質問「個人でVTuber活動を始めました、収入を得る方法を教えてください」YouTubeの収益化など、9つの収入源を解説します

2022.3.12
Vtuber7

VTuberのご意見番・たまごまごの連載第7回のテーマは「収入源」。「稼げる」という文脈でVTuberの活動を耳にすることも増えているけど、YouTube(やそれ以外の方法)で収益を上げるにはどうすればいいのか、今さら聞きにくいような初歩の知識からじっくりしっかり9つの収入源について解説します。

一攫千金ドリームも不可能ではないが

「VTuberは稼げる」なんて話が2018年くらいからちらほら出ていた。実際「YouTubeスーパーチャット(投げ銭)世界ランキング」にVTuberが何人も入るなど、お金の動きは目立ちつつある。

ただ、これはごく一部の話だ。VTuberで一攫千金ドリーム、というのは不可能ではないが、企業所属・個人共に相当な計画性と活動量と運が求められる。けっして濡れ手に粟な状況ではない。

今回は現実的な話として「個人でVTuberとして表現活動を始めて、ちょっと収入も得たい」という人にどういう収入源があるのか、わかりやすいところをピックアップしてみた。このほかにもやり方はいくらでもあるので、あくまでも一例として見てほしい。

1.YouTubeからの収入

YouTubeでは何通りか動画掲載者にお金が入る仕組みがある。特に収入のシステムが大幅に変化したここ数年は、ちょうどVTuberの興隆の時期とマッチし、追い風になった。

スーパーチャット

リスナー側が金額を設定してお金を払うと、金額に応じた色のチャットをコメントで送ることができる投げ銭機能、スーパーチャット(通称スパチャ)。上限が決まっており、1配信につき上限は5万円まで。PCからであれば最低100円から1円単位で指定して送ることもできる。

ほとんどの場合、VTuberの収入の話題として上がるのがこれだ。名前と金額がチャット欄に明示されるため、配信に対してのおひねりやお祝い、活動全体の応援の気持ちを表す意味で使われることが多い。配信者によっては名前を読んでくれることもあるので、コミュニケーション的な楽しさも生まれる。動画でも「プレミア公開」機能が追加されたことで、初回のリアルタイム再生時にのみスパチャできるようになった。

なおスパチャした視聴者にリターンはあるのかというと、ぶっちゃけほぼない。完全に応援・おひねりだ。「いいものを作る人の、次の資金にしてほしい」というエールの意味も強い。

支援する余裕のある人がVTuberファンには増えてきたとはいえ、大人の1000円と若い人の1000円では重みが違う。子供や学生たちの感覚を麻痺させないために「払うべき、というものではけっしてない」「観てくれるだけでうれしい、余裕があって送ってくれる方には本当に感謝している」と頻繁に周知しているVTuberもいる。

「【ポルカの伝説】>キャンプに行くはずがバンジーをしていた」凝った企画動画を行っている尾丸ポルカのバラエティ番組では、スパチャしてくれた人のクレジットがラストに流れる。サーカス団長の彼女の企画に参加している感があってとても楽しい

盛り上がりにはもってこいの機能だが、あくまでも視聴者の気分次第なので、収入としては安定はしない。特に扱う題材の権利の問題で、急に収益化できなくなることも多々ある。後述する収益化条件の問題もあり、「デビューしてすぐスパチャ収入での生活を狙う」という考え方は現実的ではない。

広告収入

広告収入は比較的安定した収入として、動画主体のYouTuberがよく使っている手段だ。VTuberは現在はストリーマー型で配信主体の人が多いが、音楽動画や知識解説動画をはじめとした動画制作中心の人もかなり積極的に活動しており、ストリーマーでも動画制作や切り抜きまとめをしている人もいる。

一度アップすれば観てもらえるたびにお金が手に入る便利さもあり、アーカイブ蓄積ありきの大きな収入源のひとつだ。お金を払えない学生たちでも、観ることで推しに貢献できるというのも大きい。

