、遊ぶことができる。「本人またはアクターがいる」「メタ的な話はできない」という気兼ねが一切いらなくなることで、物語のキャラクターとして純化された。
「私、のらきゃっとさんの大ファンなんです」「VTuberをしている方とVTuberを手法として使って創作なさっている方がいらっしゃる。VTuberで「本当にその子が存在しているんだ」ってわかる方がすごく好きです」
『Vティーク vol.4』「にじさんじクリエイターズディスカッション」
卒業することで完結したVTuberは出雲霞が初なわけではない。カフェ野ゾンビ子や薬袋カルテなどは、創作表現のためにVTuber形式を選択し、しっかり完結させたのち、活動を停止している。
出雲霞に影響を受けたことを明言するVTuberのひとりに、「にじさんじ」黛灰がいる。物語をベースにしつつ普段はエンタメ。突然物語の本筋が飛び込んでくることもあるし、のちのち意外な伏線として過去の普通の配信の一部が回収されることもある。視聴者とライバーたちを巻き込んだ物語の演出はとても凝っており、VTuberという存在の意義についても踏み込んでいるため、業界での注目度はかなり高い。
視聴者との距離が極端に近いVTuberは、ディープに巻き込んでいく共犯創作スタイルが生まれやすい。出雲霞のようにVTuberという無限の可能性を秘めた体験型メディアが育っていることを知ってもらえれば、演劇や映画などにも大きな自由度が広がるはずだ。
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