VTuberは音楽活動と親和性が高く、最近は定額料金のサブスクリプションサービスで音楽を配信しているVTuberも多い。積極的にサブスクを活用しているおすすめVTuberをライターたまごまごが紹介し、その利点を考察する。
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サブスクとVTuberは合う
Apple MusicやSpotifyやGoogle Play Musicなど、定額で音楽が聴き放題になるサブスクリプションサービス。月額1000円程度で登録されている曲が聴き放題。Spotifyに至っては機能制限はあるものの無料で利用できる。「興味はあっても買うまではいかない」「新規開拓したいけどお金がかかる」というユーザー層と、「CDを出すほど曲はないけど売り込みたい」アーティスト層どちらにとってもwin-winなサービスだ。
まだ始まって3年くらいしか経っていないのに一気に膨れ上がったVTuber音楽は、サブスクリプションサービスとものすごく相性がいい。ジャンル分けの問題を考えなくていいからだ。
CDショップでカテゴリ分けが必要な場合、VTuberをどこに並べるかはかなり難しい。「J-ROCK」などのようにVTuberであることを無視して、音楽の質で分類するのがひとつ。もうひとつは「VTuber」というジャンルの棚を作る方法。このどっちにもならず、ジャケットの見た目の雰囲気でアニメ・ボカロ・声優などの棚に並ぶことも多い。分類が曖昧だと、客がCDを見つけられず購買意欲を損ないかねない。
ちなみにiTunesの販売ランキングは、VTuber音楽はほとんどが「エレクトロニック」、稀に「オルタナティブ」「ジャズ」などのように音楽性で分類されて、人間アーティストと共に並べられている。
しかしサブスクリプションサービスだと、ジャンル分けはぼんやりしていて、ないに等しい。「聴いている人のお気に入り」「関連アーティスト」程度のゆるいつながりで、VTuberも人間も同等に画面に出てくる。これによって「音楽活動の方向性」と「VTuber音楽」であること、双方のジャンルを包含できる。
あるVTuberはpixivのように「J-ROCK」「VTuber」「明るい曲」「元気を出したいときに聞く」のようなタグが増えつづけていくような状態になってくれれば、分類されないので自由に表現しやすいのではないか、と述べていた。
今回はサブスクの中で一般ミュージシャンと肩を並べているVTuberミュージシャンから、おすすめの10組を紹介していきたい。
Nowhere-終末少女-〜儚い少女のヒップホップ
目が覚めたとき名前を忘れ、寂しい廃墟の中にいた少女。マザーコンピューターから流れてきたヒップホップミュージックを聴いて音楽を始める…というストーリー性の強いVTuber、Nowhere(ノウェア)。「自分が伝えたいことをしゃべる」というスタイルでラップを始めた、という彼女の考え方もおもしろい。今すぐにでも消え入りそうな声で囁く、壊れていきかねない破滅的なリリックにファンは多い。
キツネDJ/DJ FOX〜ダンサブルでキツネなにくいやつ
サムライ風の姿にヘッドフォン、EDMやヒップホップをはじめ、多様なジャンルの曲をミクスチャースタイルで数多く発表しているキツネDJ。オリジナル楽曲でiTunesランキング1位を取ったこともある。英語が堪能で、海外向けの音楽を強く意識しているのも特徴のひとつ。
名前のとおりDJとしての活動を配信で頻繁に行っている。現在は17曲入りのベストアルバムCDをオリジナルレーベルから発売中。まずはサブスクサービスでぜひ曲を聞いてみてほしい。
七草くりむ〜メルヘンでゴシックなトラックメーカー女子中学生
かわいらしい顔でゴリゴリのテクノ・ハウス・EDMを次々生み出す、バーチャル女子中学生トラックメーカー。音楽ジャンルも多岐にわたり、Lo-Fi Ambient、Future Bass、Chill Out、 Schranzと自由自在。
中でも興味深いのは「ASMR House」というオリジナルジャンル。囁きのような声をサンプリングしてダンスミュージックにしたもので、現在のオタク文化圏の「KAWAII」感覚を独自の目線で切ったユニークな作品になっている。サブスクで聴くなら、活動の多彩さが丸ごと詰まっているアルバム『Perspective』がおすすめ。「BOOTH」では2枚目のアルバムや、メルヘンとゴシックとバーチャルを取り混ぜた「Portfolio」シリーズも発売されている。
KMNZ〜見た目はキュート、歌は本格的
ケモミミのバーチャルガールズデュオ、KMNZ(ケモノズ)。キュートなビジュアルと、わちゃわちゃしたトーク、あらゆる曲を歌いこなす確かな歌唱力で人気を誇るふたり組だ。ストリート系のヒップホップとHOUSEを軸に、ちょっとけだるげでかっこいい声のLITA、ハイテンションでかわいらしい声のLIZの歌が絡まり合うスタイルは、ビジュアルのあるVTuberだからこそ何倍にも魅力が膨れ上がる。歌詞にはバーチャル世界での楽しい未来を期待するポジティブなものもあり、聴いていて気持ちが晴れやかになるバーチャルアーティストだ。
レオタードブタとヤギ・ハイレグ〜DOPEなブタとヤギ野郎
昨年の「ゆるキャラグランプリ(企業・その他部門)」でグランプリを獲得した『ピーナッツくん!オシャレになりたい!』のショートアニメから派生した、音楽ユニットのレオタードブタとヤギ・ハイレグ。ゆるくてかわいらしい見た目に反して、音はかなりヘビー。トラップミュージック型のハードコア・ヒップホップに攻撃的な歌詞を乗せている。聴く人を選ぶタイプの楽曲を、ブタとヤギのVTuberを一枚噛ませたことで、かなり取っつきやすくしている好例。配信サイトではEP『粗密-SOMITSU-』や『ODIN』を聴くことができる。レオタードブタはKMNZとのコラボで話題を呼んだ。
6月30日には本家のピーナッツくんも初のオリジナルアルバムをリリースしている。こちらもレオタードブタとヤギ・ハイレグ同様ハードコア・ヒップホップの文法に則りながら、ショートアニメに登場する面々のキャラクター性を練り込んだものになっている。