なおセンシティブなコンテンツや暴力的内容などが含まれているとYouTubeが判定した場合は、その動画の収益化自体があとからNGになることがある。これがAIによる判定なので、人間の感覚だと線引きがものすごくわかりづらい。全然センシティブじゃなくても引っかかることもあるため、たとえば肌面積が多いように見える映像は避けるとか、ひっかかりそうな文字を画面に出さない(「殺」など)などいろいろ工夫が必要なのが現状だ。

VTuberの場合はさらにアバター固定である関係上、スパム的(「繰り返しの多いコンテンツ」扱い)な判定をされることもあるため、動画作成や配信に慎重な人は多い。

とはいえ再生数と関係することもあり、広告収入は作品作りのモチベーション維持につながる部分だ。今後も作品作りに注力するYouTuber・VTuberの主収入になりつづけそうだ。

Super Thanks機能

最近追加されたSuper Thanks機能は、すでに公開された動画に対して、視聴者が拍手としてあとから投げ銭できるというもの。動画メインのVTuber・YouTuberにとってかなりの朗報だ。設定すると評価ボタンのあたりにひとつボタンが追加され、そこからおひねりを投げることができる。

まだまだフル活用されている段階ではないが、特にオリジナル動画作品を作っているクリエイターには活用しやすくなってほしい機能だ。

YouTubeショート

「YouTubeショート」はVTuberにぴったりな機能のひとつ。要はTikTokのような1分以内の短い動画で、「#shorts」とつけてアップすることで「YouTubeショートファンド」からある程度報酬金の分配を得ることができるというもの。スマホサイズの縦動画が中心なので、縦長になりやすいVTuber撮影との親和性は抜群だ。

「Q.血液型がA.BときてC型じゃなくO型なのはどうして?笑っちゃう理由が!【#子豚相談室/にじさんじ郡道美玲】 #Shorts」凝った編集の、1分以内でわかる豆知識動画。先生らしさが伝わってくる

「気軽に見られる」「人に勧めやすい」「TikTok的にザッピングで流れてくる」「ツイッターなどで宣伝しやすい」「一芸などの自己PR向き」「動画・音楽作品のティザーに使える」など利点が多く、使い始めている人は増えつづけている。収入の有無に関わらず、これからデビューするVTuberにとってもセルフプロデュースの一環として、利用しやすいサービスだ。

メンバーシップ

YouTubeのメンバーシップ機能は、いわばファンクラブのようなもの。いったん登録したら毎月一定額が支払われるので、収益としては安定感が高め。メンバー登録するとチャットでの文字色が変わったり、バッジがついたり、オリジナルの絵文字が使えたり、メンバーシップ限定のコンテンツを見ることができたりと、かなりお得感がある。公式にファンネームがつけられることが多めなVTuberの場合、ファンクラスタへの所属意識が持てるのも魅力。

人によるが、メンバーシップ限定配信を行ったり、限定のコンテンツをダウンロードできるよう提供したり、日記的なものを公開したりと、コアなファン向けのサービスができるのも特徴。

ただ配信コメントがメンバーだらけだと内輪受け感が出て、新規で観にきた人が疎外感を感じてしまう、というデメリットもある。ここは使い分け方に、VTuberとしてのスタンスが出る部分だ。

YouTubeでの収益の難しさ

YouTubeでの収入がYouTuber・VTuber文化を育ててきたのは事実だが、いかんせん使えるようになるまでが大変だ。チャンネル収益化をYouTubeに審査してもらわないといけない。2022年現在だと、チャンネル管理者が18歳以上、チャンネル登録者数は1000人以上、公開動画の総再生時間が直近1年で4000時間以上などの条件がある。

1000人登録、再生時間4000の壁は、個人で活動している場合はとてつもなく分厚い。趣味でマイペースにやっていくスタイルだとしたら、よほどバズらない限りYouTubeからの収益は見込めない。

