【『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』#4:Depeche Mode】観るなら絶対ベルリンがいい

2021.7.2

文=天野龍太郎 編集=森田真規


電気グルーヴの石野卓球とピエール瀧が、彼らの音楽的なルーツとなったアーティストについて語るトーク番組『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』。株式会社ビーアットによる「BE AT TOKYO」がサポート、同社が運営するコミュニティスペース「BE AT STUDIO HARAJUKU」で収録されている。

第1回のニュー・オーダー、第2回のDAF、第3回のダニエル・ミラーとミュート・レコードと好評を博している同番組の最新回が取り上げるのは、デペッシュ・モードだ。高校生のころから来日公演を観ていた石野卓球が、ベルリンまで彼らのライブを観に行く理由とは──。

このQJWebのテキスト版では、トーク中に登場する固有名詞の数々に注釈を付している。すでに動画を楽しんだ方でも発見があるはずなので、ぜひご一読を!

【関連】【『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』#3:Daniel MillerとMute Records】ミュートにハズレなし

音楽雑誌での出会い

 さあ、今回のテーマはなんでしょう?

石野 今回はデペッシュ・モード(※1)です。ウチらも(Tシャツを)着てますね。「DM」。ダイレクトメール(笑)。前回のテーマだったミュート・レコードのアーティストだよね。

 看板アーティストですよね。

石野 最近離れちゃったんだよね(※2)。ダニエル・ミラーとは、まだつながりがあるみたいなんだけど。彼らは80年代前半から、今でも活躍してて。日本でなぜか、あんま人気がないんだよね。

 そうですよね。海外だともう、スタジアムバンドですよね。

石野 海外と日本での人気の差が、ここまであるバンドってあんまりいない。

 人気出てもよさそうなのにね。

石野 一時期、80年代とかはけっこう来日してたんだけど、たぶん、もう日本でデペッシュ・モードを観るっていうのは不可能じゃないかな。

 そうかな。めっちゃ残念なんだけど。

石野 日本の現状のデペッシュ・モードの動員というかさ、人気を考えると、今のデペッシュ・モードのビッグさと釣り合わないっていうかさ。たぶん、もう来ないね。

 日本でやるんだったら、それこそ東京ドームでやるとか、そういうクラスなんだけど、果たしてチケットが売れるのか?っていう感じになっちゃうってことだもんね。

石野 でもね、それはね、いいんです。こっちが観に行けば。俺が昔から言ってる「デペッシュ詣」っていって。初詣とかと同じでね、正月に家にいるやつのとこに神様は来ないよ。初詣は行かなきゃいけない──詣でるんだから。それと同じで、デペッシュ・モードもありがたいものだから、こっちが「デペッシュ詣」をするっていう。ダジャレだけじゃないんですよ。

 なるほど。心持ちというか。

石野 あと、やっぱね、海外で観たほうがいい。

 で、デペですよ。

石野 通称「おデペ」。デペッシュ・モードも、1回目でやったニュー・オーダーもそうなんだけど、最初に出会ったのは中学生のころ。俺は今50歳を越えて、もう初老ですよ。シルバー世代目前くらいまできてる。それで、ここまで長く聴きつづけるとも思わなかったし、グループが現役でつづいてるっていうのもすごいよね。(瀧が)デペッシュ・モードを最初に知ったのは、ウチ?

 君んちですよ。たぶん「New Life」とか、『Speak & Spell』(1981年)とか、あのぐらいのころ。

石野 ファーストアルバムですね。デペッシュ・モードっていう存在を知ったのは、音楽雑誌だったんだよね。当時、ニューロマンティックとかエレクトロポップみたいなものを総括して「フューチャリスト」って呼んだりとかしてて。いわゆるシンセポップのバンドがいっぱい出てきて、その中のひとつとして名前をよく雑誌で見てて。で、写真が1回出てて。デイヴ・ガーンがこんなんなってる写真があったんだけど。

ピエール瀧(左)と石野卓球

石野 で、なんかルックスもいいし、すごいかっこいいなって。ただ当時、輸入盤はなかなか手に入らない時代だったから。向こうで発売されてから入ってくるまでに時差もあったし。静岡なんて、まず手に入ることはないよね。だから、想像するしかないっていう。

 静岡市内で輸入盤を手に入れようと思ったら、ほぼ一軒しかなかったですよね。

石野 そうそうそう。あとはだから、東京のレコード屋さんから通販で買うとかするんだけど、でもそれも、輸入盤の情報っていうのは雑誌しかなかったわけだから。雑誌の輸入盤レビューを見て東京のレコード屋さんに電話しても、もうとっくにないわけですよ。「一昨日来やがれ!」っつって、一昨日行ってもないぐらい。だからもう、眺めるだけなんだよね。で、日本盤が出るのをすごい心待ちにしていて。でもね、最初にこの盤を聴く前に、ラジオで聴いたんだよね。

