【前編】いとうせいこう×上田晋也 自分の不得意を怖がらない

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いとうせいこう×上田晋也

文=鈴木 工 撮影=木村心保


いとうせいこうを“恩人”としてとらえる、くりぃむしちゅー上田晋也。かつて放送されていたテレビ朝日系『虎の門』内で「うんちく王」が始まり、上田にスポットライトが当たったのは、いとうせいこうの後押しがあったからだった。

上田以外にもいとうにフックアップされた人間は芸能界に多いが、いとうがフックアップしたくなる人間の共通点はどこにあるのだろうか。上田がその謎に迫る。

※本記事は、2016年9月1日に発売された『クイック・ジャパン』本誌vol.127掲載のインタビューを再構成したものです。

いとうせいこうは何者なのか

上田晋也(以下、上田) 対談のテーマが「いとうせいこうは何者なのか」。僕も知りたかったんです。作家でもあり、文化人でもあり、タレントでもあり……。千の顔を持つミル・マスカラスみたいなもんですよね(笑)。

いとうせいこう(以下、いとう) いやー。上田くんだってジャンルおかしなことになってるでしょ。政治やスポーツの番組を担当して。

上田 でも僕はTVという枠の中でやらせてもらってるだけですからね。でも俺ですら、元幕僚長に集団的自衛権について聞いた後、深夜番組でミニスカートはいてると、「何やってるんだろう?」と思うことがあるんですよ(笑)。

いとう ふと我に返ると、あるね。でも我に返らなくていい職業だし、振り幅が大きいほど快感なわけで、それなら思い切り振っちゃえと。だって上田くんのバカボン、よかったよ。

上田 ありがとうございます。あれはせいこうさんに昔「似てるから、やれば?」って言われたのがきっかけで。

いとう マジメな番組で仕切るイメージが強すぎるから、バカなことやる上田も必要だと。

上田 僕の仕事が増えたのは、そうやってせいこうさんがプッシュしてくれたおかげですよ。『虎の門』(01~08年、テレビ朝日系の深夜番組)のせいこうさんが仕切る討論コーナー「朝まで生どっち」に呼ばれて、くだらないテーマに無理やり経済効果を持ち出したりして議論してたら、その後、番組内で「うんちく王」がはじまった。

いとう あれはすごかった。

上田 でも1回目の放送が終わった時、俺はマネージャーに「あの仕事は断れ」といったんです(笑)。うんちく知らないのに適当な話術でごまかしただけで、これは洒落にならんぞと。そうしたらまたオファーが来て、どうもせいこうさんが上田を呼べと言ってるらしい。それでしょうがないから必死に勉強を始めたんです。

いとう 何で声をかけたかというと、話をふられると「ちょっと待ってくださいよ!」の間もなく、オチもわからないで話す上田くんのスピード感がすごかったから、これは勇気あるなって。俺は悪条件でもケツを持つヤツが好きなの。その能力が世間に伝わってなくても、生放送でやりとりすればすぐわかった。

上田 あの時呼んでくれなかったら、いまだにくすぶってたかもしれない。さらに相方のことも気にかけてくれたじゃないですか。

いとう 「上田がうんちく王でブレイクしたから、有田はしりとり王を狙え!」と仕掛けたら、あいつはすぐ逃げちゃったんだ(笑)。