ここで出てくるのが「早く収益化が通るくらい人気を出していきたい」か「表現活動メインにしたいので収益は別で考える」かの選択だ。

無収入でもいい趣味の範疇、という場合の活動も多いが、金銭をわずかでももらえること自体はモチベーションに大きく関わってくる。たとえば作家が即売会で同人誌を頒布したとき、たとえトータル赤字でもいくらか売れて収入があったら「自分の表現活動に価値を見出してくれた人がいる」という励みを得て次もがんばろうとなるのと同じだ。

そこで、YouTube以外の収入源を探すのも、活動の候補になってくる。

2.プラットホームごとのギフト・投げ銭機能

VTuberといってもYouTubeだけで活動をしているわけではない。ツイキャス、Twitch、SHOWROOM、IRIAM、17LIVE、REALITY、Mildomなど多様なプラットホームがある。

それぞれのプラットホームには、独自ルールの投げ銭機能がある場合がある。ツイキャスであればアイテムのプレゼント、SHOWROOMであればギフト機能などだ。収益化の条件や収益割合はそれぞれ異なっているが、無理にYouTubeの収益化だけを目指すのではなく、いくつかの場所で配信することで、収益を得たり視聴者層を広めるのも活動戦略のひとつだ。

複数にまたがる活動の場合、軸足になるプラットホームを設定した上で、アーカイブが残るところを併用する、というVTuberが多い。たとえばSHOWROOMの場合だと、YouTubeと違ってアーカイブが残らない。その場合配信はSHOWROOM、しっかり残したい映像は別途YouTube投稿、という活動パターンを取るVTuberもいる。

3.pixivファンボックス、Fantiaなどの会員サービス

「おまけでもう少しコンテンツを見せますよ」という意味合いで気軽に作れるのが、pixivファンボックスやFantiaなどの会員型サービス。月々の料金を設定して、登録すれば会員用コンテンツが見られる、というサービスだ。

YouTubeとは一切連携していない別個のものなので、収入源として安定度が高い。VTuber側は作りやすい上に、見る側も「コンテンツが見たいからこの月だけ入る」と一歩踏み出しやすい(外部から見て出入りがわからない)ので、参加ハードルが極めて低い。金額コースを分けて、高いコースだと特別にこれも見せます、というサービスの差もつけることができる。

無料公開記事を作ることができるので、ホームページを持っていない人が情報発表する場としても便利。作品の進捗やラフデザイン、裏話や落書きやサムネイル画像や壁紙、編集動画のノーカット版など、バーチャルクリエイターとして活動したい人にはかなり親和性が高いサービスだ。

4.BOOTHでの作品販売

クリエイターが何かを制作・頒布する際便利なのがBOOTHというサービスだ。音楽CDや本のような表現作品や、アクリルスタンドやタペストリーのような自身のグッズを販売できる。インターネットを主体に活動するVTuberの場合、物品もデジタル商品もすべてオンラインのやりとりで完結できるBOOTHは強力な味方だ。

特に多いのは音楽VTuberのオリジナル曲のダウンロード販売だ。1曲単位からアルバム単位まで、CDプレスせずに販売できる。音声作品だとシチュエーションボイスや声劇やASMR音声等の販売もある。

またアバター販売も盛んに行われている。VRChatで開催されている「バーチャルマーケット」の出展者は、BOOTHを活用している人が多い。

BOOTHには「ブースト」機能がある。購入した際に上乗せしてさらにお金を払えるシステムだ。支援の意味でおひねりを投げてもらえる、かなりクリエイターにとってありがたい構造だ。

クリエイターVTuberの中には、作品販売が主収入の人もいる。YouTubeでの活動の収入はあまり考えず、あくまでもアーティストとしての自分たちを知ってもらう宣伝、という感覚かもしれない。そういう場合にBOOTHのような販売サービスは、販売の手間暇の削減という意味でも頼もしい存在になる。