 ラジオスタートなの、多いな。

石野 聴くチャンスが、それぐらいしかなかったっていう。ちなみにそれも、前回に名前が出た『クロスオーバーイレブン』(※3)っていう番組。別名「××××ペロペロ舐めたい」(笑)。それは、前回のやつを観ればわかりますから。それで、「Puppets」っていうこのアルバム(『Speak & Spell』)に入ってる曲が流れて。『クロスオーバーイレブン』っていうのは11時ぐらいから『サウンドストリート』(※4)が終わったあとにやる番組で、当時のNHKの中の深夜番組。

 しっとりでもないけど、落ち着いた番組で。

石野 だからね、選曲もアルバムの中から、はしゃいでない曲を選ぶわけよ。で、初めて「Puppets」を聴いたんだけど、「あれ、こういう感じなんだ?」っていう。「随分クールだな」って思ったのを覚えてる。で、当時出た日本盤のシングルがこれ(「Just Can’t Get Enough」(※5))。これは有名な曲で、聴いたことある人もいると思う。

Depeche Mode – Just Can’t Get Enough (Official Video)

 日本盤だと「Just」が付いてないね。「キャント・ゲット・イナフ」なんだね。

石野 これはサッカーのチャントとかにもなってるやつで、あとCMとかでも聴いたことあると思うんですけど。で、当時、何がよかったかっていうと、前回紹介したミュートのシリコン・ティーンズ(※6)みたいな、全部がエレクトロニックだったこと。ドラムとかも生ドラムじゃなくてドラムマシーンで、そこにアナログシンセサイザーを足した音で、マイクで拾ってるのはボーカルの声だけ、っていうような音作りなんだけど。それがもう、やっぱたまらなく好きで、未だにずっと好きなんだけど。で、かつポップっていうね。

 メロディとかも、キャッチーですもんね。

石野 ヴィンス・クラーク(※7)ってメンバーがいて、メインのソングライターの彼が一人で詞も書いてるし、曲も書いてて、このアルバムの11曲中2曲を除いて全部ヴィンス・クラークが作詞作曲なんだよね。ただ、彼がこのアルバム一枚で辞めちゃうんだよね。それで、のちにヤズー(※8)ってバンドを組むんだけど。その彼が辞めちゃうっていうのは、相当じゃない。でも実は、そっからがデペッシュ・モードのほんとのスタートっていうか、そっからビッグバンドに成長してくんですけど。

※1 デペッシュ・モード(Depeche Mode):「No Romance in China」「The Plan」「Norman & the Worms」「The French Look」「Composition of Sound」といった前身バンドでの活動を経て、1980年にイギリス・バジルドンで結成されたバンド。アンディ・フレッチャー、マーティン・ゴア、ヴィンス・クラークの3人にデイヴ・ガーンが加わり、1981年にシングル「Dreaming of Me」でミュート・レコードからデビュー。「New Life」、「Just Can’t Get Enough」をヒットさせ、デビューアルバム『Speak & Spell』(1981年、邦題は『ニュー・ライフ』)も全英10位に。その後、クラークが脱退。セカンドアルバム『A Broken Frame』(1982年)のリリース後にサポートメンバーだったアラン・ワイルダーが正式に加入。1980年代中盤から国際的に成功する。1990年に『Violator』で最大の成功を収め、1993年の次作『Songs of Faith and Devotion』がイギリスとアメリカのチャートで1位に。1995年にアランが脱退。それ以降、アンディ、マーティン、デイヴのトリオを中心に活動をつづけている。

※2 デペッシュ・モードのレーベル移籍:2012年、コロムビア・レコードと全世界における契約を発表。ただ、それ以降の作品もミュート・レコードとの共同リリースになっている。

※3 クロスオーバーイレブン:1978~2001年まで、主に23時台に放送されていたNHK-FM放送のラジオ番組。俳優がスクリプトを朗読するラジオドラマと洋楽の選曲が中心だった。

※4 サウンドストリート:「【『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』#2:DAF】「君のことを考える」ってタイトルが沁みる」を参照。

※5 Just Can’t Get Enough:1981年にリリースされた、『Speak & Spell』からのシングル。日産・マーチのCMソングとして、2005、2006年にニーナ・マドゥーの、2006年に土屋アンナのカバーが使用された。

※6 シリコン・ティーンズ:前回「【『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』#3:Daniel MillerとMute Records】ミュートにハズレなし」を参照。

※7 ヴィンス・クラーク(Vince Clarke):1960年、イギリスのサウス・ウッドフォード出身のミュージシャン。デペッシュ・モードのオリジナルメンバーで、当時のリーダー。1981年にデペッシュ・モードを脱退、ヤズー(Yazoo)を結成する。1983年にエリック・ラドクリフとジ・アッセンブリー(The Assembly)を結成。1985年にアンディ・ベルとイレイジャー(Erasure)を結成。2011年にマーティン・ゴアとVCMGを結成。2011年にはデペッシュ・モードの「Behind the Wheel」をリミックス。そのほか、コラボレーションやリミックスを多数行っている。

※8 ヤズー:ヴィンス・クラークとアリソン・モイエのシンセポップデュオ。ミュート・レコードから1982年にリリースした「Only You」や「Don’t Go」、1983年の「Nobody’s Diary」といったシングルがヒット。アルバム『Upstairs at Eric’s』と『You and Me Both』も成功を収める。1983年に解散、2008年に再結成。

1983年4月の初来日


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