いとうせいこう、高橋洋、前田弘二らがコメントを寄せた映画『距ててて』の劇場公開が決定!

2022.3.15
映画『距ててて』

文・編集=QJWeb編集部


『第43回ぴあフィルムフェスティバル』入選・観客賞受賞、『第22回TAMA NEW WAVE』コンペティション部門入選、『第15回田辺・弁慶映画祭』入選など、自主映画や若手映像作家の登竜門とされる国内の主要映画祭に相次いで入選した映画『距(へだ)ててて』が、2022年5月14日(土)から東京・ポレポレ東中野で公開されることが発表された。

さらに劇場公開の決定に際して、いとうせいこう、高橋洋、前田弘二らのコメントが到着した。


上映された映画祭で多様な解釈を生んだ話題作

映画『距ててて』予告編

『距ててて』は、加藤紗希(振付師/俳優)と豊島晴香(俳優)の創作ユニット「点と」が製作した初の長編映画にして初の劇場公開作品で、「第41回ぴあフィルムフェスティバル」に入選した短編映画『泥濘む』(2018年)につづいて、監督・加藤と脚本・豊島のタッグによる作品で、加藤と豊島は本作の主演も務めている。

『距ててて』の製作にあたって、加藤と豊島はコロナ禍で実現可能な少人数での撮影・製作方法を模索。各話、数名の俳優が出演した4幕構成(1章「ホーム」、2章「かわいい人」、3章「湯気」、4章「誤算か憧れ」)のオムニバス作品になっている。

『距ててて』の特色は、俳優ならではの視点から行ったキャスティング、それをもとに当て書きをした豊島の脚本、加藤の俳優に寄り添った演出と現場で作り上げた時間を活かす編集など。ユーモア、他人との距離感、時空間の交差といった要素が散りばめられた独特の作品世界は、映画祭で鑑賞した観客や審査員の間に多様な解釈を生んでいる。

さらに劇場公開の決定に際して、五十嵐耕平、いとうせいこう、ウスバアミ、酒井善三、高橋洋、前田弘二、松林うららから以下のコメントが届いた。

***

■五十嵐耕平(映画監督)
二人の暮らす家によく知らない人が入ってきたり、人の家に行ってみたら理解し難い関係性のカップルが喧嘩してたりする。この世の中には圧倒的な他者がいて、くっついたり離れたりしているんだよねってことが、こんなに牧歌的に成し遂げられるとは思っていなかった。

それだけじゃなくて、すでにこの世にいない者、過ぎ去った時間も、ちゃんと他者としてこの世界に今もある事として描かれていて、それは僕たちをいろいろな距離の呪縛から解き放ってくれる。

今この時代にそう思わせてくれるこの映画に、なんだかすごくワクワクする。

■いとうせいこう(作家/クリエイター)
それぞれが不思議な話なのに、底流には人間の確かな生活感がある。映像作品が忘れがちな本当の、当たり前の、汗ばんだ時間が。

■ウスバアミ(TAMA映画フォーラム実行委員)
停滞気味で微妙に息苦しい日々も、些細な出来事たちが積み重なり少しずつ変化していく。
そうしているうちに、過去から今までの点と点が繋がり、視界が開けたような喜びを手にする瞬間が突然訪れたりする。
『距ててて』にはそんな生活の難しさや面白さが詰まっていて、わたしもやっていくぞ〜!と元気をもらえた。

■酒井善三(自主映画監督)
無邪気でも、皮肉でもない、独特のユーモア!
リアルにいるようで、いないような、異様なキャラクター!
意味不明に爽やかな読後感!
他の何にも似ていないが、なんなんだコレは!!怪・快・傑作です!

しかし人との距離感って、ホントこんな風に、一筋縄ではいかないよな……。

■高橋洋(映画監督/脚本家)
家が一つの小宇宙のように感じられ、そこでは事物や訪れる人との不思議な妖怪めいた交感が起きている。実は誰もがよく知っていながら、キャメラが向けられて来なかった感覚の領域に映画は踏み込もうとしているのか。それはあの懐かしく哀切な『第七官界彷徨』の世界に近いとも言える。

■前田弘二(映画監督)
加藤さん豊島さんの、なんとも言えない二人の距離感が可笑しくて何度も笑いました。
目の前でとんでもない事が起きても、ま、いっか!って思わせる、無敵な力が漂ってて爽快です。
どこへ向かうか分からない二人のロードムービーを、このままずっと観ていたい。

■松林うらら(女優/プロデューサー)
伸びやかなシスターフッド映画だった。
誰からも惑わされていなかった。
彼女たちは、お互いの余白に寄り添おうとしなくても、目には見えない何かで繋がっている。
お互いのズレを楽しみ、等身大の関係性を保っている。生き生きとした豊かな時間だった。
2人の空間をずっと眺めていたかった。

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