5.音楽のサブスクライブ配信

オリジナル曲を発表しているVTuberの中には、サブスクライブで曲を流している人もいる。無料で誰でも、音質のいい環境で聴いてもらえる、というのはかなり魅力的。聴いてもらえばもらうほど、お金も入ってくる。何よりSpotifyなどだと人に勧めやすい。

BOOTHでのデジタル販売、プレスCDでの販売と並行してサブスクライブをやっているVTuberが多い印象だ。すでにサブスクライブで聞けるVTuberの曲は、ものすごい量になっているので探してみてほしい。

6.note

YouTubeでのコンテンツ以外のものを準備するのが必須になるが、noteを活用しているVTuberもいる。ブログだったり、単体記事だったりを販売するスタイルだ。配信とは別にひと手間かかるが、キャラクター性のあるバーチャルな存在が書く雑記テキストは、動画にはない魅力がある。

7.スキル販売サービス

SKIMA、ココナラ、Skebなどのサービスでは、自身のスキルを販売することができる。VTuberで多いのは、Live2Dモデル製作や3Dモデル製作の請け負いや、自作モデルの販売、アバターのデザイン、音楽制作、イラスト提供、テキスト執筆などだ。

アバター制作やイラスト依頼は、DMで製作者とやりとりをして直接契約をすることもある。しかし個人間だと連絡が途絶えるなどのトラブルは少なからずあり、売る側買う側共にハイリスク。そのため、適切な打ち合わせと金銭のやりとりができ、ちゃんと記録も残るこれらのサービスは使うだけの価値がある。

VTuberとして自分の実力を見せた上でそのスキルを販売できる、という流れが文化として広がりつつある。また、これからVTuberを始めたい人がどうやってアバター制作依頼をすればいいかわからないときなどにも使える、便利なサービスだ。

8.Amazonほしい物リスト

Amazonほしい物リストを公開するのは、支援を受ける手っ取り早い方法だ。リスナーの善意でほしい物を「買ってもらう」というスタイルは、即座に誰でもできるのが強み。視聴者側も本人が本当にほしい物を送れるので、支援している手応えを感じやすい。ただしちゃんと設定しないと、VTuber側の個人情報が漏れてしまうこともあるので要注意。

9.企業からの案件

インフルエンサーとして認められつつあるVTuberには、かなりいろいろなジャンルの企業PR案件が持ち込まれる。これを引き受けて企業からお金をもらえるとなると、仕事として実績にもなってとてもおいしい。ゲームやサービス等のPR以外にも、講師の依頼や、企業とのコラボ配信を行うことも少なくない。

「【講義】カネ・自由度・継続性から見る兼業個人勢VTuberのすゝめ」滋慶学園COMグループの提供で、個人VTuberあくまのゴートが講師を務めて、VTuber現場の実情や活動の仕方を具体的に紹介している。この提供講義はいろいろな個人VTuberが行っていて、確実に役立つものばかりだ

VTuberだからこそのひねったおもしろさでPRできるのも強みだ。現在では個人VTuberでも案件が回ってくることは増えつつある。

そのほかにも、YouTubeで使用OKになっている外部ドネーションサービスなども存在しているが、日本のVTuberの間ではそこまで普及はしていない。また音声やゲームに強いDLsiteなどのデジタル販売サービスで作品を発表しているVTuberもいる。どのサイトのほうが自分の作品ジャンルに向いているかで、BOOTHなどと使い分けできる便利な環境が整ってきた。

「形がなくても価値があると感じたものにお金を払う」という文化が広く浸透しつつあり、それによって収入を得るシステムが増えている今のネット環境は、かなり恵まれているほうだ。今後は特にVRChatのようなメタバース上での経済圏の可能性も生まれている。VTuberというエンターテイナー業以外で、他のバーチャルな新しい職業で稼いでいけるようになるのも、夢ではなさそうだ。

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