電気グルーヴに深く刻まれた哲学「君が捨てている部分が一番大事なところ」【Roots of 電気グルーヴ#6:Pop Will Eat Itself】



無駄こそ無駄じゃない

石野 あと、俺すっごい覚えてるのは、まだ小滝橋通りにあったころの新宿ロフトで電気のライブが終わってから、歌舞伎町方面に打ち上げに行こうっていって歩いてくときに──当時、椎名(基樹)も出てたんだよね。当時のメンバーだった椎名ね。そいつがタクシーのうしろに捕まって、「モーモーチキチキ モーモーチキチキ」って言ってたのがすごいおもしろくて腹を抱えて笑ったの覚えてる。

 ははは(笑)!

石野 「Can U Dig It?」のアルバムバージョンの後半で、1回曲が終わったかな?と思うところで、「ジャーン ドンドンテントテントテン ♪モーモーチキチキ モーモーチキチキ モーモーチキチキモー ヘイ!」ってね。しかもあれ、ヘッドホンで聴くとこっち(左)側だけで鳴ってるの。それで曲が終わってくっていう。

 そういうのってさ、すっげえ深いとこに刻まれてんだなって今思った(笑)。

石野 ちなみに、そのあとに「モンキーに警告」(※32)が生まれたんですよ。ウチら、そのあとに(ゴダイゴの)「モンキー・マジック」を歌い始めたんだよ。

 「♪モンキーでモンキーでモンキーで」ってやつね。

石野 で、「モンキーに警告」っていうのが生まれたんですよ。

 ああ、そっか。

石野 今、ここだけで噛み締めてるよね。

 そうだな。すべては無駄じゃないっていうこと。

石野 いや、ほんとほんと。無駄こそ無駄じゃないっていうね。「君が捨ててる部分が一番大事なとこ!」っていうさ。昔、人生に「王選手」っていうメンバーがいたんですけど、彼の好きな食べ物は「魚の骨」っていう(笑)。

 あと「皮」。

石野 趣味、知ってる? 「ジャンプすること」(笑)。

 あと、お腹が空いたときに──。

石野 みんなで打ち合わせしてたときに、誰かが「買い出し行くから、なんかいる?」っつったときに──。

 「俺おにぎり、俺サンドイッチ」ってね。それで、「あっちゃん(王選手)は?」って聞いたら──。

石野 「う〜ん……腹に溜まるものがいいな。俺ガム」って(笑)。「え〜、なんで!?」って聞いたら、「噛んで咀嚼すると満腹中枢が刺激されるから」っつって。「なるほど〜!」って。

 「内部の観点から!?」っていうね(笑)。

石野 お腹をふくらましたいから腹に溜まるものを、っていうんじゃないっていうね。

 なぜお腹に溜まるものを食べたいのかに立ち返って、そこさえやっつければいいんだっていう(笑)。そのための「ガム」っていう(笑)。

石野 「君がゴミだと思ってるものは捨てないほうがいい」っていう。これを全部信じてると、ろくなやつにならないっていう(笑)。「ガム」は最高だよな(笑)。本気だからね。

 ウチらは未だに擦ってるんだもんな。

石野 あと、あっちゃんの殺されかけた話(笑)。井の頭公園の横のアパートに住んでたんだけど──。

 ほんとに公園のすぐ脇なんだよね。

石野 ある日、あっちゃんが人生の打ち合わせでウチに来たときに「いや〜、昨日」──ちょっと(しゃべり方が)小室チックなんですよね──「いや〜、昨日井の頭公園で発声練習をしてたら、武闘家みたいな髪の毛を結んだ人が来て、『これ以上ここで変な声を出したら叩き斬るぞ!』って日本刀を持って来られたんだよね」って(笑)。

 あっちゃんが劇団とかをやってたから、発声練習をしなきゃいけないと。で、「ちょうど井の頭公園の脇に住んでるんだから、これはいい。公園に行けば、トランペット吹いてる人とかと同じような感じで合法だ」と。それで「!〜&%*%$#」って声を出すのを夜中にやってたらしくて、それを聞いた人がもう耐えかねて(笑)。日本刀を持って来たんだから、よっぽどなんだろうけど(笑)。

石野 日本刀を持つことが許されてるぐらい、「できてる」人でしょ。

 銃刀法のもとでちゃんと管理してる人だもんね。

石野 その人が「叩き斬る!」って言うんだから、相当だぜ(笑)。袴を着て髪を束ねてたっていうんだけど──。

 よっぽどの覚悟で来たんだろうね(笑)。

石野 あっちゃんと初めて会ったのは「劇団健康」(※33)の稽古場だったんだけど、壁に頭を打ちつけてる奴がいたんだよね。ガンガン!って。おそるおそる「何やってるの?」って聞いたら、「頭を鍛えてる」っつって(笑)。

 (声まねをして)「あ〜、これはね、頭をね、鍛えてるんだよ」って(笑)。

石野 すごかったな。あと、ハイエースで人生の東名阪の4泊くらいのツアーに行ったときあったじゃん。そのとき11月ぐらいだったんだけど、集合場所に現れたあっちゃんがタンクトップで、コンビニのビニール袋に文庫本を3冊入れて持ってたっていう(笑)。

 みんなとりあえずボストンバッグに着替えとかを入れてくるんだけど、あっちゃんだけ薄汚〜いグレーのジーパンに、タンクトップに、ボロッボロのコンビニの袋を持ってて。「えっ、あっちゃん荷物それだけ?」って聞いたら、(声まねをして)「いや〜僕はこれだけだよ〜」って言って。「中、何入ってるの?」って聞いたら、表紙のない文庫本が数冊そこに入ってたっていう。

石野 1冊、ロシア語の原書のやつだった(笑)。ものすごい頭いいんだよね。

 でも、そのツアーほんとにそれで乗り切ったもんな(笑)。

石野 すごかったな(笑)。

 すごいよな(笑)。まあ、そういう気分にもさせてくれるポップ・ウィルということで(笑)。ありがとうございました。

※32 モンキーに警告:電気グルーヴが1991年にリリースしたアルバム『UFO』の収録曲。

※33 劇団健康:1985年、有頂天のケラを中心に犬山犬子(現:犬山イヌコ)、田口トモロヲ、みのすけらが旗揚げした劇団。1992年に解散。

Roots of 電気グルーヴ “Pop Will Eat Itself”

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